あしたの少女

劇場公開日:

あしたの少女

解説

「私の少女」のチョン・ジュリ監督とペ・ドゥナが再タッグを組み、2017年に韓国で起こった実在の事件をモチーフに、ごく普通の少女が過酷な労働環境に疲れ果て自死へと追い込まれていく姿をリアルに描いた社会派ドラマ。

高校生のソヒは、担任教師から大手通信会社の下請けであるコールセンターを紹介され、実習生として働き始める。しかし会社は従業員同士の競争を煽り、契約書で保証されているはずの成果給も支払おうとしない。そんなある日、ソヒは指導役の若い男性が自死したことにショックを受け、神経をすり減らしていく。やがて、ソヒは真冬の貯水池で遺体となって発見される。捜査を開始した刑事ユジンはソヒを死に追いやった会社の労働環境を調べ、根深い問題をはらんだ真実に迫っていく。

ペ・ドゥナが刑事ユジンを演じ、少女ソヒ役には新進女優キム・シウンを抜てき。2022年・第23回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞を受賞。

2022年製作/138分/PG12/韓国
原題:Next Sohee
配給:ライツキューブ
劇場公開日:2023年8月25日

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映画レビュー

4.5二人の主人公らの名演が胸に突き刺さる

2023年8月29日
PCから投稿

一人の女子高生が学校側からの就職先紹介で足を踏み入れた職業体験。そこでのコールセンター業務は勤務する若者の精神を摩耗させ、精神的に追い詰めていくものだった。冒頭であれほど無心になってダンスに情熱を傾けていた主人公が、徐々に顔をうつむかせ、不条理と闘う意欲すら剥ぎ取られていく前半は、観客にとっても怒りと衝撃がたえず沸き起こる時間帯だ。もしもこれだけで終止していたら、私は絶望的な気持ちのまま立ち直れなかったろう。しかし本作は後半になって視点を変える。ぺ・ドゥナ演じる刑事が社会派ともハードボイルドともいいうる存在感で地べたを這うように闇を追うのだ。悪の糾弾といった分かりやすい手法は採らず、かつて少女が見た光景、感じた無力感を刑事もまた目の当たりにし、事件を点ではなく、社会全体を覆う膜のような「構造」として我々に提示するその試み。一直線に突き進むベクトルが、闇に刺す光のごとく胸をえぐる秀作である。

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牛津厚信

5.0この世界が全ていけない、みんな被害者なんだよ

2024年3月23日
iPhoneアプリから投稿

2023年劇場鑑賞53本目 名作 80点

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サスペンス西島

4.0カタルシスを感じられない社会派サスペンスの醍醐味

2024年2月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

怖い

監督と脚本は『私の少女』のチョン・ジュリ

二部構成
前半キム・ソヒ視点
後半オ・ユジン視点

実話が元になっているらしい

粗筋
担当教師の勧めで職場実習は始めた高校生ソヒ
勤務先は大手通信企業の下請けコールセンター運営会社
あの手この手と顧客の契約解消をおもいとどまらせる業務
ブラック企業だった
上司のチーム長が自殺した
ソヒは職場環境や仕事内容が辛くなり会社を無断欠勤
学校と会社の板挟みで自殺した

すっかりクールな刑事役が板についてきたペ・ドゥナ
自分は『吠える犬は噛まない』や韓国版『ドラゴン桜』のようなコミカルな芝居の方が好きなんだが
叱る上司に激しく熱く反論するシーンは好き
でも頭に来たからと言って捜査中に教師を殴ってはいけない
あれはマイナス演出
じっと耐えるべきだった

2人は同じダンスサークルに所属していた

主人公は高校生だが堂々と飲酒をしている
大人は誰も注意しないし普通に提供する
韓国では19歳からOKで高校生でも最上級生で誕生日を迎えると19歳になるらしい
お国の事情が違う
海外の作品は予備知識がないといろいろと強い違和感を感じてしまう

韓国の映画やTVドラマをよく見る人たちにはすっかりお馴染みの「チーム長」という表現だがそれが大きな言葉の壁になっていてわかりにくい
細かい理屈はもういいからそろそろ部長か課長と表現するべきだろう
韓国語の翻訳家は戸田奈津子と違い変な拘りを持っているようだが翻訳を職する者なら「チーム長」こそ誤訳であり誤魔化しである

