【「アンチソーシャル・ネットワーク 現実と妄想が交錯する世界」評論】2ちゃんねる由来のSNSがトランプ大統領を生んだ? アメリカの近代史を理解するための特別な一本
2024年4月28日 22:00

本作は、アメリカの近代史を理解するにあたり、極めて重要な作品です。日本のBBS「2ちゃんねる」をルーツにもつ「4chan(フォーチャン)」というプラットフォームが、ここ20年ほどのアメリカの文化と政治に多大な影響を与えた様子が描かれています。「カエルのぺぺ」をフィーチャーしたドキュメンタリー「フィールズ・グッド・マン」(2021)という作品がありましたが、ぺぺの画像が拡散していたのも、この「4chan」なのです。
2003年に「moot(ムート)」と名乗る若者が、日本文化やアニメについて語り合うために立ち上げた4chanは、アメリカのオタクたちに熱狂的に支持されます。この辺は、かつての2ちゃんねるの勃興と社会問題になった時代を経験している日本人には何の違和感もないでしょう。何故、アメリカで2ちゃんねる的なBBSが誕生するまでこれほど時間がかかったのかという疑問は覚えますが。
ガイ・フォークス・マスクをかぶった「アノニマス」たちが「ウォール街を占拠せよ」と世界中でデモを行ったのも、4chan由来だったことがこの映画で分かります。匿名の掲示板に集う若者たちが、揃いのマスクをかぶって、身バレすることなく暴れまわった案件です。ネット民独特の思考と行動様式が透けて見えます。
そして、トランプの当選にも4chanは一役も二役も買っています。後に、トランプ政権の首席補佐官も務めたスティーブ・バノンがこのプラットフォームに目をつけ「居場所のない白人男性たち(=オタク)」をトランプ支持者に仕立て上げたという話はめちゃめちゃ腹落ちするストーリーです。
「Qアノン」にまつわる陰謀説の誕生についても、この映画で明らかにされます。さらには、2021年1月6日の、連邦議会議事堂襲撃事件の顛末は、ちょっと笑えるフッテージとともに紹介されます。
この映画を見たおかげで、今年(2024年)の11月に投開票が行われるアメリカの大統領選が俄然楽しみになりました。選挙の結果ももちろんですが、選挙のプロセスにも注目ですね。今回、トランプ陣営はSNSをどんな風に活用するのか。
それにしても、NETFLIXには、とても重要なドキュメンタリーが無造作に置いてあることがありますね。これを発見するのも、映画ファンの楽しみであり、喜びだと感じました。
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

映画「F1(R) エフワン」
【語れば語るほど、より“傑作”になっていく】上がりきったハードルを超えてきた…胸アツをこえて胸炎上
提供:ワーナー・ブラザース映画

たった1秒のシーンが爆発的に話題になった映画
【この夏、絶対に観るやつ】全世界が瞬時に“観るリスト”に入れた…魅力を徹底検証!
提供:ワーナー・ブラザース映画

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男
【あり得ないほど素晴らしい一作】この映画は心を撃ち抜く。刺すような冷たさと、雷のような感動で。
提供:東映

186億円の自腹で製作した狂気の一作
【100年後まで語り継がれるはず】この映画体験、生涯に一度あるかないか…
提供:ハーク、松竹

なんだこの映画は!?
【異常な超高評価】観たくて観たくて仕方なかった“悪魔的超ヒット作”ついに日本上陸!
提供:ワーナー・ブラザース映画

すさまじい映画だった――
【あまりにも早すぎる超最速レビュー】全身で感じる、圧倒的熱量の体験。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

“生涯ベスト級”の絶賛、多数!
「愛しくて涙が止まらない」…笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】
提供:KDDI

究極・至高の“昭和の角川映画”傑作選!
「野獣死すべし」「探偵物語」「人間の証明」…傑作を一挙大放出!(提供:BS10 スターチャンネル)