【「ビートルジュース ビートルジュース」評論】久々に還ってきた、ティム・バートンの騒々しきガジェット感覚
2024年9月29日 09:00
名優マイケル・キートンのキャリアに奇怪千万なタイトルキャラクターを接合させ、彼のブレイクをうながしたゴーストコメディの古典、なんと36年ぶりの続編である。そのスパンは正編から28年を経た過日の「ツイスターズ」を超え、ワーナー映画の中でレコードを更新した印象を与える(※)。ちなみにくどいようだが、映画史上における最長スパンは「バンビ」(1942)から「バンビ2 森のプリンス」(2006)に至るまでの64年間。ムダに長すぎて超えられる気がしない。
もっとも「ビートルジュース」(1988)は何度も続編のプロジェクトが浮いては沈み、ここまで待たされたのは青天の霹靂だ。正直その変転を追うのに疲れを覚えたが、ティム・バートンが自身の初期傑作に再アクセスする興奮に、スルーを決めるのも逆にストレスだろう。…などとあれこれ葛藤を抱えながら座席に身を沈めたところ、前作を逐一復唱するオープニングで一気に引き込まれてしまった。
そこから始まる物語は、やや混み入りながらも勢いよく我々の耳目を惹きつける。いわくつきのゴーストから娘アストリッド(ジェナ・オルテガ)を救うため、約35年ぶりにお騒がせ除霊師・ビートルジュース(マイケル・キートン)との接触を余儀なくされた母リディア(ウィノナ・ライダー)。ところがそんな彼に迫らんと、元フィアンセの吸精鬼ドロレス(モニカ・ベルッチ)が同時に復活してしまう。
映画はこれらトラブルの併発が、雪だるま式に混乱を肥大化させていく。そこで前作の縁深いキャラクターやニューフェイス、そして冥界のモンスターたちが入り乱れ、オリジナルを喩えて秀逸だった評「おもちゃ箱をひっくり返したような騒々しさ」を再燃させるのだ。バートンの良質かつ尖ったスタイルを全開にしつつ、彼がフィルモグラフィを通じて触れてきた「家族の分断と和解」というテーマにも目を配り、まさに理想的な続編が成されたといえよう。CGI以上にモデルアニメーションやアニマトロニクス、特殊メイクなどのフィジカルエフェクトを優先させ、とことん前作と世界観を統一させているのも頼もしい。加えて展開や設定から察しがつく、マリオ・バーヴァやブライアン・デ・パルマへのオマージュも機能的に作用している。
なにより撮影時は72歳だったキートンが、当時と変わらぬテンションでビートルジュースに扮し、作品の長い長い空白期間をイッキに埋めてくれるのが最大の収穫だ。近年はMCU作品でスーパーヴィランを演じたり、またバットマンとして復活するなどファンタジックな役への帰還に布石を敷いていたが、それも本作の予行演習だったと思える弾けっぷりだ。
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