【「エリック・クラプトン アクロス24ナイツ」評論】日本武道館100回公演越え! クラプトンの笑顔が眩しい、極上の名演。
2023年6月11日 18:00

最初に「エリック・クラプトン アクロス24ナイツ」に至る背景をおさらいしておこう。1970年代からソロ活動を開始したエリック・クラプトンは、1966年に結成したクリーム時代の「クロスロード」、「ホワイト・ルーム」(1968)、69年に始動したデレク&ドミノスとして発表した唯一のスタジオアルバム「いとしのレイラ」(1970)の同名曲、74年のソロアルバム「461オーシャン・ブルーバード」ではボブ・マーリィをカバーし全米No.1に輝いた「アイ・ショット・ザ・シェリフ」、77年発表の名盤「スローハンド」収録の、恋人との時間を歌った「ワンダフル・トゥナイト」など、数々の名曲を世に放ってきた。
ギタリストとしてキャリアをスタートし、「いとしのレイラ」でヴォーカリストとしての評価を決定づけた。ブルースをこよなく愛し、ロックからポップなナンバー、バラッドまでレパートリーは幅広い。順風満帆な活動が続く中、「コカイン」(1977)で歌ったようにドラッグに依存し、82年にはアルコール中毒だと告白するに至る。
ブルースに目覚めた少年期からスーパーバンドで音楽界を席巻した時期、ソロとなった後のドラッグとアルコールへの埋没、そして新たな音楽との邂逅を経ての奇跡の復活へ。栄光の絶頂で身を以て体験した苦難克服の過程は、映画「エリック・クラプトン 12小節の人生」(2017)に詳しい。
そんなクラプトンが、1990年1月18日から91年の3月9日の間、英国のロイヤル・アルバートホールで24夜に渡って行った公演から最高のパフォーマンスを厳選した作品が本作である。4人編成のバンド、ホーンを交えた13人編成、バンドにオーケストラを加えたコラボレーション、そしてホーンなしの 9人編成によるブルース・ナイトまで、クラプトンが歩んできた音楽の軌跡を日替わりで演奏し、まさに集大成と呼ぶにふさわしいライヴ。ステージごとに演奏される曲、ゲスト、編成も変わる。ファンならずとも毎日出掛けたい伝説の公演は連日満席が続いた。
コンサートの模様は2枚組CDとしてリリース、その後映像版も発売されている。だが、その内容は不測の事態によって完璧とは呼べないものとなった。公演直後の91年3月、クラプトンに悪夢が襲いかかった。ニューヨーク滞在中の愛息コナーが母の友人宅である53階のアパートから墜落死。失意のどん底に沈んだクラプトンは、音源チェックもままならない状態に陥ってしまったのである。その後、92年の映画「RASH ラッシュ」(日本未公開)の主題歌「ティアーズ・イン・ヘヴン」、同曲を収録した「アンプラグド」で93 年のグラミー賞を独占したことは周知のとおり。
ファンの熱狂から30余年の紆余曲折を経て、全24夜の公演にマチネを加えた全42回の公演から厳選した、至上のパフォーマンス17曲が4Kクオリティで蘇った。折しもクラプトンは日本武道館での100回公演越えという大記録を打ち立てたばかり。来日公演のセットリストと本作の選曲を比較するのも一興だ。特別なゲストを迎えたエリック・クラプトンの笑顔が眩しい、極上の名演を心ゆくまで楽しんでほしい。
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