映像化作品を見る前に原作小説は読む? 読まない? 「原作ファースト」推奨の理由を解説【ハリウッドコラムvol.352】
2024年5月23日 09:00
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ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米ロサンゼルス在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリストの小西未来氏が、ハリウッドの最新情報をお届けします。
NetflixがSFドラマ「三体」の継続をようやく発表した。同作は劉慈欣の長大な原作を「ゲーム・オブ・スローンズ」のクリエイターが映像化した話題作で、かなり話題となったもののコストが高かったため――デビッド・ベニオフとD・B・ワイスの契約金だけでも2億ドルといわれる――継続できないんじゃないかと気をもんでいた。なので、ひとまずほっとしている。
Netflixはシーズン数やエピソード数を明らかにしていないが、「三体」のフィナーレまで描くと宣言している。原作の分量を考えると、全てを映像化するにはあと3シーズンは必要だろう。しかし、シーズン2の製作が始まったとしても、配信は早くても来年の下半期、下手をすれば再来年になってもおかしくない。
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そこで、続きが待ちきれないファンには、ぜひとも原作小説をおすすめしたい。第1巻「三体」から読み始めるのが王道だが、ドラマのシーズン1ラストに登場した面壁者(ウォールフェイサー)計画が中心となる第2巻「三体II 暗黒森林」からスタートするのもアリだ。これなら、先の展開をいち早く知ることができる。
ここからは私見になるが、「三体」に限らず、映像化作品を観る前に原作小説を読んでおくことで、より深く、より豊かな感動を味わえると思う。小説を読む際、読者は文章の描写をもとに登場人物の姿や声、物語の舞台といったディテールを、自分の想像力で補完していく。つまり、一人ひとりの読者が自分だけの物語世界を頭の中に構築しているのだ。だから、同じ作品を読んでも、十人十色の解釈が生まれる。
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一方、映像作品は観客の想像力を制限してしまう側面がある。なぜなら、クリエイター独自の解釈によって作り上げられた世界観が、あらかじめビジュアルで提示されてしまうからだ。もちろん、そうした映像表現を味わうのも一興だが、原作を先に読んでおけば、自分なりの物語世界と、映像化されたそれとを見比べながら鑑賞できる。いわば「答え合わせ」を楽しめるわけだ。映像化作品が物語の唯一無二の正解というわけではないが、自分だけの世界を他者の解釈と照らし合わせるのは、なんとも贅沢な体験だと思う。
逆に、映像化作品を先に観てしまうと、出演者の演技やセットデザインの印象が強すぎて、原作を読む際に自由な想像力を発揮しづらくなる。役者の顔が頭から離れなかったり、自分なりの解釈が制約されてしまったりと、せっかくの読書体験が台無しになりかねない。だからこそ、ぼくは「原作ファースト」を推奨したいのだ。
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実は子供の頃は読書が大の苦手で、唯一読んでいたのは人気映画のノベライズ版だった――当時は、好きな映画を好きなタイミングで見直すなんてことはできなかったので、文字情報で我慢するしかなかった――自分が言うのも気が引けるけれども、原作ファーストで行くべきだと思ってる。
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さて、今のうちに読んでおきたい原作小説を一つ挙げるとすれば、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」だ。「オデッセイ」の原作「火星の人」で知られるアンディ・ウィアーの長編第3作で、ライアン・ゴズリング主演で映画化が進行中の注目作だ。
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この小説については何を書いてもこれから読む人の楽しみを奪ってしまいそうなので、「レディ・プレイヤー1」の原作者アーネスト・クラインの推薦文を引用させてもらいたい。
「『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読むのは、学生生活で出会ったなかで最高の理科教師と宇宙に遠足に行くようなものであり、授業のテーマは世界を救うことだ。これは、私がこれまで経験したなかで最も独創的で、説得力があり、楽しい航海のひとつである」
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の全米公開は2026年3月20日。頭のなかにできあがった物語世界との答え合わせを心待ちにしている。
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