岡田将生×松坂桃李×柳楽優弥、芸達者な3人による「ゆとり」談義
2023年10月14日 14:00
![取材中も仲の良さ全開だった(左から)松坂桃李、岡田将生、柳楽優弥](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/93773584682433c4/640.jpg)
2016年に日本テレビ系で放送された連続ドラマ「ゆとりですがなにか」が、スペシャルドラマを経て「ゆとりですがなにか インターナショナル」として映画化された。連ドラから映画化の流れが珍しくないなか、これほどの年数を経て再結集するケースは稀なこと。「ゆとり世代」と揶揄されてきた男たちに息吹を注いだ岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥は、リラックスした面持ちで話し始めた。(取材・文/大塚史貴、写真/根田拓也)
連ドラ放送時、若い視聴者の心を鷲づかみにした3人が帰ってくる。岡田扮する坂間正和は会社を辞め家業の坂間酒造を継ぐが大口契約の打ち切り寸前の危機にあえぎ、妻・茜との夫婦仲もイマイチ。松坂が息吹を注いだ山路一豊は優しく真面目だが、いまだに女性経験ゼロの小学校教師。柳楽演じる道上まりぶは元客引きで、11浪目に悲願の大学合格を果たすが卒業後に中国で展開した事業に失敗し、出戻りでフリーターになっているという設定だ。
![画像2](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/13456be5670fed5a/640.jpg?1697254061)
「ゆとり世代」の3人も30代半ばに差し掛かり、働き方改革、テレワーク、多様性、グローバル化など新しい時代の波が押し寄せ、まるで“ゆとり”のない日々を送りながら、時代にもがきながら立ち向かう姿を描いている。
3人は連ドラ終了後から、続編制作を熱望。NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の打ち上げの席で、松坂が「『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』みたいな話を、ゆとりの3人で出来ないですか?」と脚本の宮藤官九郎に相談したことで、事態が動いた。開発が進み、当初は2020年10月のクランクインを目指していたが、コロナ禍により2年後に延期されることになった。
岡田、松坂、柳楽はドラマ撮影終了後もコミュニケーションは欠かさなかったようで、「ちょこちょこ連絡は取り合っていました」(松坂)、「グループLINEもありますし」(岡田)、「Zoom飲みもしたよね」(柳楽)と振り返る。そして、その“Zoom飲み”で今作の話をしていたという。
![画像3](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/ccd34ed61e7d73e3/640.jpg?1697254061)
柳楽「ちょうどコロナの影響で撮影が延期になってしまったんですが……」
岡田「みんなで、もうやる前提で話をしていましたね」
松坂「僕らの関係性でいえば、いつでも現場に入れる感じではありました」
あうんの呼吸でテンポの良い会話を繰り広げていく3人だが、この関係性を構築するうえで、連ドラで共に過ごした時間が重要であったことは想像に難くない。そしてまた、自らの役どころへの愛着も隠しようがない。
![画像4](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/d7eab4cde9115318/640.jpg?1697254061)
松坂「この作品によって3人の友情が生まれたといっても過言ではないんです。僕自身、この作品には感謝も愛着もあるから、特別な思いがあります」
岡田「多くのキャストが感じていることだと思うのですが、もうひとりの自分というか、自分自身と役の距離が近いんです。(自分の演じた)正和に関しても、演じているのか演じていないのかが分からなくなる瞬間があるんですよ」
![画像5](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/b741e38c9bbc0dcb/640.jpg?1697254061)
松坂「この作品では、感情をためてためて吐き出す……ということがあるのですが、宮藤さんの書く言葉って、違和感を抱くことなくスッと入ってくるんです。自分自身も、キャラクターを通して吐き出している感覚になる。だから役との距離が近い感覚になるんだと思います」
柳楽「確かに言いたくなるセリフが多いし、心から理解できるセリフというのが多いんですよね。まりぶはコミカルな面もあるけれど、ズバッと切り込んで口にすることもあるので好きです」
今作のタイトルからも見て取れるが、日本人はいつの時代も「〇〇世代」と括るのが好きだ。団塊世代(1947~49年生まれ)、しらけ世代(50~65年頃生まれ)、バブル世代(65~69年頃生まれ)、就職氷河期世代(71~82年頃生まれ)、団塊ジュニア世代(71~74年頃生まれ)、ミレニアム世代(80~90年頃生まれ)、さとり世代(85~95年頃生まれ)、ゆとり世代(87~2004年頃生まれ)、Z世代(95~2010年頃生まれ)と挙げればきりがない。
![画像6](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/6de4ee990b58418a/640.jpg?1697254061)
