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日本映画市場における中国人観客の存在感 大勢の“絶対に劇場で見たい”ファンが映画祭に集結していた【アジア映画コラム】

2025年1月16日 20:00

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「小さな私」
「小さな私」

北米と肩を並べるほどの産業規模となった中国映画市場。注目作が公開されるたび、驚天動地の興行収入をたたき出していますが、皆さんはその実態をしっかりと把握しているでしょうか? 中国最大のSNS「微博(ウェイボー)」のフォロワー数280万人を有する映画ジャーナリスト・徐昊辰(じょ・こうしん)さんに、同市場の“リアル”、そしてアジア映画関連の話題を語ってもらいます!


いま、池袋駅西口エリアの“ガチ”中華料理レストランに行くと日本語が通じない可能性が高いです。客層のほとんどは中華圏出身の方々。もちろんフロアにいる店員も、シェフも。入店したら、まるで中国にいるような感じがすると思います。

日本の法務省統計(2023年末)によると、現在の在日中国人は約82万1800人。全在留外国人中トップとなっており、中長期在留する外国人の約294万人のうち最も多く、在留外国人の約4人に1人の割合となっています。単純に比較すると、山梨県の人口(約79万5500人)をすでに超えている状態です。

また、東京に暮らしている中国人も年々増加していて、すでに20万人を超えています。そのため、池袋の中華料理レストランのように、“在日中国人向けの料理店”を経営しても成立できる時代が訪れています。もちろん、飲食業界だけではなく、ほかの業界にも多くの在日中国人が積極的に参加しています。映画を見るとき、もしかしたら、隣に座っているのは中国からの留学生かもしれません。

今回のコラムは、東京国際映画祭、東京フィルメックスなどで確認できた“中国ブーム”を軸に、日本映画市場における中国人観客の現状を観察してみましょう。

第37回東京国際映画祭(10月28日~11月6日)は、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催され、例年以上の大盛況だったと思います。コロナの影響が多少残っていた2023年開催時と比べると、今回は完全に“通常モード”に戻ったように思えます。オフィシャルの発表によると、映画関係者らの参加数も約2500人と前年よりも2割増。その中でも、やはり中華圏の映画人が目立っていました。

なぜかというと、今年の東京国際映画祭コンペティション部門には2年連続で中国大陸から3作品が出品。さらに香港、台湾も1本ずつ入選。なんとコンペ15作品のなかで、中華圏映画が3分の1を占めていたのです。そして、多くの中国映画人が東京に集まり、映画祭を楽しんでいました。

一方、ラインナップ発表会の時から、中国の映画ファンはすでに盛り上がっていて、いち早く最新の中国映画を見たいがため、映画祭期間中に、中国国内から日本に来る観客も大勢いました。日本で暮らしている中国人もいち早く情報を得ていましたので、チケット争奪戦は避けられない状況。チケット発売直後、中華圏映画の上映回はほとんど完売となりました。

なぜここまで熱狂的なのでしょうか。まず要因として挙げられるのは、中国映画市場の成長とともに、多くの若いシネフィルが生まれたこと。それぞれが積極的に国際映画祭に参加し、映画を見たり、映画について話したり、映画人と交流したいと思っているので、世界中どこの映画祭に行っても、中国の映画ファンに出会えるはずです。実際、私も映画が見たいために、毎年海外の映画祭に参加しています。その場で知り合った方々と話すのは、とても楽しかったです。

もう一つは、中国における東京国際映画祭のブランド力です。

日本国内では、東京国際映画祭の“存在感が薄い”といった批判がありますが、中国では東京国際映画祭は“世界三大映画祭”に次ぐ国際映画祭として認識されています。なぜなら、東京国際映画祭は三大映画祭とは異なる視点で素晴らしい中華圏映画を世に送り続けているからです。「古井戸」「青い凧」「クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」「暖 ヌアン」「鋼のピアノ」「ブッダ・マウンテン」「風水」などなど……。東京国際映画祭で選ばれた中国映画であれば「絶対に見たい!」と思う中華圏の映画ファンは多くいるんです。

近年、中国映画市場の規模が急拡大しており、映画の製作費やスケールもどんどん大きくなっています。昔のようなインディペンデント映画寄りの“作家映画”は少なくなっていますが、中国の監督たちは“大規模製作+スター出演の作品をどのように調理するか”と常に模索し続けています。

