【「怪物」評論】是枝裕和が歩みを止めずに手に入れた、新たな“武器”
2023年6月3日 12:00
是枝裕和監督の最新作「怪物」が第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出され、脚本賞(坂元裕二)と日本映画としては初めて独立賞の「クィア・パルム」賞の2部門を受賞し、公開を前に大きな盛り上がりを見せている。ただ、それ以上に、これまでにない新たな挑戦が多く含まれていることから、今後さまざまな形で語り継がれていく位置づけの作品になるのではないだろうか。
第一に、監督デビュー作となった「幻の光」以降、一貫して自らが脚本を執筆し続けてきたが、今作は坂元裕二のオリジナル脚本作。そもそもの成り立ちとして、山田兼司プロデューサーと坂元が企画開発に入り、途中から川村元気プロデューサーが参加、最後に是枝監督にオファーがあったという経緯が前提としてあるものの、結果的には実に28年ぶりに他者に脚本を委ねたことになる。
子役へのアプローチに関しても変化がみられた。是枝作品といえば、子役に脚本を渡さずに撮影する手法が広く知られているが、これまでも例外はあった。今作では子役として演技経験が豊富な黒川想矢と柊木陽太を起用し、脚本を渡してリハーサルを重ねながら役どころに寄せていくアプローチを採用した。
ほかにも、Netflixドラマ「舞妓さんちのまかないさん」に続き現場を共にすることになった川村プロデューサーとのタッグも挙げられる。これまでにふたりが手がけてきた作品群を並べ、見比べてみれば“新たな挑戦”といっても過言ではないだろう。
そして、安藤サクラ、永山瑛太、子役の黒川と柊木、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子という主要キャストの並びからも、“新たな挑戦”がうかがえる。「万引き家族」に続く起用となった安藤以外、全員が是枝組初参加という事実が浮き彫りになってくる。
なかでも、小学校の校長役で出演している田中の凄味については特筆せざるを得ない。子役ふたりの担任を務める教師役の永山に言い放つ18文字のセリフからは、目を離すことができなくなる。
本編は3部構成で描かれているが、ステージごとに観る者の「怪物」の解釈が前触れもなく変貌を遂げていくことに、驚きを禁じ得ない。「是枝監督らしさ」と言われることに辟易していた是枝監督は、世界で映画を撮りながら決して歩みを止めず、味わいのある新たな“武器”を手に入れたことで、今後さらに豊かな映画体験を世界中のファンに届けてくれることであろう。
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