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リック・ローマン・ウォー監督“空のジョーズ”を描出! 盟友ジェラルド・バトラーと3度目のタッグ【「カンダハル 突破せよ」インタビュー】

2023年10月20日 09:00

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リック・ローマン・ウォー監督
リック・ローマン・ウォー監督
(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

ジェラルド・バトラーがCIAのスパイを演じ、実体験に基づく極秘任務の真実を描く「カンダハル 突破せよ」(10月20日公開)。同作でバトラーと3度目のタッグを組んだのが、リック・ローマン・ウォー監督だ。

エンド・オブ・ステイツ」「グリーンランド 地球最後の2日間」に続く“盟友コンビ”が作り上げたのは、敵地に取り残されたCIA工作員が孤立無援の脱出劇を繰り広げるノンストップアクション。元アメリカ国防情報局の職員としてアフガニスタンに赴任していたミッチェル・ラフォーチュンの実体験をベースに、リアリティと手に汗握るスリルとアクションを兼ね備えたエンタメ大作となっている。

このほど、ウォー監督へのオンラインインタビューが実現。サウジアラビアでの撮影を振り返ってもらいながら、バトラーの魅力だけでなく、“4度目のタッグ作”となる予定の「グリーンランド 地球最後の2日間」の続編についても明かしてもらった。


【「カンダハル 突破せよ」あらすじ】
画像2(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

イラン国内で核開発施設の破壊工作に成功したCIA工作員トム・ハリス(バトラー)は、CIAの内部告発による機密情報漏洩で全世界にその正体が明らかとなってしまう。ミッションを即刻中止し、中東からの脱出を図るトムは、30時間後に離陸する英国SAS連隊の飛行機に搭乗するため、アフガニスタン南部のカンダハルにあるCIA基地を目指す。しかし、イランの精鋭集団・コッズ部隊、パキスタン軍統合情報局(ISI)、さらにタリバンの息がかかったゲリラ、金次第で敵にも味方にもなる武装集団など、トムをめぐる追跡劇は敵と味方が入り乱れる混沌としたものとなっていく。


●脚本で惹かれたポイント、徹底したリサーチから生まれたこだわりとは
画像3(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
――アメリカ国防情報局の職員として、アフガニスタンをはじめとした中東区域に何度も派遣されたミッチェル・ラフォーチュンさんが脚本を手掛けているのが、本作のひとつのポイントです。初めに脚本を読んだ際、どのような点に魅力を感じましたか?

脚本を読んで気に入ったところは、アメリカからの視点だけではなかったこと。これはミッチェルにとっても非常に重要なポイントでした。ある地域に行くと、最初は自分が異邦人のように感じるんですが、そこにいる時間が長ければ長いほど「皆、同じ人間なんだ」と……その状況にとらわれているということに気づいていく。その部分を反映させたかったのです。今回は、中東が舞台。暴力の連鎖から動けなくなってしまっている人間模様というのが描かれているわけです。

通常の映画であれば敵役になるようなキャラクターに対しても、共感力や思いやりというものをしっかり持って描かれている。戦争の最中、我々が戦っている反対側にも、自分の家族のもとに帰りたいと思っている人間がいるという点が非常にいいなと。“人間”として、しっかりと描かれている部分に惹かれました。

画像4(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
――プロデューサーのブレンドン・ボイーアさんによれば、「(監督は)いつも念入りに作品の背景をリサーチする人物」。では、本作に関して、どのようなリサーチを行いましたか?

えぇ、そうなんです。私は“リサーチを徹底する人間”として知られているかもしれません。

カンダハル 突破せよ」の“スパイに関する部分”は、ミッチェルが自身の経験を反映してくれていたので、そこについてはリサーチをする必要がありませんでした。しっかり把握したいと感じたのは「文化」。ここは正確に表現したいと思いました。文化や言葉は違えど、やはり人は人なわけです。皆が“家族のもとに戻りたい”と思っている。そういう物語をつくりたかったんです。

このリサーチに関しては、サウジアラビア自体が助けになりました。5年ほど前はとても抑圧的な場所でしたが、今では文化的に大きな革命が起きています。進歩的なムーブメントが起きていると思います。ただ「女性の権利を認めない」「音楽を町で流してはいけない」など、昔ながらの伝統を守りたいという保守的な層もいるんです。そういう人々と進歩的な人々がぶつかりあっているような状態と言えるでしょう。欧米から訪れた者としては、その場にいるだけで、たくさんのことを吸収できたと思います。

ジェラルド・バトラーの魅力「ヒーローではなく“行動する人間”を演じてくれる」
画像5(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
――ジェラルド・バトラーさんとは「エンド・オブ・ステイツ」「グリーンランド 地球最後の2日間」に続き、3度目のタッグとなりました。「トム役に欠かせない要素を備えていた」という言葉を残されていますが、それはどのような要素だったのでしょうか?