「小さな私」
「小さな私」
「小さな私」
「小さな私」

今回の東京国際映画祭で観客賞を受賞した「小さな私」は、2024年末に中国で公開され、興収はすでに6億元(約120億円)を超える大ヒットとなっています。ドキュメンタリー作品出身のヤン・リーナー監督は、脳性麻痺を患う青年の成長を丁寧に描き出しています。SNSフォロワー1億人を持つイー・ヤンチェンシー(「少年の君」)は、俳優としての覚悟を決め、見事に難役を乗り越えています。

東京でワールドプレミアが行われたとき、会場内の半分以上は中国の観客。会場外の有楽町駅前の看板広告には、イー・ヤンチェンシーのファンによる応援メッセージが飾られていました。国際性という視点から見ると、これはとても良いことだと思っています。アジアで開催される国際映画祭ですから、東京国際映画祭であれ、釜山国際映画祭であれ、上海国際映画祭であれ、アジアのお客さんがどんどん参加するということが非常に重要であり、良い映画交流が生まれるきっかけになるに違いありません(唯一の懸念は、中国語映画を見たい日本の映画ファンがなかなかチケットを取れないことかもしれません)。

有楽町駅前の看板広告
有楽町駅前の看板広告

1カ月後の東京フィルメックスの会場でも、同じく多くの中国人観客の姿を見かけました。

東京国際映画祭と同じく、中国人観客はいち早く最新の中国映画を見たいと思っていたはずですが、その大半がおそらく“あの作品”のために映画祭に来たのでしょう。

それは、ロウ・イエ監督の最新作「未完成の映画」です。

本作は2024年のカンヌ国際映画祭で特別上映作品として上映されたあと、ずっと注目されていました。「映画」「映画を撮ること」の本質を問う本作は、コロナ禍の中国を直接的に描くシーンが多数含まれていることで、中国国内での上映は絶望的となってしまい、東京フィルメックスでの上映が貴重なチャンスとなっていました。

「未完成の映画」
「未完成の映画」
(C)Yingfilms Pte. Ltd.,

そのため、私の周りですら、十数名の映画関係者や映画ファンが「未完成の映画」を見るため、中国から日本にやって来ていました。検閲問題でなかなか上映できない作品が何本もあるロウ・イエ監督に関しては、たとえば「天安門、恋人たち」などが日本で再上映されるたび、留学生を中心に、日本在住の中国人が劇場に足を運んでいます。場内の8割以上が中国の観客だと言われる上映も、たびたびあるくらいです。若い中国の映画ファンは「劇場で名作を体験したい」と思っているので、今の現象は今後も続いていくのでしょう。

日本に住んでいる中国人は、中国映画だけではなく、日本映画や海外映画も積極的に“劇場で鑑賞”しています。特に映画祭の時は、日本全国から多くの中国留学生が集結。1日何本も鑑賞して、喋って、飲んで……その繰り返しの日々が続きます。

話題の日本映画も、初日には映画館に行って、その日中にレビューを書く若いファンもたくさんいるんです。例えば、新海誠監督の最新作や「THE FIRST SLAM DUNK」などのアニメ大作は、上映直後、レビューサイト「Douban」で1000人以上のユーザーが“見た”をチェック。レビューも何十件も投稿されていました。

日本に住んでいる80万人超の中国人――日本の映画市場も無視できないチカラがあるはずです「ルパン三世 カリオストロの城」が再上映された時には、TOHOシネマズ池袋で中国語字幕付きの上映がありました。今後の動向にも注目していきたいと思います。

執筆者紹介

徐昊辰 (じょ・こうしん)

X(Twitter)

1988年中国・上海生まれ。07年来日、立命館大学卒業。08年より中国の映画専門誌「看電影」「電影世界」、ポータルサイト「SINA」「SOHA」で日本映画の批評と産業分析、16年には北京電影学院に論文「ゼロ年代の日本映画~平穏な変革」を発表。11年以降、東京国際映画祭などで是枝裕和、黒沢清、役所広司、川村元気などの日本の映画人を取材。中国最大のSNS「微博(ウェイボー)」のフォロワー数は280万人。日本映画プロフェッショナル大賞選考委員、微博公認・映画ライター&年間大賞選考委員、WEB番組「活弁シネマ倶楽部」の企画・プロデューサーを務める。

Twitter:@xxhhcc


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