「4ヶ月、3週と2日」クリスティアン・ムンジウの新作は“人間の対立と凶暴性”を描く 10月14日公開
2023年7月25日 22:00

「4ヶ月、3週と2日」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したルーマニアの監督クリスティアン・ムンジウの最新作「R.M.N.(原題)」が、「ヨーロッパ新世紀」の邦題で、10月14日から公開されることが決定。あわせて、ポスタービジュアルが披露された。
1980年代のチャウシェスク独裁政権下のおぞましい社会状況を描き、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した「4ヶ月、3週と2日」に続き、「汚れなき祈り」ではカンヌ国際映画祭の女優賞と脚本賞を受賞、「エリザのために」では同・監督賞に輝いたムンジウ監督。6年ぶりに完成した新作「ヨーロッパ新世紀」は、ルーマニア中部ルーマニアのトランシルヴァニアを舞台に、人間の対立と凶暴性を描く問題作。村で起こったささいな対立が深刻な紛争へと発展していく様を描きつつ、幾多の火種を抱えたヨーロッパ、そして分断された世界の危うい現状を、まざまざとあぶり出した戦慄の社会派サスペンスだ。

出稼ぎ先のドイツで暴力沙汰を起こしたマティアスが、トランシルヴァニアの村に戻ってくる。しかし妻との関係は冷めきっており、森でのある事をきっかけに口がきけなくなった息子、衰弱した父への接し方にも迷う彼は、元恋人のシーラに心の安らぎを求める。ところがシーラが責任者を務める地元の工場が、アジアからの外国人労働者を迎え入れたことをきっかけに、よそ者を異端視した村人たちとの間に不穏な空気が流れ出す。
トランシルヴァニア地方は、ブラム・ストーカーの古典的な恐怖小説「吸血鬼ドラキュラ」の舞台になったことで有名だ。カルパチア山脈に囲まれたこの地方は、古くからの伝統行事が受け継がれ、ヨーロッパ有数の野生動物の生息地でもある。


そうしたトランシルヴァニア特有の風土をあますところなくカメラに収めた本作は、ルーマニア語、ハンガリー語、ドイツ語、英語、フランス語のセリフが飛び交う多民族の村の複雑怪奇な人間模様を映し出している。村の住民が一堂に会する集会所でのクライマックスは、17分間にもおよぶ固定カメラの長回しショットで撮影。決して他人事ではない“壊れゆく世界”の有り様が鮮烈に映像化されている。
日本版ポスタービジュアルは、森の中で何かを見て思い詰めたような表情の少年を大きく捉えたもの。マティアスの息子である幼い少年が、森で得体の知れない何かを目撃するミステリアスな冒頭シーンを採用している。「人間を俯瞰する山、潜む動物…。その森で、少年は何を見てしまったのか?」「それは退化か、進化か、それとも破壊の予兆か―」というコピーが指し示すものとは…小さい村で一体何が起こるのか、少年はなぜ口がきけなくなったのか。不穏な雰囲気が相まって展開が気になる仕上がりだ。
「ヨーロッパ新世紀」は、10月14日から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。
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