フランソワ・オゾン作品で注目の若手俳優が来日 現代性あふれるバルザック原作「幻滅」は「正に今見るべき映画」
2023年4月14日 14:00
19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説「幻滅 メディア戦記」をグザビエ・ジャノリ監督が映画化した「幻滅」が公開された。文学的野心を抱いた田舎町の青年が、華やかな大都会のパリで生活のためにジャーナリズム精神を欠いた記者となり、虚飾と快楽にまみれた世界へと堕落していく。
フランソワ・オゾン監督作「Summer of 85」で注目を集め、本作でも主演を務めたバンジャマン・ボワザンが来日し、第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作で、第47回セザール賞で作品賞を含む7部門に輝いた本作を語った。
19世紀前半。フランスでは恐怖政治が終焉を迎え、宮廷貴族たちが自由と享楽的な生活を謳歌していた。詩人としての成功を夢見る田舎町の純朴な青年リュシアンは、貴族の人妻ルイーズとパリへ駆け落ちするが、世間知らずで無作法な彼は社交界で笑いものにされてしまう。生活のため新聞記者の仕事に就いた彼は、金のために魂を売る同僚たちに影響され、当初の目的を忘れて堕落していく。
バルザックはフランス人が皆、学校で習う作家のひとりです。ただ、若い人は昔の文学から離れつつあるので、こういった映画を通して、作品や作家のことを知ってもらえる良い機会になると思います。
正に今見るべき映画で、1830年という時代性を反映しながらも、同時に現代に通じる問題も映しています。素晴らしい作品は古くならないのです。この映画は、社会でどう生き延びるかが、テーマになっています。自分の将来のキャリアと目の前の恋愛のどちらを取るのか、20代で自分のやりたいことをやり通すのがどれほど難しいか、どこで妥協するか、そういうジレンマに揺れ動く若者の心を描いていきます。社会に入って、どのような選択をするか――リュシアンは母鳥の巣から飛び立った小鳥の様な存在なのです。
オゾン監督の「Summer of 85」の時もそうでしたが、オーディションを受けました。会場にはパリ中の若い俳優が詰めかけ、僕は当時さほど俳優としての大きな実績はなかったのですが、ジャノリ監督に選んでもらえました。
リュシアンには共感する部分が多く、自分の親友、片割れのように感じます。監督とは多くのディスカッションをしました。リュシアンはアングレームという片田舎からパリに出てきました。フランスには彼のような若者がたくさんいます。けれど、スターになりたい、という野心はあるけれど、何をしたらいいのかわからない、情熱を向ける先がわからない人も多いのです。リュシアンには大作家になれるだけの才能はあったと思います。人を感動させる情熱もあったけれど、パリという大都会の残酷さに飲み込まれてしまします。そういった彼の人生が人々の心の琴線に触れると思うのです。
特に役作りで難しいことはなかったです。一般的な映画では人物像がきちんと出来上がっていないこともあるのですが、これは原作がしっかりしているので、正にギフトのような作品でした。原作を基にした脚本をそのまま演じれば、リュシアンになれました。ただ、撮影の都合で、話の前後が入れ替わり、気持ちの面を整える必要はありましたが、それは俳優という仕事の一部ですから問題はありません。
ジャノリ監督からも特別なリクエストはなく、どうやってこのチーム、作品全部を導いているのか不思議でした。視線や些細なしぐさで見せるような指示で、ほとんど役者には何も言わないのです。監督が俳優を信じていて、ほぼ自由にやらせてくださる現場でした。
既にいろんな誘惑に負けているかもしれませんね(笑)。今、ライバルはたくさんいますが、キャリアを積み上げる前からの友人ばかりなので、皆仲が良いです。オーディションで欲しかった役を誰かに奪われることもありますが、みんなでまた上を目指そうという感じです。これはジェラール・ドパルデューからのアドバイスですが、誘惑に関しても、気持ちと体の健康のバランスが保たれていれば問題ないと思うのです。
ドパルデューからは感情を解き放つこと、あまり計算して役作りをするのではなく気持ちのままに演じることを学びました。おかしなところがあっても、ひとつでも良いところがあればいいと。僕もその考えを取り入れています。他に尊敬するのは、フランスだとジュリエット・ビノシュ、ドニ・ラバン、イザベル・ユペール。アメリカの大スタジオの作品に出演したいという気持ちはあまりないのですが、ゲイリー・オールドマンやダニエル・デイ=ルイスの作品は良く見ます。僕は演じるのは大好きなのですが、とてもアクティブな性格なので、実は映画館でじっとしていられないのです(笑)。これから、世界の様々な映画をたくさん見ていくようにしたいと思います。
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