【「ストップ・メイキング・センス」評論】ライヴ・ドキュメンタリーのお手本になった傑作がIMAXに降臨!
2024年2月11日 16:30

1984年に初公開されたライヴ・ドキュメンタリーの傑作「ストップ・メイキング・センス」が40年の時を経て甦る。いきなり常套句のようで気が引けるが、A24がオリジナルネガを発掘、音源もリマスターし4Kにレストアされた作品は、期待に違わぬクオリティになっている。
世界初披露となった第48 回トロント国際映画祭には、デイヴィッド・バーンを始めとするトーキング・ヘッズのメンバーが21年振りに集い、「アメリカン・ユートピア」(2020)のスパイク・リーとQ&Aを行った。本編とその模様は世界160以上のIMAX劇場に同時配信され、1日のライヴ・イベントとして興収1位を記録した。
1974年に結成されたトーキング・ヘッズは、翌年ラモーンズの前座として頭角を現す。1980年リリースの名アルバム「リメイン・イン・ザ・ライト」、83年に「スピーキング・イン・タングズ」を発表。まさにバンド絶頂期である同年12月にハリウッドのバンテージ・シアターで行われたライヴを収録したのが本作だ。監督のジョナサン・デミは6台のカメラで3公演を追い、最高のパフォーマンスを厳選、MCなしでライヴそのものが体感できる89分に仕上げている。
何もないステージに現れたデイヴィッド・バーンが「サイコキラー」を歌い始める。ステージではスタッフたちが次に登場するメンバーのためにセットを用意する。ひとつの個性がふたつになり、歌と音が重なり合い、舞台では一曲ごとに新たなアンサンブルが生まれていく。バーンの強烈な個性とメンバーやクルーとの協調センスが融合し、ライヴ・パフォーマンスそのものが放つ魅力にフォーカスしたジョナサン・デミの演出が冴える。
「これは史上最高のコンサート映画だ」と讃えるスパイク・リーは、デミの精神を引き継ぐかのように素材そのままを伝えることに徹し、俯瞰アングルを交えて「アメリカン・ユートピア」の魅力に迫った。数多くの音楽ドキュメンタリーが公開されている中、リーの例を引くまでもなく、「ストップ・メイキング・センス」はマーティン・スコセッシ監督の「ラスト・ワルツ」(1978)と並ぶ音楽映画の傑作として、ライヴ映画のお手本になっているのだ。
僕に飛びっきりの彼女ができたんだ、でも君はそんなことすら覚えていない
誰だって歳をとると“意味が分かんなくなっていく”
彼女はいつまでも待ってくれていないって、君だって気づくだろ
頭で考えることをやめて、意味を求めるのをやめて、意味を理解しようとしないで
「Girlfriend Is Better」
次代を見据えて今を歌ったトーキング・ヘッズ、シンプルだからこそ決して風化することのない16楽曲が、時を越えてスクリーンに炸裂する。あれこれと頭で考える必要はない。IMAXクオリティで甦った「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」を全身で感じてほしい。
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