リック・ローマン・ウォー監督“空のジョーズ”を描出! 盟友ジェラルド・バトラーと3度目のタッグ【「カンダハル 突破せよ」インタビュー】
2023年10月20日 09:00
ジェラルド・バトラーがCIAのスパイを演じ、実体験に基づく極秘任務の真実を描く「カンダハル 突破せよ」(10月20日公開)。同作でバトラーと3度目のタッグを組んだのが、リック・ローマン・ウォー監督だ。
「エンド・オブ・ステイツ」「グリーンランド 地球最後の2日間」に続く“盟友コンビ”が作り上げたのは、敵地に取り残されたCIA工作員が孤立無援の脱出劇を繰り広げるノンストップアクション。元アメリカ国防情報局の職員としてアフガニスタンに赴任していたミッチェル・ラフォーチュンの実体験をベースに、リアリティと手に汗握るスリルとアクションを兼ね備えたエンタメ大作となっている。
このほど、ウォー監督へのオンラインインタビューが実現。サウジアラビアでの撮影を振り返ってもらいながら、バトラーの魅力だけでなく、“4度目のタッグ作”となる予定の「グリーンランド 地球最後の2日間」の続編についても明かしてもらった。
イラン国内で核開発施設の破壊工作に成功したCIA工作員トム・ハリス(バトラー)は、CIAの内部告発による機密情報漏洩で全世界にその正体が明らかとなってしまう。ミッションを即刻中止し、中東からの脱出を図るトムは、30時間後に離陸する英国SAS連隊の飛行機に搭乗するため、アフガニスタン南部のカンダハルにあるCIA基地を目指す。しかし、イランの精鋭集団・コッズ部隊、パキスタン軍統合情報局(ISI)、さらにタリバンの息がかかったゲリラ、金次第で敵にも味方にもなる武装集団など、トムをめぐる追跡劇は敵と味方が入り乱れる混沌としたものとなっていく。
脚本を読んで気に入ったところは、アメリカからの視点だけではなかったこと。これはミッチェルにとっても非常に重要なポイントでした。ある地域に行くと、最初は自分が異邦人のように感じるんですが、そこにいる時間が長ければ長いほど「皆、同じ人間なんだ」と……その状況にとらわれているということに気づいていく。その部分を反映させたかったのです。今回は、中東が舞台。暴力の連鎖から動けなくなってしまっている人間模様というのが描かれているわけです。
通常の映画であれば敵役になるようなキャラクターに対しても、共感力や思いやりというものをしっかり持って描かれている。戦争の最中、我々が戦っている反対側にも、自分の家族のもとに帰りたいと思っている人間がいるという点が非常にいいなと。“人間”として、しっかりと描かれている部分に惹かれました。
えぇ、そうなんです。私は“リサーチを徹底する人間”として知られているかもしれません。
「カンダハル 突破せよ」の“スパイに関する部分”は、ミッチェルが自身の経験を反映してくれていたので、そこについてはリサーチをする必要がありませんでした。しっかり把握したいと感じたのは「文化」。ここは正確に表現したいと思いました。文化や言葉は違えど、やはり人は人なわけです。皆が“家族のもとに戻りたい”と思っている。そういう物語をつくりたかったんです。
このリサーチに関しては、サウジアラビア自体が助けになりました。5年ほど前はとても抑圧的な場所でしたが、今では文化的に大きな革命が起きています。進歩的なムーブメントが起きていると思います。ただ「女性の権利を認めない」「音楽を町で流してはいけない」など、昔ながらの伝統を守りたいという保守的な層もいるんです。そういう人々と進歩的な人々がぶつかりあっているような状態と言えるでしょう。欧米から訪れた者としては、その場にいるだけで、たくさんのことを吸収できたと思います。
私も、彼も、キャラクターの人間性に興味を持っているという部分が共通しています。アクション映画だとしても、彼はアクションヒーローではなく“行動する人間”を演じてくれるんです。銃弾を弾き返してしまうような、傷つくことのないスーパーヒーローではなく、彼が演じてくれるのは短所もあって、葛藤も抱え、地に足がついていて、観客がシンパシーを感じられるようなキャラクター。彼はそういったキャラクターを演じたいと考え、私自身もそのようなキャラクターを望んでいます。型にハマったキャラクター造形ではなく、人間的な脆さ、センシティブな部分を演じられるのが、彼の魅力です。
