米倉涼子主演の連ドラ映画化「劇場版ドクターX」は“失敗しない”のか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年12月8日 09:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
高視聴率ドラマの映画化というと、ここ最近では、TBS系列「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室」(2023年)が興行収入45.3億円。フジテレビ系列「ミステリと言う勿れ」(2023年)が興行収入48億円と大ヒットを記録しています。
では「劇場版ドクターX」も大ヒットするのでしょうか?
最初に考察すべきは、本ドラマがテレビ朝日系列作品ということでしょうか。
テレビ朝日系列の連続ドラマは、高視聴率ドラマシリーズが少なくありません。
ただ、通説としてあるのは、テレビ朝日系列の連ドラは高齢層が見ている割合が高く、高視聴率でも映画の動員は期待できない面がある、ということ。
これまでの結果を見ると、例えば以下のようになっています。
「相棒」は1作目が大ヒットを記録しましたが、2作目以降は下り坂となっています。「科捜研の女 劇場版」は満を持しての映画化でしたが厳しい結果となっています。
また、米倉涼子が初めて“TVシリーズの映画化”で主演を務めたテレビ朝日系列「交渉人 THE NEGOTIATOR」の映画化「交渉人 THE MOVIE タイムリミット 高度10000mの頭脳戦」(2010年)は、興収6.3億円で終わっています。
次に、作品の完成度について。連ドラの映画化は多くの場合でテレビ局のディレクターが担当しています。
本作も同様でテレビ朝日の田村直己監督がメガホンをとっています。
田村直己監督は本作が映画監督2作目で、1作目は「七人の秘書 THE MOVIE」(2022年)となっています。
見た感じでは、この2作品のクオリティーは、とても近い印象でした。
ちなみに「七人の秘書」の興行収入は6.61億円と、失敗に属する結果となっています。
このように見ていくと、確かに不安要素も小さくない面が見えてきます。
では、「劇場版ドクターX」は失敗するのでしょうか?
そこで「プラス要素」を考えてみます。
まず本作は西田敏行さんの遺作となった作品で、西田敏行さんの撮影は2024年3月末まで行われていました。
本編から西田敏行さんはかなり元気だったことが分かるはず。急過ぎる別れであったことが窺えます。
西田敏行さんの功績は多大なので偲ぶ動きは少なからず出ると思われます。
また、テレビ朝日の連ドラの視聴者層が、いくら高齢世帯の割合が高くても、本シリーズは2012年から2021年の10年にわたり、シーズン7まで平均視聴率が20%に近いような高視聴率を叩き出しています。
このデータには、「相棒」と同様に、高齢世帯以外のコア層も少なからず含まれています。
そして、定番化されたテーマ曲の存在も大きく、テーマ曲だけでも場が持つような力強さを感じます。
内容としても、本作は、これまで描かれてこなかった主人公・大門未知子の原点と言える過去“エピソード0”も描かれているのでドラマ視聴者の引きになっていると思います。
そのため、「交渉人 THE MOVIE タイムリミット高度10000mの頭脳戦」のように残念な結果にはならないのでは、と期待できます。
以上のようなプラス・マイナスの要素がある中で、本作が“失敗しない”ラインはどこになるのでしょうか?
本作で注目すべきは、主演の米倉涼子が「製作」の2番目にもクレジットされている点です。
製作委員会においても、米倉涼子の個人事務所が2番目にクレジットされています。
これが意味するのは、本作では米倉涼子の個人事務所が幹事のテレビ朝日についで(少なくとも)2番目に多く出資している、ということなのです。
つまり、本作の製作においても「私、失敗しないので」が貫かれた自信が垣間見れるのです。
本作の製作費は、制作費4億円、宣伝広告費のP&A費3億円と想定されます。
そ のため、本作が映画館の上映だけでリクープするためには興行収入17億円が必要になります。
つまり、本作が“失敗しない”ラインは興行収入17億円だと言えるでしょう。
おそらくこの辺りは失敗せずに突破できると思われるので、「ドクターX」は経済的な面でも最後まで「私、失敗しないので」のセリフ通りの作品になったと記録されそうです。
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