第76回カンヌ映画祭追加作品発表、コンペは21本中7本が女性監督作品 監督週間、ACID部門には日本作品も
2023年4月30日 09:00

今年もカンヌ国際映画祭が動き出した。4月13日にはオフィシャル・セレクションが発表になったものの、ディレクターのティエリー・フレモーは例年通り、各部門に作品が追加されることを予告していた。まさにこの原稿を書こうというときに追加が発表になったので触れたい。
追加されたのは、コンペティションが2本。「ジョニー・マッド・ドッグ」のジャン=ステファーヌ・ソベールがショーン・ペンと組んでニューヨークで撮影した「Black Flies」と、フランスのカトリーヌ・コルシニによる「Le Retour」だ。
カンヌ・プレミア部門は、これまでカンヌとベネチアでそれぞれ監督賞を受賞しているアマト・エスカランテ、バレリー・ドンゼッリ、「約束の地」で知られるリサンドロ・アロンソによる3本。
アウト・オブ・コンペティションは、フレデリック・テリエがアベ・ピエール(ピエール神父)を題材にした伝記映画と、ピクサーのアニメーション「マイ・エレメント」の2本。ある視点部門は、ウェイ・シュージュン、クロージング作品に選ばれたアレックス・ラッツによる2本。スペシャル・スクリーニングは、モナ・アシャシュ、サーラ・マニ、アンナ・ノビオンの女性監督作3本、ミッドナイト・スクリーニングはロバート・ロドリゲス、キム・テ・ゴンの2本、さらに短編はペドロ・コスタが追加となり、合計15本が増やされた。
このうちコルシニの作品はいわく付きだ。というのも、もともとコンペ入りがすでに決まっていたものの、発表直前になって撮影時の問題が発覚し、保留になっていたからである。その問題とはまず、当初の脚本にはなかったティーンの自慰行為のシーンが撮影時に追加され、これを演じた俳優が未成年だったために、青少年保護法に触れるようなことがなかったかが取り沙汰されたこと。また複数のスタッフがコルシニによるハラスメントに言及していること。さらにスタッフの中の2人が、女優たちに“妥当ではない振る舞い”をした、ということが、ブラックメールのように業界を駆け巡ったのである。結果的に予定通り作品が選ばれたということは、これらの疑惑は晴れた、ということになるのだろうが、それでも勝手にシーンを追加したことに関して、フランスの国立映画映像センターからの援助金がキャンセルされる事態になった。製作側にとってはかなりの痛手であることに違いはない。

今年のカンヌはすでに波乱含みと言うべきか、ハラスメントではもう1本、オープニング作品に選ばれた「Jeanne du Barry」のマイウェン監督も取り沙汰されている。こちらは映画自体とは関係ないものの、今年2月、レストランで食事中のあるジャーナリストの前に彼女が現れ、いきなり髪を掴んで頭を後ろに引っ張り、唾を吐く身振りをしたと思いきや姿を消したという。この行為に精神的なショックを与えられたジャーナリストがその後、警察に訴え出たというもの。動機も謎のままでカンヌへの影響もないようだが、それにしても穏やかでないエピソードである。うっかり映画を批判しようものなら、何が起こるかわからないと思われても仕方がないかもしれない。
オフィシャル・セレクションに続いては、「監督週間」と、新人の登竜門と言われる「批評家週間」部門も発表になった。ディレクターを筆頭にメンバーが一新した監督週間では、オープニングにセドリック・カーン、クロージングにホン・サンス、またミシェル・ゴンドリーの名前も見受けられる。今年のポスターに使用された、制作から30周年を迎えるマノエル・ド・オリベイラの「アブラハム渓谷」が特別上映される他、クエンティン・タランティーノがマスタークラスを開催し、サプライズ上映をおこなう。
また短編として、「フレネルの光」の平井敦士の新作「おゆ」が、入選した。日本映画はもう一本、監督たちがセレクションを手がけ若手をサポートするACID部門で、二ノ宮隆太郎の「逃げきれた夢」が上映される。
今年のラインナップも相変わらず豪華だが、とくに女性監督の作品が増えている。コンペティションは21本中、7本。もちろん、まずは作品の評価ありきなわけで、男女公平のために必ずしも半々でなければいけないとも思わないが、年々時勢を反映していると言えるのではないか。(佐藤久理子)

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