鳥山明の絵がそのまま動くアニメーションを目指して 「SAND LAND」 横嶋俊久監督インタビュー(前編)
2023年8月19日 20:00
鳥山明氏が2000年に「週刊少年ジャンプ」で短期連載した漫画を劇場アニメ化した映画「SAND LAND(サンドランド)」。水が失われた砂漠の世界を舞台に、悪魔の王子ベルゼブブが魔物のシーフ、人間の保安官ラオとともに幻の泉を探す冒険ストーリーが描かれる。
3DCGと手描きの作画を融合させ、鳥山氏の絵がそのまま動くアニメーションを目指した同作のメイキングを横嶋俊久監督に聞いた。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
その後、正式に本編をつくることになり、そのときのスタッフィングでは3D部分を神風動画だけで担当するのはちょっと難しいということになり、ANIMAさんに相談して入っていただいたという感じです。
共同制作をうけてくださったANIMAさんには、CGディレクターの重川(尚之)さんをはじめとして僕が演出の仕事をはじめた頃の作品でお世話になった方々が多く参加してくださって、彼らとやれるのなら一緒につくっていけるんじゃないかなと思えました。ディレクションアドバイザーの神志那(弘志)さんをふくめ、プロデュースサイドに素晴らしい座組を組んでいただいたことで監督することを決断できたところがあります。
今回のような絵作りが実現できたのは、各セクションのリーダーや制作陣、作画やCGのスタッフさんたちが、僕の言ったことにたいして最後までねばって付き合ってくれたおかげというのが本当のところで、スタッフ一丸となって違和感や差異みたいなところをつぶしていってくれました。色彩設計の安部(なぎさ)さんにはお仕事の範囲を越えた作業をいとわずやっていただいたり……。本当にそこは感謝しかなくて、大変だったり辛かったりした方も大勢いたとは思うのですが、誰もあきらめずに付き合ってもらったからこそ、この絵にたどり着くことができました。
モデリングした戦車を動かす際も、CGディレクターの重川さんや中島(丈)さん(エピソードCGディレクター)が膨大な資料を集めてくださって、戦車をどういう動きにするかいちからすりあわせ、それをもとに各アニメーターに伝える資料をつくって、とりかかってもらいました。映像面でも音の面でも、漫画ではこうやって動いているんだろうなというのを表現できたと思います。
シーフ役のチョーさんは、収録ではアドリブ的なセリフをかなり入れられていて、チョーさんが言うと、もうシーフが言っているとしか聞こえないからオッケーせざるを得ないというか、それぐらい楽しんでやっていただきました。ベルゼブブとシーフ、ラオとシーフのやりとりなど、チョーさんが演じるシーフが間に入るからこそ生まれる面白い空気感みたいなものがでていると思います。
制作中に何度も繰り返し見ているので初見の気持ちがもう分からなくなっていて、この作品が世間にうけいれてもらえるかどうか確信まではもてなかったというのが正直なところです。それをお客さんに初めて見せるタイミングが「サンディエゴ・コミコン」だったのですが、本当にすごい人数の方がきてくれました。
お客さんの反応を直接見るのが怖くて、上映前の挨拶が終わったらすぐ帰ろうと思っていたのですが、流れで一緒に見ることになりまして、そうしたらそこですごくいいリアクションをしてくれたんです。ギャグパートではどっと笑ってくれるし、最後は歓声があがるぐらい盛り上がってくれて、映画が終わったあとには前の席に座っていた僕をお客さんが見つけて、「良かった」「一緒に写真を撮ろう」と声をかけてくれて、喜んでもらえたことを肌身に感じることができました。
「ファンタジア国際映画祭」は、僕の監督作品「COCOLORS」で賞をいただいた(※アニメーション部門の最優秀アニメーション賞にあたる「今敏賞」の短編部門を受賞)思い入れのある映画祭で、6年ぶりの参加でした。ここでもお客さんが温かくむかえいれてくれて、喜んでもらえました。審査員特別賞までいただけて、本当にありがたいなと思いました。
直前まで作業をして海外に行くことになったので満身創痍の状態だったのですが、海外の皆さんの良いリアクションにふれ、元気づけられて日本に帰ってくることができました。この反応をスタッフの皆さんにもお伝えしたいと思っています。つくっているときは暗中模索というか、毎回楽しんでもらえるだろうかと思いながらつくっているところがありますが、こうして喜んでくれる人たちが世界にいることが分かってとても勇気づけられました。
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トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
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