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イ・ビョンホン&パク・ソジュンへの“オーダー”は? 「コンクリート・ユートピア」監督が語る製作秘話

2024年1月13日 17:00

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オム・テファ監督(2023年7月実施のジャンケット)
(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

第48回トロント国際映画祭では「『パラサイト 半地下の家族』に続く傑作」(Screen Daily)と高評価を獲得し、第96回アカデミー賞国際長編映画賞の韓国代表作品にも選出された「コンクリート・ユートピア」(公開中)。同作は、未曾有の大災害で唯一残ったマンションを舞台に、狂気をはらんだ人間模様を描いた作品だ。

イ・ビョンホンパク・ソジュンパク・ボヨンらが集った本作を完成させたのは、「隠された時間」でも知られる新鋭オム・テファ監督。映画.comでは、オフィシャルインタビューを入手。お気に入りのシーンに加え、イ・ビョンホンパク・ソジュンへの“オーダー”、“観客に伝えたいこと”を明かしている。



【「コンクリート・ユートピア」あらすじ】

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
世界を未曾有の大災害が襲い、韓国の首都ソウルも一瞬にして廃墟と化した。唯一崩落しなかったファングンアパートには生存者が押し寄せ、不法侵入や殺傷、放火が続発する。危機感を抱いた住民たちは主導者を立て、居住者以外を追放して住民のためのルールを作り“ユートピア”を築くことに。住民代表となったのは902号室に住む職業不明の冴えない男ヨンタク(イ・ビョンホン)で、彼は権力者として君臨するうちに次第に狂気をあらわにしていく。そんなヨンタクに傾倒していくミンソン(パク・ソジュン)と、不信感を抱く妻ミョンファ(パク・ボヨン)。やがてヨンタクの支配が頂点に達した時、思いもよらない争いが幕を開ける。

●お気に入りはヨンタクの“歌” 住民が踊る様子は「まるで地獄図のような印象」

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
――監督自身が特にこだわったシーンやお気に入りのシーンはありますか?

個人的には、ヨンタクが歌うシーンが一番好きです。

ヨンタクが歌う曲は韓国で「アパート」というタイトルで昔流行っていたのですが、ヨンタクが歌い、過去の回想に入ってそこから現在に戻るシーンがあります。実はそのシーンの撮影の時、何テイクかしたものの、実際に作品で使ったシーンはテストで回したカットを使用しました。ヨンタク自身の想いが揺れるのですが、テストなのでそのカットも揺れていて、過去の回想シーンと繋げてみると、それが自然に繋がっていてとても良かったです。

また、ヨンタクが歌うシーンで、アパートの住民が踊っているのですが、それがまるで地獄図のような印象があり、ヨンタクの内面を見せているような感じがしてすごく好きです。

やはり映画というのは思いもよらないところで失敗や苦労をしますが、それが逆に作品に使われることで、自分はこうやって映画を作って生きていくのだろうなと快感を覚えました。

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

また、最後までこだわったのは、一つや二つのシーンではなく、全体的なCGです。クオリティを高めるために、粘りました。撮影が終わった後も自分自身で各地域に行き、アスファルトに書かれている案内文や看板の写真を撮影してきて参考にするなど、かなりディテールにこだわりました。

●“ラブロマンス映画の職人”は「台本で書かれている以上のことをやってくれた」

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
――ミンソン夫婦の絆がしっかりと描かれていますが、夫婦を演じる上でパク・ソジュンさんにどのような“オーダー”をされましたか?

パク・ソジュンさんもパク・ボヨンさんも「コンクリート・ユートピア」に出る前から、それぞれ“ラブロマンス映画の職人”と呼ばれるほどそのジャンルに強い方達でした。周囲から、そのような呼び名のある2人はいつか何かの作品で共演するだろうと期待されていました。

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

もちろん本作はラブロマンス映画ではないですが、2人ともすごく素晴らしい役者さんでしたので、こうしてくださいというディレクションは無くとも、2人のお芝居で自然に夫婦の演技ができたと思いますし、台本で書かれている以上のことをやってくれました。

イ・ビョンホンの提案「ギャップをさらに大きくしよう」

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
――変貌していくヨンタクを演じる上でイ・ビョンホンさんにはどんな“オーダー”をされましたか?

シナリオ上、かなり変貌するキャラクターとして描かれており、ギャップが大きいキャラクターなので大丈夫か心配していましたが、逆にイ・ビョンホンさんがこのギャップをさらに大きくしようと提案してくれました。

監督として、このように大きく変化していくキャラクターを2時間のうちに表現できるか悩んだ結果、台本にはないシーンを一つ追加しました。それは、ヨンタクが大災害によって廃墟になっているアパートの風景を見るシーンです。この一つのシーンでヨンタクの心境の変化やこれから変貌していくことをきちんと表現できるか少し心配していましたが、イ・ビョンホンさんのお芝居を見ると、その心配は一切無くなりました。

●前半は寓話や風刺のようなブラックコメディ 後半はスリラーテイスト 観客に伝えたいことは?

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
――物語の前半と後半で雰囲気がガラッと一転します。製作する上で、監督自身はどのような点を意識されましたか?

作品を通してメッセージを伝えるというのも大事ですが、そのメッセージを伝えるためには、まずは面白くないといけないと思いました。前半は寓話や風刺のようなブラックコメディのトーンを持っているのですが、後半はルールを作った中心にいるヨンタクという人物を通してスリラーのようなジャンルに変えました。そうすることで予想もしなかった面白さが出ると思いました。それを通してお客さんに「これから話はどういう風に進むんだろう」と思ってもらえるような面白さを加えたかったです。

――作品を通して監督自身が観客に伝えたいことはありますか?

この作品は何かの答えや教訓を与える映画ではないと思います。この映画を観たお客さんには、疑問を持って家に帰って欲しいなと思いました。答えや教訓ではなく、それぞれの生き方によって結論を出せるような、疑問そのものを持ってもらえればと思います。

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