ギレルモ・デル・トロ監督、トロント映画祭で独自のAI論を展開
2023年9月14日 07:00
オスカー監督ギレルモ・デル・トロが、ハリウッドを揺るがすダブルストライキにより人々の関心度がますます高まっている「AIの脅威」という議題について、個性派クリエイターらしいユニークな見解を語った。米ハリウッド・レポーターが伝えている。
現在カナダで開催中のトロント国際映画祭が目玉として掲げるプログラム“TIFFヴィジョナリーズ”で基調講演を行ったデル・トロ監督は、「AI技術の進化が心配ではないかとよく聞かれるのですが、私はその度に、人間の愚かさのほうがはるかに心配だと答えています。だってAIは所詮ツールにすぎないでしょ?AIを使って映画を作りたかったら、勝手に作ればいい。そんな短時間で簡単に作れてしまう駄作で満足するような輩には、まったく興味がありませんね。肝心なのは、作り手が己のヴィジョンをスクリーンに転化するのに、AI技術をいかに賢く取り入れるかということ。AIに丸ごと作品を作らせるのは、『モナ・リザ』をプリンターで複製して、自分が描いたと主張するようなもの」と、生成AIを使った“創作活動”を真っ向から否定した。
手描きやストップモーションといった伝統的なアニメーション制作をこよなく愛するデル・トロ監督は現地時間7日、同映画祭のオープニング作品として宮崎駿監督作「君たちはどう生きるか」が上映された際にも、映画を紹介すべく上映前にサプライズ登壇して会場を沸かせたが、基調講演ではそんな古き良きアニメ作りへの情熱が炸裂した。
「アニメはお子さま向けのもの、という既成概念にはつくづくウンザリですよ。アニメーションは媒体であってジャンルではなく、ある意味もっともピュアな芸術と創造のための表現手段なのだということを、より多くの人たちに理解してもらえたら....と常々願っています」と熱く語ったデル・トロ監督は、メインの議題として掲げられたAI技術に再び触れ、「CGアニメと呼ばれるものにしても、実際にはそうじゃない。人間の手で描かれたものをCGでアニメーション化していくというだけで、そこにはアニメーター一人一人の個性がしっかりと反映されているのです」と力説した。