今回の撮影が素晴らしい体験であったことは間違いありません。現在の映画製作は世界規模で行われていますが、同じ光景を何度も観ることがありませんか? 映画の舞台として“皆が見たことがある風景”が頻繁に使用されています。今回、サウジアラビアが撮影の候補地としてあがった時、飛び上がるほど喜びました。「アラビアのロレンス」を最後に、大作が取られていない場所だったからです。現地の素晴らしかったポイントは、どこへカメラを向けても、物凄い風景をとらえることができたということ。このような機会は滅多にないと思いますし、恵まれた体験だったと感じています。
まさに今あげてくれたシーンなんです。そのシーンのことを、私たちは“空のジョーズ”と呼んでいました。「ジョーズ」の怖い瞬間は、サメが見えない時だと思うんです。今回、ヘリをジョーズのように扱っています。トムの暗視ゴーグルを通じて、ヘリを見せたい時には映し出すことはできますが「暗闇から突然飛び出してくる」といった瞬間を意識していました。
一部はCGで表現していますが、大半は実際に撮影した素材です。実は、この撮影はかなり危険でした。照明の乏しいなかでヘリを飛ばすこと。そして、ヘリが撮影のために設置した照明めがけて飛び込んでくるという点も、(操縦士の)目に影響があるため危険だったんです。ですが、可能な限り“リアルに撮影したかった”。これは挑戦と言えるような部分でしたが、“スタントの最高峰”フレッド・ノースさんに参加してもらうことで実現することができたんです。
この作品の製作が始まったのは、2022年。実はそのタイミングでは、アフガニスタンからアメリカが撤退していませんでした。やがて、その事態を受けて、私たちは脚本を書き直しています。ナビドはイランでの戦争を経験し、子どもの頃に他国へと亡命した難民です。彼は人権について、今の政府に対しての気持ちというものをしっかりと表明している人物です。だからこそ、母国ではブラックリストに入っています。そのような背景もあり、モー役を引き受けてくれたんだと思っています。それは、イラン政府への批判を表現するためのものではありません。“私たちは人間である”ということを、より多くの人々に見せることができる機会だととらえてくれたのだと思います。ちなみに、ナビド以外にも、本作には多くの難民の方々が関わってくれています。実際の体験をした人々が参加してくれたということは、映画作家として非常に光栄なことだと思っています。
実は「クリフハンガー」については、現在では関わっていないんです。ですので「グリーンランド」の続編についてお話しましょう。舞台は、前作の6年後になります。人間を含め、地球上の種というのは、生き延びるために“移動”をしていきます。今回は“旅をする”という話になる予定です。
例えば、アクション映画であれば、前作と同じようなアクションを繰り返すような続編を作りたくはありません。意識しているのは、これは「家族の物語」であり、感情がしっかりと引き継がれていくようなものを作るということ。撮影は、主にロンドンで行います。現在では、俳優組合(SAG-AFTRA)から撮影の許可が下りています。
前作の主なロケ地だったアイスランドでも撮影を行うんです。アイスランドには、神が最初に作ったような風景が広がっているんです。そんな場所で再び撮影ができることにワクワクしていますね。隕石が直撃した後の地球というものが、どのような状況になっているのかを見せていけたらと。
それと「グリーンランド」に関しては、ユニバース化したいという思いがあります。劇中で描かれていることは、何も欧米だけで起きている事ではありません。地球規模で起こっていることですから、他の文化圏や地域にも影響があるはず。例えば、コロナもグローバルな体験だったわけです。この物語を“普遍的”なものにしたいという思いがあります。例えば、日本はどのような影響を受けていたのか……等々。ジェリー(=ジェラルド・バトラーの愛称)とは、そういうことをやりたいねと話しているんです。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。