「新藤兼人賞」第28回授賞式「月」で角川歴彦氏がプロデューサー賞を受賞
2023年12月8日 16:00
日本映画の独立プロダクションによって組織される日本映画製作者協会(日映協)に所属するプロデューサーが選出する2023年度「新藤兼人賞」の第28回授賞式が12月8日、都内で開催された。
この賞は、独立プロの先駆者である故新藤兼人監督の名を冠し、有望な新人監督と、活躍したプロデューサーを顕彰するもの。今年公開された作品の中から200作品が選考対象となり、最終選考監督10人の中から金賞は「曖昧な楽園」の小辻陽平監督、銀賞は「わたしの見ている世界が全て」の左近圭太郎監督が受賞した。また、優秀な作品の完成に貢献したプロデューサーや企画者の功績を称えるプロデューサー賞は「月」の角川歴彦氏が受賞した。
日映協の押田興将代表理事がプロデューサー賞の選考理由と経緯を説明。「月」は、「舟を編む」の石井裕也監督が宮沢りえを主演に迎え、実際に起きた障がい者殺傷事件をモチーフにした辺見庸の同名小説(角川文庫刊)を映画化したヒューマンドラマ。角川氏は「私は保釈中の身ですが、選考委員の方々が選んでくれた粋な計らい、男気に感謝して、喜んでお受けしたいと伝えました」とし、この作品が完成し公開されたのは石井監督と、昨年6月に逝去した河村光庸プロデューサー(「新聞記者」で第24回のプロデューサー賞を受賞)の人柄と尽力であると称え、この作品に関わったすべてのスタッフ、キャストに感謝した。
続いて、永井拓郎審査委員長が金賞、銀賞の選考理由を講評とともに述べた。「曖昧な楽園」は、孤独を抱えた人々のあてどない旅を描いたロードムービーで、自主製作で短編作品などを手がけてきた小辻監督の長編デビュー作。第36回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された。小辻監督は「この作品はスタッフ、俳優と対等な立場で自由に意見を出し合いながら作った作品なので、僕以上に、この作品に関わってくれたみんながこれまで以上に活躍の幅を広げてくれると嬉しい」などと受賞の喜びを語った。
「わたしの見ている世界が全て」は、自分ひとりの力で生きてきたつもりの女性が、疎遠だった兄弟との交流を通して大切なことに気づいていく姿を描いたヒューマンドラマ。「東京バタフライ」(2020)で長編を手掛けた左近監督の最新作で、森田想が主演、中村映里子、中崎敏、熊野善啓が共演した。左近監督は「人の心を、自分の心を蝕んでしまうかもしれないという適切な恐怖心を持ち続けながらものを作っていったり、何かに取り組んでいかなければいけないなということをこの作品を通して知ることができた」などと思いを述べた。