最終的に全壊OK!?本編に映っているのは“奇跡のロケ地” 江口のりこ「愛に乱暴」貴重な美術資料公開
2024年9月6日 13:00
原作は、「悪人」「さよなら渓谷」「怒り」など多くのベストセラーが映画化された吉田修一氏の同名小説。夫の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす初瀬桃子(江口)は、「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。平穏だったはずの日常は少しずつ乱れ始め、やがて追い詰められた桃子は、いつしか床下への異常な執着を募らせていく。
桃子と夫・真守が住む“はなれ”と義母の照子が住む母屋の撮影場所は、セットではなく、神奈川県綾瀬市に存在した実際の家だ。劇中には取り壊すシーンもあるため、日本ではもちろん、海外の映画祭でもセットだと思い込んだ観客から驚きの声が漏れていた。
この家は森ガキ監督のリクエストをもとに、プロデューサーが1年の歳月をかけて探し出した“奇跡のロケ地”となっている。
森ガキ監督からの注文は「2階建ての母屋があって、桃子と真守が暮らす“はなれ”は平屋。敷地内に2軒がL字型に建っており、離れは床下を掘れるようにコンクリートではなく土、柱を切っても、最終的には全壊してもOKな家」という、通常の映画制作ではありえないもので、スタッフ全員がその時点で「絶対無理だ」と心の中で思ったという。
しかし綾瀬市のロケーションサービスの全面協力を得て「綾瀬市の家は全部見た」(松村ラインプロデューサー談)上で、1年をかけて理想の家に巡り合う。奇跡的に取り壊しの予定があった“はなれ”は母屋とL字型に立っており理想そのもの。床下も土であることを確認した森ガキ監督は思わずガッツポーズで歓喜の声を上げた。
20年ほど使われていなかった“はなれ”は、撮影に向けて室内を改装。もともとキッチンと洋室は壁を挟んで別の空間となっていたところ、壁を撤去し一続きのLDKに。もともと母屋と離れは渡り廊下で繋がっていたが、そこも取り壊して裏庭への通路にするなど、映画のイメージにあわせて細かく造り上げていった。最後には、重要な小道具となるスイカが収穫できるよう、裏庭に小玉スイカが植えられた。
物語後半で桃子の秘密が明かされる大事な床下の準備については、撮影時に江口が入るスペースだけでなく、撮影機材を設置しなくてはいけなかったため、和室二間の床板をいったんすべて外し、床下の土を20センチほど掘り下げた。その作業はスタッフ全員が泥まみれになってリレー方式で行われたようだ。
スタッフの熱意とこだわりが詰まった家は、そこを舞台に演技をした江口も「実際に人がいた年月分の匂いというか雰囲気が、心情を追いやすくしてくれました。取り壊される家を観ながら演技したことにより、本当をみている私の感情も本当だと思えた」と大きな助けとなったと語っている。
チェコのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭や香港国際映画祭など海外の映画祭でも高い評価を受けている本作。このほど、インバウンド向けの英語字幕版の上映が、新宿ピカデリーにて1週間限定で実施されることが決定。上映期間は9月20日~26日となっている。
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