誕生50周年を経てようやく作品の全貌を理解できた「ベルサイユのばら」【コラム/細野真宏の試写室日記】
2025年2月1日 07:00
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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
今週末2025年1月31日(金)から「ベルサイユのばら」が公開されました。
これまでもちろん作品を知ってはいましたが、どんな作品なのか全貌を理解できずにいました。
オスカルという、父親から男性として育てられた女性キャラクターが有名ですが、オスカルは実在しない人物だったり、実在するマリー・アントワネットが出てきたりと、イマイチ理解できずにいたからです。
そんな中で今回の映画化を機に、ほぼ予備知識ゼロの状態で本作を見てみました。
これまでの私の知識は、断片的に覚えているテレビアニメ版のものでした。
今回の映画での作画については、かつてのテレビアニメ版と非常によく似ています。
ただ、今回の映画は「完全新作」なので、テレビアニメ版とは関係がないようです。
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では、なぜここまで作画が似ているのでしょうか?
それは、どちらも原作のマンガ「ベルサイユのばら」を基にしているからでした。
そもそも原作となる「ベルサイユのばら」は、集英社の「週刊マーガレット」(現在では月2回発行で「マーガレット」)に1972年から翌年1973年まで連載されていました。
作品のネームバリューを考えると「期間の長い作品」だと思っていましたが、単行本では10冊という規模の作品だったことに驚きました。
そして「ベルサイユのばら」をより広く知らしめることになったのは1979年10月から1980年9月まで放送されたテレビアニメ版の存在でしょう。
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今回の映画に関連してYouTubeでテレビアニメ版が期間限定で公開されていたので第1話を見てみましたが、今見てもハイクオリティーな出来栄えでした!
これは当時アニメを制作した「東京ムービー」(現在のトムス・エンタテインメント)には「あしたのジョー」などのテレビアニメ版の大成功モデルがあって、キャラクターデザイン・作画監督の荒木伸吾を筆頭に「あしたのジョー」のメインスタッフが投入されていて、同レベルの完成度を見せていたのです。
私は再放送などでテレビアニメ版の「ベルサイユのばら」を断片的に見ていた際には、フランス革命などの歴史の知識は全く無かったので、理解しにくい作品としてインプットされていました。
それが、今回の映画「ベルサイユのばら」を見て、初めて「ベルサイユのばら」の全貌が理解できたのです!
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主役級で登場するマリー・アントワネットのように、基本的にはフランスにおける1789年に起こったフランス革命を中心に史実に基づいて物語が構成されています。
そのため、本作では改めてリサーチを綿密に行なって、衣装などをできるだけ当時のものにする努力をしていたようです。
本作を見て気になったのは「歌のシーン」が多い点です。
例えば、テレビアニメ版では、歌は基本的にオープニング、エンディングで2曲が流れます。
ところが今回の映画では、間に「歌のシーン」がいくつかあり、数曲流れるのです。
これは、テレビアニメ版であれば40話分の物語を、113分で表現しないといけないため、それぞれのシーンの内容を歌にして凝縮する演出がなされているからです。
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ただ、この演出手法はプラスとマイナスの面があります。
歌を聞く際に、メロディと歌詞を同時に体感して理解できるタイプの人には問題はないのかもしれませんが、例えば私の場合は、初めて聞く曲では歌詞をほとんどスルーしてしまうため、そのシーンが伝わりにくくなる面が出るのです。
つまり、この演出方法は万人受けをするわけでもないので、ここで評価が分かれることになるのではないでしょうか。
また、テレビアニメ版と本作は製作母体が異なるようで連携が基本的にはないのですが、個人的には「シティーハンター」の映画化のように、テレビアニメ版のオープニング曲やエンディング曲を組み込んだ方が、より心に沁みて意義深い作品になったのでは、と少し残念に感じました。
とは言え、最終的には作品の全容が分かるので本作の意義は大きいと思います。
「ベルサイユのばら」には熱烈なファンが多いことが知られていますが、果たしてどのくらいの規模で興行収入を押し上げることができるのか――名作マンガのリバイバル需要を考える上で本作の行方に大いに注目したいと思います!
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