ブラジルのアレ・アブレウ監督と「音楽」の岩井澤健治監督が「アニメーション世界、そして音楽」をテーマにトーク
2023年11月15日 14:00

第88回アカデミー賞長編アニメーション賞ノミネート作「父を探して」のアレ・アブレウ監督の最新作「ペルリンプスと秘密の森」の公開直前トークイベントが11月16日、新宿シネマカリテであり、来日したアブレウ監督とアニメーション映画「音楽」の岩井澤健治監督が語り合った。
「ペルリンプスと秘密の森」は、テクノロジーを駆使する「太陽の王国」のクラエと自然との結びつきを大切にする「月の王国」のブルーオの2人が魔法の森に派遣され、森を守る謎の存在「ペルリンプス」を見つけ出す物語を美しい映像と音楽で描き出す。
この日のイベントは「アニメーション世界、そして音楽」というテーマで開催され、両監督はまず互いの監督作の感想を語る。大橋裕之氏の漫画を原作とし、実際に人物の動きなどをカメラで撮影してそれをトレースする“ロトスコープ”という手法を採用した岩井澤監督の「音楽」についてアブレウ監督は「面白かったです。何かを実現する勇気、コメディとしてとても楽しみました。良い意味での軽さ、軽快さを映像の中で感じました。製作の大変な苦労はあったでしょうが、子どもが遊んでいるかのような軽さがありました」と評する。
岩井澤監督はアブレウ監督の新作「ペルリンプスと秘密の森」を試写で3度見たほど気に入ったそうで、「ポップで楽しい気持ちになれる音楽から始まって、テーマとしては楽しいだけではなくシリアスで今の世界情勢にリンクして、それを重く描かず軽やかに描かれているのが素晴らしいと思いました。個人的には、影があってそこに光を入れること。日本は反対で、光があって、そこに影を入れていくので、そのコントラストが面白かったです」と感想とともに、「常に何かを対極を見せていく」コントラストに注目したと語る。

岩井澤監督のコメントを受けて、アブレウ監督は「この物語の着想は子供時代から大人の世界に入っていくということを意識しました。子供が水浸しの森で動物の扮装をして、その後その子供たちがどこに行こうとしているのか、その意味を探るのです。私は森が沈みゆく子供時代だとわかりました。子供時代は色彩にあふれ、抽象的で、私たちのどこか永遠にあるもの。この映画は森の中の出来事をパズルのかけらのように集める子供の遊び、ゲームのように見ていただきたいのです」と本作のテーマと見どころを解説する。
両監督の作品ともに音楽も重要な要素であることから、岩井澤監督はアブレウ監督に「『ペルリンプスと秘密の森』の主題曲がポップでキャッチ―で、聞いた途端に好きになった。予告編とメインテーマはお客さんに最初に届くところなので、僕は映画にとって主題曲はとても重要だと思っています。アブレウ監督は映画の中でどのくらい重要だと思いますか?」と質問を投げかける。

アブレウ監督は「もしかしたら映像より重要かもしれませんね。テーマ曲は映画のポスターくらい大事だと思っています。この映画は私が子供の頃から知っている音楽家アンドレ・ホソイに作ってもらいました。映画の最後にはブラジルでよく知られているミルトン・ナシメントの音楽も入れています。その歌詞は自分の心の中にいつも少年が住んでいるといったもので、正にペルリンプスの内容を凝縮したような内容です」と解説。そして、タイトルの「ペルリンプス」については「ペルリンプスという言葉には何の意味もありません。観客の皆さんと一緒に楽しんでこの映画を作りたく、意味を考える余地を残したかったのです。蛍という意味のポルトガル語にヒントを得て、ほかの言葉を組み合わせました」と造語であることを明かした。

また、両監督の作品はともに約7年の年月がかかっていることから、日本とブラジルのアニメ業界の現状についての話題に。アブレウ監督が「日本のアニメーション産業は安定していて、その文化は素晴らしいと思います。ブラジルのアニメーション業界は模索段階なので、日本から学ぶことがたくさんあります。まだ(アニメーション制作の)文化が根付いていないので、その分我々には自由があり、どんなタイプの作品も作れます。それは日本のアニメから見たら、ゆがんでいるかもしれませんが、その自由さを岩井澤さんの映画から見出しました」と話すと、岩井澤監督は「日本は求められているジャンルの作品が量産される状況なので、不自由かもしれません。僕は次の作品を企画して4年経ちますが、まだ実現できません。アニメーションの多様性は海外の作品から感じることが多いので、日本でももっといろんなジャンルが作られたらいいなと思います」と期待を語った。
「ペルリンプスと秘密の森」は、12月1日からYEBISU GARDEN CINEMAほかで公開。
(C)Buriti Filmes, 2022
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