宮沢りえ、覚悟を持って臨んだ「月」が公開 撮影中に他界した河村光庸さんへ思い馳せる
2023年10月14日 14:00

女優の宮沢りえが10月14日、新宿バルト9で行われた映画「月」公開記念舞台挨拶に、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョー、石井裕也監督と共に登壇。宮沢はセンセーショナルな題材の作品へ参加した理由を語った。
本作は、実際の障がい者殺傷事件をモチーフにした辺見庸による同名小説を、「茜色に焼かれる」「舟を編む」などの石井監督が映画化。元有名作家の堂島洋子(宮沢)は、森の奥深くになる重度障がい者施設で働き始めるが、そこで目の当たりにした現実に心を激しく突き動かされていく――。

13日に全国91館で公開された本作。宮沢はプロデューサーを務めた故河村光庸さんから最初に企画の話を聞いた当時を振り返り「殺伐としたいまの世の中、日本だけではなく地球上にいろいろなことが起きており、そこで生きていくためにどうしても保身に走ってしまう自分にもどかしさがあった」と語ると、「河村さんとお話をして、賛否両論がある作品になるだろうなという予感はありましたが、自分が感じているもどかしさをこの作品を通して乗り越えたいと思った」と胸の内を明かす。
さらに宮沢は「撮影中、河村さんという核がいなくなってしまった」と突然の出来事について触れると「監督、スタッフ、キャストはみな混乱しましたが、河村さんの魂を受け継いで作品にしたいという熱気に背中を押され続け、演じ切ることができました」と語った。

石井監督も本作の企画を聞いたときは「すごく怖かったのが一番の感情」と語る。それでも、「この障がい者施設の闇というのは、比喩でも誇張でもなく人類全体の問題と理解しました。この問題はあらゆる社会問題に共通している。逃げることはできないと思いました」と作品を引き受ける覚悟を持って臨んだという。

洋子が働く障がい者施設の同僚・さとくんを演じた磯村も「河村プロデューサーから企画書をいただいたとき、参加しないとダメだ」と直感的に感じとったというが、「それだけではやれない。ものすごいエネルギーが必要な映画だと思ったので、監督をはじめ、いろいろな人と話し合いながら決めました」と覚悟を決めるまでに時間を要したという。

磯村と同じく洋子が働く障がい者施設の同僚・陽子を演じた二階堂は「私はモチーフとなった事件のことをすごく覚えていたので、企画書をいただいたとき、社会的にも私もまだ消化できていないものを作品にするは、果たしてやっていいことなのか」と考えさせられたと述懐。「一番怖いのは、関心が薄れていくこと。考えることを止めてしまうこと」という思いを持って参加した。

宮沢演じる洋子の夫・昌平を演じるオダギリも「気楽に観られる映画もいいですが、こういった重いものを受け取って持ち帰る映画も必要。僕はしっかり立ち止まって考えようという映画に興味があって、いつもそういう作品に参加したいと思っていた。なにより石井監督が向き合って作ろうという挑戦に乗らないわけにはいかない」と参加理由を語っていた。
キャスト、スタッフ、監督が覚悟を決めて臨んだ作品。宮沢は「舞台挨拶中、ずっとドキドキして手に汗をかいていました」と観客がどんな判断を下すか緊張していたことを明かすと「日々人が生きていくなかで、見たくないもの、聞きたくないことはあります。ふたを開けるのは勇気がいるしエネルギーもいりますが、ポジティブな感情じゃないものかもしれませんが、考えるきっかけになる。そんな映画になってくれれば」と作品に込めた思いを語っていた。
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