第80回ベネチア国際映画祭、トニー・レオンに栄誉金獅子賞 リュック・ベッソン新作で復活の兆し
2023年9月4日 14:00

現在開催中の第80回ベネチア国際映画祭で、現地時間の9月2日、トニー・レオンが栄誉金獅子賞を授与された。
トロフィーを手渡したのは、「ラスト、コーション」で組んだアン・リー監督。レオンは感涙に胸を詰まらせながら、「こんな素晴らしい賞をわたしがとても尊敬する、また親友でもあるアン・リー監督から頂けることに感謝します。そしてベネチア国際映画祭にも感謝します。本当に光栄です!」と涙目に満面の笑顔を浮かべた。さらに、「まずわたしの親愛なる妻、カリーナ・ラウに感謝します。そしてわたしの家族、友人、そして世界中のファンに。香港の映画界で育ったこと、キャリアをスタートできたことを幸せに感じます。この賞を過去41年間、一緒に仕事をしてきた素晴らしい人々と、そして香港映画界と分かち合いたいと思います」と語り、喝采を浴びた。
レオンは2007年のベネチア金獅子作品である「ラスト、コーション」でもベネチアを訪れているが、今回はレッドカーペットでファンたちにサインをするなど、よりリラックスした表情が見られた。
(C)_Giorgio_Zucchiatti_La_Biennale_di_Venezia_-_Foto_ASACハリウッドのストライキの影響を受けて、今年はレッドカーペットに並ぶ俳優の顔が少なめだが、目立っていたのはリュック・ベッソンの新作「ドッグマン」に主演したケレイブ・ランドリー・ジョーンズだ。ベッソンが実際の事件をもとに脚本を書いた本作(マッテオ・ガローネ監督の同名の作品とはまったく別もの)は、アメリカを舞台に、幼い頃に暴力的な父により犬小屋に監禁され、犬との特別な絆を築いた少年のその後を、サスペンスフルに描く。映画の後半は若干「ジョーカー」を思わせる場面もあるが、ジョーンズの圧巻の演技はフォアキン・フェニックスに勝るとも劣らない。作品的にもベッソンの近作には見られなかった力がみなぎり、復活を印象づけた。

もっとも、現在コンペ作品のなかでダントツに評価が高いのは、ヨルゴス・ランティモスの「哀れなる者たち」だ。前作「女王陛下のお気に入り」に続くエマ・ストーンとの顔合わせとなった本作は、アラスター・グレイの小説の映画化であり、天才的科学者(ウィレム・デフォー)の手で死から蘇ったベラが、ゼロから人生を学ぶ。フランケンシュタイン的なストーリーをベラの視点から、現代的な要素(たとえば社会における女性の立場への目配せなど)を交えて描き、舞台美術、コスチューム、サウンドなどすべての点で総合的なアートワークに昇華されている。(佐藤久理子)
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