【ネタバレあり】おちぶれたポルノ男優がエロティックな少女にのめりこんだその後は…「レッド・ロケット」二村ヒトシ&映画.com編集部がトーク
2024年9月5日 23:00
TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回は、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」で支持を集めた米インディペンデント界の俊英ショーン・ベイカー監督が、元ポルノスターの男を主人公に、社会の片隅で生きる人々を鮮やかに描いたヒューマンドラマ「レッド・ロケット」を取り上げる。
2016年のアメリカ、テキサス。元ポルノスターでいまは落ちぶれて無一文のマイキーは、故郷である同地に舞い戻ってくる。そこに暮らす別居中の妻と義母の家に転がり込んだが、昔のつてでマリファナを売りながら生計を立てている。そんなある日、少女ストロベリーとの出会いをきっかけに、マイキーが再起を夢みる物語。
「3~4回見てるし、俺の人生にのしかかっている映画」と言うほど、本作への思い入れが深い二村。「手持ちカメラを使って、今のアメリカを撮りたいのだろうな、でも僕が話したいのはそういう評論家のようなことじゃなくて、日本でも落ちぶれたAV男優が女の子をスカウトして一旗揚げようとする、こういう人をたくさん見てきたこと。僕は女性をAVにスカウトしたことはないですが、マイキーのそれ以外のこと」が身につまされると吐露。「この作品を見た知人女性はマイキーを『爽やかなくらいクズ』と言うんです。同じように言う男性もいますが、男がそう言うと、あなたの心の中にマイキーは住んでいないのかな? と思う。笑いながらこいつは俺かもって思っている」とその理由を述べる。
エビタニは、「登場人物全員どこかしらクズで、でもみんなどこか愛すべきところがある」と、マイキー以外にも、仕事のない田舎町でドラッグや売春に手を染めてしまう人々についても言及。「マイキーはストロベリーに出会って、駄目なところがどんどん引き出されてしまう」と分析するが、魅惑的な少女に夢中になるあまり、様々な欲が出てきたマイキーを「ヒモとしてのそこそこ才能はあるし、努力の方向を間違えなければ、そんなにダメじゃないんじゃないか」と擁護する場面も。
そして、マイキーが入れ込む少女ストロベリーについて、「ポルノ女優として(適材という理由で)惹かれたのか、それとも恋だったのか?」と二村に問う。二村は、「そこは明確に分けられなくて、女性が自分に関心を持ってくれることが好きなんだと思う。あのセコさは基本的に自分に自信がないのかも」と持論を述べた。
さらにエビタニは、2016年が舞台の作品だが、2000年にヒットしたN Sync(イン・シンク)の楽曲「Bye Bye Bye」が効果的に使われていることを「あの頃に聞くとかっこよかったけど、今聞くと絶妙にダサい。マイキーの青春時代の歌だったのかな」と指摘。「年齢によって魅力が落ちるという話は女性のキャラクターでよくあるけれど、その男性バージョンなのかも。自分だけは変わらないと思っていたのに、愛嬌と身体が使えなくなる」「マイキーの精神年齢は17歳くらい。(若い)ストロベリーは最初は楽しいかもしれないけど、すぐに女はダメな男だと気づく」とマイキーを辛口評価するも「人生の途中でブツっと終わるラストが良かった」と、マイキーの笑える痛々しさを楽しむ作品であると紹介する。
二村は「男のちっぽけさみたいなものを描く映画。男性が見たら、痛いところ突かれたと思うかもだし、女性が見たらこういうクズがいるよねと思うでしょう。また、時間が止まってしまった男の話でもあり、一番いいところで止まってしまって、変わろうとしなかった。ラストのビキニ姿のストロベリーは彼と関係なく活躍している姿かも。ポルノのイメージシーンみたいだし」としみじみ独自の見解を述べていた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回は、「悪人」「怒り」などで知られる作家・吉田修一の同名小説を江口のりこ主演で映画化した「愛に乱暴」を取り上げる。
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内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。