ダンス好きの明るい少女は、なぜ死を選んだのか 青少年を消耗品のようにこき使う企業の実態を描く「あしたの少女」予告
2023年7月13日 17:00

ペ・ドゥナが主演し、巨匠イ・チャンドンがプロデューサーを務めた「私の少女」で鮮烈な長編デビューを飾ったチョン・ジュリ監督の8年振りとなる最新作「あしたの少女」の予告編がお披露目された。
本作は、2017年に韓国で実際に起こった事件をモチーフに、過酷な労働環境に疲弊し、自死へと追いやられていく少女と、事件を捜査する刑事の姿を描く物語。22年、韓国映画として初めて第75回カンヌ国際映画祭の批評家週間の閉幕作品として選ばれ、第23回東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞した。ペ・ドゥナ(「ベイビー・ブローカー」)が真相究明に執念を燃やす刑事ユジン、新鋭キム・シウン(ドラマ「ミリオネア邸宅殺人事件」)が想像を絶する労働環境に置かれるソヒを演じた。

舞台は現代の韓国、高校生のソヒは、担任教師から大手通信会社の下請けのコールセンター運営会社を紹介され、実習生として働き始める。しかし、会社は顧客の解約を阻止するために従業員同士の競争をあおり、契約書で保証された成果給も支払おうとしなかった。そんなある日、指導役の若い男性チーム長が自殺したことにショックを受けたソヒは、自らも孤立して神経をすり減らしていく。やがて、凍てつく真冬の貯水池でソヒの遺体が発見される。捜査を担当するユジンは、彼女を追いつめた会社の労働環境を調べ、いくつもの根深い問題をはらんだ真実に迫っていく。

予告編の前半では、ソヒがダンスをする姿と並行する形で、コールセンターで過酷なノルマに苛まれる姿が描かれる。後半では、ソヒが勤めていた会社の実態に迫り、彼女を自死へと追いやった真相を探る刑事ユジンの、鬼気迫る眼差しを活写。なぜ、ごく普通の高校生が自死を選ばなくてはならなかったのか。なぜ周囲の大人たちは救いの手を差し伸べなかったのか――映像では、社会の現状を鋭く見つめた、いくつもの問いが投げかけられている。


チョン監督は、ダンス好きの明るい少女が、大人たちによって搾取され、疲弊していくさまを、迫真のリアリティをこめて描いた。無垢な青少年を消耗品のようにこき使う企業の実態をあぶり出し、日本よりもはるかに競争が厳しいといわれる、韓国の社会システムの歪みをも告発している。


本作は2部構成で、ソヒがコールセンターで働く前半は、物語のベースとなった実際の事件を忠実に再現。ユジンが登場する後半は、韓国の労働問題を追及してきたジャーナリストらに触発され、創作したものだという。ユジンがソヒの足取りを追体験していく捜査のプロセスは、ふたつの異なる時間軸が共鳴するような感覚をもたらし、象徴的な“光”をモチーフにした演出にも注目だ。英題の「ネクスト・ソヒ」(次のソヒ)が示す通り、本作には「ソヒのような犠牲者を二度と生み出すべきではない」という願いがこめられている。
「あしたの少女」は、8月25日から東京・シネマート新宿ほか全国公開。
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