「沈黙の艦隊」が完成　大沢たかお、原作者かわぐちかいじ氏の賛辞に安堵の表情

「沈黙の艦隊」は、週刊漫画雑誌「モーニング」（講談社）にて、1988年から1996年まで連載され、累計発行部数3200万部（紙・電子）を誇る人気作を、映画「ハケンアニメ」などを手掛けた吉野耕平監督が実写化。日本の近海で発生した海難事故で海上自衛隊の潜水艦・やまなみが沈没。艦長の海江田四郎二等海佐以下、全乗員76名の生存が絶望的との報道に衝撃が走るが、乗員は無事生存していた。彼らは、日米が極秘に作った原子力潜水艦の乗員に選ばれており、事故は彼らを日本初の原子力潜水艦に乗務させるための偽装工作だった……。

会見に参加した大沢は、本作で主演を務めるほかプロデューサーとしてもクレジットされている。大沢は「松橋真三プロデューサーから声を掛けていただいたのですが、原作を知っている人間からすれば、タブーに切れ込むハードルが高い作品」と当時の心境を明かし、「防衛省、海上自衛隊に協力を得られるのかという課題があった」と実写化実現には大きな壁があったという。

そんななか、海上自衛隊の協力を含め、多くの人たちの力で「原作に見合うスケールが確保できました」と関係者に感謝を伝える。原作者のかわぐち氏も、以前の記者会見では「よくこの作品を実写化しようと思いましたね」と笑っていたが、実際完成した作品を観て「原作の面白さを再確認させてもらえました。ありがとうございます」と大沢をはじめスタッフらに感謝した。

かわぐち氏は、映画を称賛するポイントに「漫画も映画も、人物が生き生きとしていないと、その世界が嘘八百になってしまうのですが、大沢さん演じる海江田艦長からは生きている力を感じた」と登場人物たちが躍動していたことをあげる。

さらに、かわぐち氏は「原作にはいろいろな問題があちこちに散らばっているのですが、枝葉をそぎ落とし、大切なことがしっかりと作品の中に落とし込まれている」とストーリーテリングにも舌を巻いたという。そんなかわぐち氏の評価を大沢は安堵の表情で聞いていた。

会見後に行われた舞台挨拶には、作品に多大なる協力をした防衛省、海上自衛隊の隊員たちが映画を鑑賞しにやってきた。大沢は「この作品は防衛省、海上自衛隊の協力がなければ完成しなかった」と直接感謝を述べると、「素人の僕が、核の問題はもちろん国防や安全保障などの抱えていた思いを述べても、一生懸命聞いていただき、理解してくださり『やってみてください』と仰ってくださったことは今でも覚えています」と振り返る。

吉野監督も、30年以上前の原作を現代に実写映画として送り出すことに「30年前とは言いますが、基本的にいま抱えている問題とまったく同じことを描いている」と話し、大沢は「実写化不可能と言われたかわぐち先生の『沈黙の艦隊』が、防衛省、海上自衛隊、かわぐち先生、Amazonの皆さんのおかげでこうして完成したことに感謝します」と、感無量な表情を浮かべていた。

「沈黙の艦隊」は、9月29日から全国公開。