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【「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」評論】虚偽や誇張に満ちた悪しきデマゴーグが跋扈する今だからこそ必見

2025年4月19日 14:15

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画像1(C)2023 Zeitsprung Pictures GmbH

あのゲッベルスを描いた「禁断の映画」が遂に公開される。ナチスドイツの宣伝大臣としてヒトラーの偶像を作り出しドイツ国民を煽動。絶望的な総力戦とホロコーストに導いたプロパガンダの立役者だ。しかし、その実像は意外なほどに誤解に包まれている。

たとえばプロパガンダ自体はゲッベルスが生み出したものではない。近代プロパガンダは第一次世界大戦時に発達した宣伝技法だ。英国政府は国民の愛国心を鼓舞し志願兵を募る宣伝を行なっただけでなく、敵国ドイツへの憎悪を喚起させるような情報の捏造を行った。米国でも広報委員会(クリール委員会)がドイツを野蛮と決めつけるプロパガンダを繰り広げている。ゲッベルスの専売特許ではない。

ゲッベルスが特異なのは、ベルリン陥落前夜、ヒトラー側近の政治家としてただ一人、ヒトラーの後を追って自殺した点だ。妻マクダと6人の子供を道連れにしている(他に総統地下壕で2人の陸軍大将が自決している)。

その狂信性はどこから来たものか。これまで「ヒトラー 最期の12日間」(オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)あるいは「ワルキューレ」(ブライアン・シンガー監督)が描こうとはしなかったゲッベルスの“人間性”をこの映画は暴き出す。

これは極めてリスキーな手法だ。ひとかけらでもゲッベルス賞賛、ナチス礼賛の要素が感じられると、失敗作の烙印を押されることは必定だ。そこで本作品のヨアヒム・A・ラング監督は、ゲッベルスが手掛けた総統凱旋パレードやスポーツ宮殿の総力戦演説から、アウシュビッツ収容所の虐殺と生存者の証言に至るまでの実写映像を織り込みながら、真摯に物語を紡ぎ静謐なショットを重ねていく。ゲッベルス役のロベルト・シュタットローバー、妻マクダ役のフランツィスカ・ワイズ、ヒトラー役のフリッツ・カールの緊張感に満ちた演技が印象に残る。

オーストリア併合、ポーランド侵攻、スターリングラードの攻防、ベルリン陥落。この間におけるナチス政権中枢の“人間劇”が内側から描かれる。ヒトラーは食事の際に幹部の座る席順を指定し忠誠心を競い合わせ、ゲッベルスは誕生日にヒトラーから電報しか届かなかったことを嘆く。不倫に走るゲッベルスに愛想を尽かした妻マクダを諭すのはヒトラーだ。ヒトラーを描く映画でしばしば用いられる形式がコメディだが、滑稽な存在としてこき下ろすのではなく、ヒトラーの“人間性”を正面から描く大胆な演出はいささか驚きを覚えるほどだ。

かたやゲッベルスは、総統の歓心を買うことに躍起となる俗物だが、同時にやはりプロパガンダの天才と言わざるを得ない面がある。演説の達人であり、手がけるイベントの演出、新聞の見出しが「完成形」として瞬時に頭に浮かぶ。ハイデルベルク大学から哲学博士号を授与されたナチスきってのインテリはヒトラーから「Doktor」(博士)と呼ばれていた。「凡庸な悪」とは言いがたい。そのゲッベルスがどうやって人類史上最悪といってよいプロパガンダを生み出したのか。答えはこの映画の中にある。

ゲッベルスはまた映画好きであり、プロパガンダの手段として映画を重視していた。レニ・リーフェンシュタールの五輪映画「民族の祭典 オリンピア」やファイト・ハーランの差別映画「ユダヤ人ジュース」をはじめとする当時の映画制作の様子が描写され、「芸術の政治への従属」という問題も投げかけている。

関心領域」(ジョナサン・グレイザー監督)に続く、ナチス時代を描いた映画の秀作であり、虚偽や誇張に満ちた悪しきプロパガンダが飛び交いデマゴーグが跋扈する今だからこそ必見の映画だ。しかし、それは同時に、あのゲッベルスの内面を描くことに踏み込まざるを得ないような「緊迫した時代」に今、我々がいるということでもある。

(北島純)

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