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見た者誰もが不快になる、恐ろしい差別主義者の女達描く「ソフト/クワイエット」二村ヒトシ&映画.com編集部が見どころ語る

2023年6月7日 17:00

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不快度200%の映画を見て学ぶ
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(C)2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。

今回は「ゲット・アウト」のジェイソン・ブラムが製作総指揮を手がけ、本作が長編デビュー作となるベス・デ・アラウージョのオリジナル脚本・監督、白人女性たちがあるトラブルをきっかけに取り返しのつかない事態に陥っていく様子を全編ワンショット&リアルタイム進行で描いたクライムスリラー「ソフト/クワイエット」(公開中)の感想や見どころを語り合った。

「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義グループを結成し、多文化主義や多様性を重んじる現代の風潮に不満を抱える6人の女性。日頃の鬱憤や過激な思想を共有して盛りあがる彼女たちを追う展開に、二村は「ホラーだと受け取ることもできるけれど、人類にとって昔からある差別の話。ニュースでは、黒人やアジア人を差別する人として白人男性ばかり映されるけど、この映画で恐ろしいことをするのは白人女性。でも、これがアメリカの話だけには思えないのは、日本でもSNSなどで自分がかわいそうな立場だからと、別のかわいそうな人を攻撃する人もいる。そして、集団真理の恐ろしさも描いている」と感想を語る。

エビタニは騒動を起こしてしまう女性たちを「白人であり、同じ街に住んでいるという属性でまとまっている。それ以外は性格が似ているわけでもないのに、街の有色人種の人達にイラっとしていて、被害者意識を持って短絡的で他責思考。でも、主人公のエミリーは自分の不妊の悩みが攻撃性になっている気もする」と分析し、「彼女たちはブラック・ライブズ・マターの成り立ちすら知ろうとしない」と、差別をしてしまう人々が自ら学ばないという問題を指摘する。

画像2(C)2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

アラウージョ監督自身もアジア系であり、差別を受けた経験があることから、学ぶべきは加害者であるという思いで本作を製作したそう。二村は「ただ、自分が苦しい時には他人の苦しさを知りたくない人もいる。反差別のためにみんなが勉強しなくてはいけないけれど、頭のいい人がすべて勉強した上で、差別することもある」と悲しい現実を挙げながらも、「人権や差別の勉強をするよりもこの映画を見る方が早い。この映画は知識の問題ではなく、嫌な気持ちのする良い映画」と本作を見る意義を語る。

そして、ワンカット&リアルタイム進行という本作のフォーマットについてエビタニは「不快なワンカットをずっと見せ続けられるので、寄り添うわけではないけれど、観客がエミリーの横にいるような、いじめを黙って見過ごすような気分になる」とその大きな効果を説明。二村は「特殊効果なしで役者の演技だけで人間が怪物化するのを描いている」、「エミリーが美しい湖を見て、立ち止まる瞬間がある。あの瞬間、加害者の心が描かれていた気がする。学びや正しいことだけでなく、口に出したらまずいことも描いてしまうのが映画。それがすごい」と監督の手腕を讃える。

本作を見た誰もが嫌な気持ちになることが必至の本作のテーマをエビタニは「弱いと強いの関係性の歪み」とまとめ、二村は「あのラストがあれば、人間が加害者になることを描きながら、被害者も人間で人生があることを忘れない。つらい映画だけれど、1回は観てほしい」とわずかな希望を見出せるラストに言及し、鑑賞を勧めた。

トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回は是枝裕和監督作「怪物」を取り上げる。


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