上記羅列を見て気づかされるのが、「ゆとり世代」と「Z世代」が一部重複していること。諸説あるだろうが、いかにあやふやな括り方であるかが浮き彫りになってくる。それは3人も感じていたようで、「野心がない」「競争意識がない」「協調性がない」といわれる「ゆとり世代」の本質には重きを置いていないようだ。
岡田「僕は、上の世代の人たちがただ括っているだけで、ひとりひとりの人間で個性は全然違いますし、絶対に時代で括ってはいけないと思っているんです」
松坂「その時代に生まれ落ちて、そこでレッテルを張られながらも生き抜いていくってことなのかなあ。何を言っているのか分からなくなってきた(笑)」
![画像7](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/a92a0a6310c77a54/640.jpg?1697254061)
柳楽「ゆとり世代という括りは、よく分からないですね。良い先輩に出会ったりするのも、また人それぞれじゃないですか。答えになっていないかもしれませんが、世代ではなく人それぞれだと思います」
今作のセリフで、試写室に笑いが起こったものの中に「Z世代のZって、絶望?」というものがある。「Z世代」とは、一般家庭にパソコンが本格的に普及し始めてから生まれた世代を指し、ITリテラシーが高くSNSを駆使した情報収集、発信を得意とするといわれている。また、アメリカでは1960~70年代生まれを「X世代」、80~90年代前半を「Y世代」と呼称していたこともあり、後に続く世代として「Z世代」と呼ばれるようになったようだ。
「ゆとり」と「Z」の想定年代が重複することに驚きの声を挙げた3人だが、そもそも意識していなかったからこそ「Z世代」とのギャップを感じることもなかったという。
![画像8](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/5979272da8ee5b72/640.jpg?1697254061)
岡田「この業界って若くして仕事をする方々も多いので、常識的な方々が多いんです。早くから社会に出て色々なことを学ばれていますから、Z世代といわれる方々に対しても、あまり違和感を覚えることがないんですよね」
松坂「『これだからZ世代は……』という見方をそもそもしていないんです。この業界は、現場に入れば皆が横一列で接するので、実はあまり気にしたことがないかも」
![画像9](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/ff82e96941dc1117/640.jpg?1697254061)
柳楽「僕らはあまり意識したことがないかもしれませんね。逆に面接官とか、人を選ぶ側の立場の人だと分かりやすかったりするのかな」
松坂「たとえばの話ですが、技術部で技師さんのもとに入った新人の方を見ていると……。『あれ持って来て!』みたいな指示に対して無言だったり(笑)。そういうのを見ると、確かに『これは世代なのかなあ』と感じることもありますね。こればかりは、生きてきた環境が違うからこそなのかな……と感じてしまいますよね」
本編では三者三様、さまざまな形で「人生の試練」が唐突にやってくる。3人には、俳優として眼前に突き付けられた試練がどのようなものであったのか聞いてみた。
岡田「作品ごとに毎回試練だなと感じています」
松坂「作品ごとにハードルが高くなっていない? 自分がそうしているんだろうけれど」
![画像10](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/2bb27f1b94717e50/640.jpg?1697254061)
柳楽「僕は逆にハードルを高く設定し過ぎていたから、30代になってだんだん自然になってきたかもしれない」
岡田「ハードな作品をやったりすると、そのあとにちょっとそうじゃない作品をやりたがる自分がいて……。甘えているなあって思います」
松坂「色々な角度から色々な作品に触れてきたからこそ、自分なりの見解や考え方が出てきたりもするじゃないですか。逆にそうなると難しくなるというか……」
![画像11](https://eiga.k-img.com/images/buzz/106139/d31cdf1c278ab491/640.jpg?1697254129)
柳楽「なるほど、引き出しの問題だね。どれが最適なんだろう?って」
松坂「そうそう。こういう時は、あの時の経験を生かしてこれもいけるのか? などと考えたりすると、選択肢が増えてきた分、難しいんです(苦笑)」
適度な笑いを含みながら、3人の軽快なテンポは留まるところを知らない。水田伸生監督のメガホンのもと、絶大な信頼関係と適度な緊張感が損なわれることのない現場に思いを巡らせれば、それもまた必然ではなかろうか。演技なのか、演技でないのか分からなくなる境地へと3人を誘う「ゆとりですがなにか」が、まだまだ続く……と期待したくなってしまうのは、なにも筆者だけではないであろう。
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執筆者紹介
![大塚史貴](https://eiga.k-img.com/images/writer/95/face.jpg?1694418817)
大塚史貴 (おおつか・ふみたか)
映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。
Twitter:@com56362672
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