韓国作品であるよく見かける「クソアマ」っていうのもなんだかなあ
誤訳じゃないのかな
現代の日常的な日本語に訳さないと

自殺を自死と表現しろというと遺族側?の動きも正直かなりの抵抗感はある
言葉をいくら変えてみたところで世間一般の「命を粗末にした」からそれでもって「社会の犠牲者」とか「尊い選択」などに変換されることはないはず
遺族からすれば「なぜ死んだ!馬鹿野郎」が本音だろう
「自死」という言葉を持って特にネット民に釘を刺すつもりかもしれないがそれで遺族が少しでも救われるとは到底思えない
映画.comや映画会社はそっち側のようだ
申し訳ないが自分は協力できない
子供の頃から今でも言葉狩りは嫌いだ
言葉狩りする側が優等生でそれに抵抗する者が劣等生だとしても
抗議する側が必ずしも正しいとは思えない
いまだにベイスターズを大洋ホエールズと言ったりヤクルトスワローズのことを国鉄という人は少なからずいるがそれとは違う

ソヒの母が娘の死に文字通り泣き崩れる芝居が印象的
まさしく泣き崩れた
あまりのショックに腰が抜けてとても立ってられない
彼女のあれだけで涙が溢れた
日本の女性俳優がああいう芝居をしているところをあまり観たことがない
シチュエーションとかいろいろと違うが『家なき子 希望の歌声』でバルブランママを演じたリュディビーヌ・サニエの熱演を思い出した

配役
自殺した女子高生キム・ソヒにキム・シウン
ソヒの自殺を捜査する刑事のオ・ユジンにペ・ドゥナ

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野川新栄

4.0高校生の過労死

2024年1月11日
PCから投稿

コールセンター研修での過労から自死する高校生ソヒ(キム・シウン)と、その捜査にあたる刑事ユジン(ペ・ドゥナ)の2者視点で構成されている。
実話からインスピレーションを得て書かれたそうだ。
2022年カンヌで上映されて以来、各所で賞をとった。

社会未経験で意欲的な高校生がコールセンターなんかやったらどうなるか。
ひどい労働環境に幻滅することがわかっているのに、期待と不安に胸を高鳴らせている少女の描写がつらい。キム・シウンがじょうずで余計につらい。

一日中座って電話の向こう側の横柄な客を相手にする。
ののしられても低姿勢をとらねばならず成績を競争させられ無給で長時間労働したうえ上司にあたられ心が荒みきってしまえば衝動的に死を選ぶこともあり得るだろう。

前半は見ているのがとてもつらかった。

後半の捜査では調べるほど社会構造の病根が見えてくる仕組み。

学校は就職率をあげるために、劣悪な仕事をやらせる就職先と昵懇になっている。就職率実績がないと助成金がでないからだ。
下請けの親会社は、ストレスフルな競争システムであっても法的介入ができないのを盾に、嫌だったなら辞めることができたと主張する。
監督の省庁もそれらを取り締まる権限がない。あるいは数値によって評価されるので解らない。
問題はあってもそれが隠れる社会構造をしている。こうした構造上の陥穽やブラック企業は日本にだって山ほどあるだろう。

刑事のユジンはそれに直面するが、正義感と少女への憐憫にかられて、学校や企業や監督庁を追求する。
ドゥナの演じるユジンはよく韓国映画ドラマに出てくる上司と衝突するタイプの熱血型刑事である。
が、その正義感はリアルだった。それはイソコ的な自己顕示のための偽正義ではなくほんとの義憤だった。

ソヒとユジンの間にはわずかな接点がある。趣味のダンスクラブでいちどだけ居合わせた。ソヒは利得もないのにおばさん世代とダンスをやっている。あてのない目標へ向かってひたすらダンスの練習に励んでいたソヒ。無欲な少女が負った冷酷な仕打ちが、ユジンには我慢できなかった。

ソヒが自死したこと、それをおこした社会構造は、1刑事の力ではどうにもならないことだろう。だけどユジンはソヒの気持ちに思いをはせて、どうにかしたいという使命感にかられる。

チョン・ジュリ監督はこの映画をつくった動機をこう語ったそうだ。

『誰かに寄り添うことができれば、もしかしたら変わるかもしれないという希望。その希望だけを考えて、この映画を作りました。』──チョン・ジュリ

原題のNext Soheeには、次のソヒが起こりうるという警笛と、次のソヒをだしてはいけないという悲願がこめられていると思った。

監督の前作「私の少女」(2014)にもぺ・ドゥナがでており、虐待に遭っている少女と少女を引き取る警察官の話で、今作と通じるものがあった。

ペ・ドゥナはクールだが熱い信念がある雰囲気。私の少女、あしたの少女、ベイビーブローカーは同キャラクターのように感じられた。いるだけで絵が安定する女優だと思う。

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津次郎
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