スタン・リーの苦難に満ちた晩年、新ドキュメンタリーで明らかに
2025年3月12日 18:05

スタン・リーは、スパイダーマンやX-メン、アイアンマンなど数々の人気キャラクターを生み出したマーベル・コミックスの伝説的クリエイターとして知られている。マーベル映画へのカメオ出演でも人気を博したリーの晩年について、新たなドキュメンタリー作品で明らかになる。
「Stan Lee: The Final Years」と題された本作は、長らく水面下で制作が進められてきた。監督のジョン・ボラジャックがこのほど初めて予告編を公開し、Kickstarterでの資金調達を開始したと米ハリウッド・レポーターが報じている。
ボラジャックはリーの晩年を密着取材した唯一の人物だ。世界中のコミックコンベンションや映画プレミアに同行し、ハリウッドヒルズの自宅での魅力的な瞬間や率直な会話を記録。しかし同時に、彼の側近たちによる不適切な行動も捉えていた。
リーの晩年は、想像以上に困難に満ちていた。2018年にハリウッド・レポーターが実施した調査では、リーの介護や財産をめぐる権力争いの中で高齢者虐待の疑惑が報じられていた。ボラジャックによれば、実態は報道以上に深刻で、18年11月に95歳で亡くなった時点でリーは財政的に破綻していたという。
公開された予告編では、疲労困憊の様子のリーが、サイン会に連れ回される姿が映し出されている。映像に登場する人物の名前は明示されていないが、その一人はリーの元ロードマネージャー、マックス・アンダーソンとみられる。彼はハリウッド・レポーターの調査でも言及された人物で、不正行為の疑惑については否定している。
熱心なコミックファンで、映画学校でドキュメンタリーを専攻したボラジャックは、約10年前に共通の知人を介してリーと接触。リアリティ番組の企画を提案し、リーの賛同を得たことから、次第にコミックの巨匠の側近として活動するようになった。
「当初は単なる撮影者でしたが、次第に彼を友人として、家族として見るようになりました」とボラジャックは振り返る。「リーの過酷なスケジュールに心を痛め、仕事量を減らし、より多くの休息を取るよう主張していました。できる限りのことをしたつもりです」
マーベルとコミックの世界に対して常に明るい姿勢を示す広告塔というパブリックイメージを持つリーが、人生の低迷期をドキュメンタリーの題材にすることに同意したことは意外に思えるかもしれない。
しかしボラジャックによれば、リーは最後までこのプロジェクトを支持していたという。「晩年までこの件について何度も話し合いました。様々な困難があっても、リーがそれを恥じているようには見えませんでした。むしろ自分の経験を一種の警告として世に伝えたかったのではないでしょうか」
本作の完成に向けて、現在Kickstarterで30万ドルを目標とするクラウドファンディングが進行中だ。
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