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【「メグレと若い女の死」評論】ドパルデューの存在感&ルコントの演出が格調高い味わいを醸し出す 「ブラック・ダリア」との共通点も

2023年3月19日 18:00

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「メグレと若い女の死」
「メグレと若い女の死」
(C)2021 CINE-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.

巨漢をいかしてメグレ警視役に挑んだジェラール・ドパルデューが、過去の映画化シリーズ3本に主演しているジャン・ギャバンといい勝負の名演を見せる。「陰惨たる闇から落ちてきたこの静かな意志の塊」とパトリス・ルコント監督に言わしめたドパルデューの存在感と、1950年代のパリを落ち着いた色彩で再現したルコントの演出が、格調高い味わいを醸し出すミステリーだ。

メグレが取り組むのは、血で染まったイブニングドレスをまとい、広場に放置された若い女性の殺害事件。データベースもDNA鑑定もない時代に、身元不明の変死体でしかなかった被害者の人物像が、検死と鑑識と地道な聞き込みという警察捜査の王道によって浮かび上がってくる。その過程を通して、正統派ミステリーらしい謎解きの妙味が味わえる。

ただし、メグレの捜査には、王道から外れた特異な要素も加わる。聞き込みの過程で、被害者と似通った出自の若い女性ベティと知り合いになったメグレは、独断で彼女をおとり捜査に巻き込んでいく。いまの時代なら確実に社会問題になりそうな脱法行為だが、その背景に、ベティと被害者を自身の亡き娘と重ね合わせずにはいられないメグレの父親の情がうかがえるところに、一抹の切なさをかきたてられる。

面白いのは、ブライアン・デ・パルマ監督によって映画化された「ブラック・ダリア」との共通点が多く見られることだ。先に挙げたように、捜査にあたる刑事の家族にまつわる悲劇が、事件への執着につながっている点も、そのひとつ。さらに、被害者が映画業界と関わりがあること、事件の背後に富豪一家の影がちらつくこと、倒錯的な秘密が絡んでいることなど、似通っている部分をあげればきりがない。

とはいえ、悪夢的な世界観の「ブラック・ダリア」とは異なり、この映画には救いと安らぎが宿っている。その雰囲気を醸し出す役割を担っているのが、メグレをさりげなく支える夫人の存在だ。立ち会う者のいない被害者の埋葬にただひとり立ち会ったメグレと、そんな彼を迎えに行った夫人が、肩を寄せ合って墓地を歩く場面は、ふたりの夫婦の歴史がにじみ出る名場面だ。

(矢崎由紀子)

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