私も、彼も、キャラクターの人間性に興味を持っているという部分が共通しています。アクション映画だとしても、彼はアクションヒーローではなく“行動する人間”を演じてくれるんです。銃弾を弾き返してしまうような、傷つくことのないスーパーヒーローではなく、彼が演じてくれるのは短所もあって、葛藤も抱え、地に足がついていて、観客がシンパシーを感じられるようなキャラクター。彼はそういったキャラクターを演じたいと考え、私自身もそのようなキャラクターを望んでいます。型にハマったキャラクター造形ではなく、人間的な脆さ、センシティブな部分を演じられるのが、彼の魅力です。

●サウジアラビア王国での撮影について
画像6(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
――サウジアラビア王国(アル・ウラー)で大規模な撮影を敢行できたという点も、本作の見どころの一つと言えます。ロケ地としての魅力を教えてください。

今回の撮影が素晴らしい体験であったことは間違いありません。現在の映画製作は世界規模で行われていますが、同じ光景を何度も観ることがありませんか? 映画の舞台として“皆が見たことがある風景”が頻繁に使用されています。今回、サウジアラビアが撮影の候補地としてあがった時、飛び上がるほど喜びました。「アラビアのロレンス」を最後に、大作が取られていない場所だったからです。現地の素晴らしかったポイントは、どこへカメラを向けても、物凄い風景をとらえることができたということ。このような機会は滅多にないと思いますし、恵まれた体験だったと感じています。

●暗視ゴーグル着用でヘリとバトル「“空のジョーズ”と呼んでいました」
画像7(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
――ラフォーチュンさんの脚本を「冒険アクション」として魅せることに成功しています。特に、暗視ゴーグルを活用したヘリとの銃撃戦に引き込まれました。劇中で気に入っているアクションシーンについて教えてください。

まさに今あげてくれたシーンなんです。そのシーンのことを、私たちは“空のジョーズ”と呼んでいました。「ジョーズ」の怖い瞬間は、サメが見えない時だと思うんです。今回、ヘリをジョーズのように扱っています。トムの暗視ゴーグルを通じて、ヘリを見せたい時には映し出すことはできますが「暗闇から突然飛び出してくる」といった瞬間を意識していました。

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一部はCGで表現していますが、大半は実際に撮影した素材です。実は、この撮影はかなり危険でした。照明の乏しいなかでヘリを飛ばすこと。そして、ヘリが撮影のために設置した照明めがけて飛び込んでくるという点も、(操縦士の)目に影響があるため危険だったんです。ですが、可能な限り“リアルに撮影したかった”。これは挑戦と言えるような部分でしたが、“スタントの最高峰”フレッド・ノースさんに参加してもらうことで実現することができたんです。

ナビド・ネガーバンの参加について
画像9(C)COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
――ナビド・ネガーバンさんが、非常に重要な背景を持った役どころとして、本作に参加されています。俳優としての魅力を教えてください。

この作品の製作が始まったのは、2022年。実はそのタイミングでは、アフガニスタンからアメリカが撤退していませんでした。やがて、その事態を受けて、私たちは脚本を書き直しています。ナビドはイランでの戦争を経験し、子どもの頃に他国へと亡命した難民です。彼は人権について、今の政府に対しての気持ちというものをしっかりと表明している人物です。だからこそ、母国ではブラックリストに入っています。そのような背景もあり、モー役を引き受けてくれたんだと思っています。それは、イラン政府への批判を表現するためのものではありません。“私たちは人間である”ということを、より多くの人々に見せることができる機会だととらえてくれたのだと思います。ちなみに、ナビド以外にも、本作には多くの難民の方々が関わってくれています。実際の体験をした人々が参加してくれたということは、映画作家として非常に光栄なことだと思っています。

――ジェラルド・バトラーさんとは、「グリーンランド 地球最後の2日間」の続編で再タッグを組むという情報をお聞きしましたが、進捗はいかがですか? また、シルベスター・スタローンさんと「クリフハンガー」続編に着手するという報道もありましたが、その後はどうなっていますか?

実は「クリフハンガー」については、現在では関わっていないんです。ですので「グリーンランド」の続編についてお話しましょう。舞台は、前作の6年後になります。人間を含め、地球上の種というのは、生き延びるために“移動”をしていきます。今回は“旅をする”という話になる予定です。

例えば、アクション映画であれば、前作と同じようなアクションを繰り返すような続編を作りたくはありません。意識しているのは、これは「家族の物語」であり、感情がしっかりと引き継がれていくようなものを作るということ。撮影は、主にロンドンで行います。現在では、俳優組合(SAG-AFTRA)から撮影の許可が下りています。

前作の主なロケ地だったアイスランドでも撮影を行うんです。アイスランドには、神が最初に作ったような風景が広がっているんです。そんな場所で再び撮影ができることにワクワクしていますね。隕石が直撃した後の地球というものが、どのような状況になっているのかを見せていけたらと。

それと「グリーンランド」に関しては、ユニバース化したいという思いがあります。劇中で描かれていることは、何も欧米だけで起きている事ではありません。地球規模で起こっていることですから、他の文化圏や地域にも影響があるはず。例えば、コロナもグローバルな体験だったわけです。この物語を“普遍的”なものにしたいという思いがあります。例えば、日本はどのような影響を受けていたのか……等々。ジェリー(=ジェラルド・バトラーの愛称)とは、そういうことをやりたいねと話しているんです。

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