【「アンジェントルメン」評論】イアン・フレミングも登場、007シリーズのモデルになった人物たちが活躍する戦争アクション
2025年4月6日 11:00

「コードネーム U.N.C.L.E.」のガイ・リッチー監督とヘンリー・カビルが再タッグを組んだ戦争アクション。大戦下に実在し作家イアン・フレミングも勤務したチャーチル直下の特別作戦部隊「SOE」と、実行された「ポストマスター作戦」の全貌を描く。
ナチスの侵攻で窮地に立つチャーチル首相(ロリー・キニア)は、SOEのガビンズ准将‘M’とフレミング(フレディ・フォックス)に「独軍にも英国軍にも知られずにUボートを無力化せよ」と命じる。敵の補給路を断つ高難度の作戦を立てた2人はガス少佐(カビル)を招集。歌手で銃の名手マージョリー(エイザ・ゴンザレス)、弓の使い手ラッセン(アラン・リッチソン)、爆破のプロ、腕利きの船乗りらとチームを結成、西アフリカへと向かう。
自身初クラシックな戦争映画に挑んだ監督は「特攻大作戦」や「ナバロンの要塞」が持つテイストを目指した。巨漢ラッセンを中心に、弓矢、銃火器、ナイフ、斧で血祭りにあげられるナチス兵の数は「イングロリアス・バスターズ」にも匹敵し、ならず者たちの痛快な暴れっぷりは「スーサイド・スクワッド」を思わせる。
チームの面々も個性的だ。「U.N.C.L.E.」や「ARGYLLE アーガイル」の正統派スパイとは一味違う、粗削りなリーダー役を楽しげに演じるカビルを始め、イギリス英語や仏語に加え独語で歌の披露もしたゴンザレスは、モデルとなった女性の資料を読み込んで役作り。リッチソンはデンマーク兵士の伝記を研究し「ナチの心臓を素手で抜き取った」と言う決め台詞を考案したり、スタントは使わずに全力でラッセン役に取り組んだ。
もう一つの特徴はジェームズ・ボンドとの繋がりだ。生みの親フレミングは実際にSOEに勤務、ここでの経験を元に(彼は関わった作戦案をマス釣りマニュアルに偽装、Trout Memoと名付け後年の創作のネタにしたという)007シリーズが誕生した経緯がある。劇中の彼がボンド風の挨拶を決めているのもご愛嬌。また、主演のカビルもダニエル・クレイグと6代目ボンド役を最後まで争ったことがあり、007でMの部下タナー役を演じているキニアが本作ではチャーチル役を怪演、さらにボンドの盟友CIAのフェリックス・ライターを彷彿とさせる黒人エージェントも登場する。(余談だがフレミングのいとこで俳優のクリストファー・リーもSOEに所属していた)
集められた専門スキルを持つプロたち、決して失わないユーモア、爆破に次ぐ爆破など、この手のアクションに不可欠な要素を満載にしつつ、これまで同様に男同士の友情や絆を根底に置いたリッチー監督、後半に多少焦らされる感があるも、圧巻のラストに向けた助走だと思えば、より味わい深い。
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