【第95回アカデミー賞】ミシェル・ヨー、「エブエブ」でアジア人女性初の主演女優賞!
2023年3月13日 12:27
第95回アカデミー賞の授賞式が3月12日(現地時間)、米ロサンゼルスのドルビーシアターで行われ、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のミシェル・ヨーが、主演女優賞を初受賞した。ヨーは、主演女優賞を受賞した初のアジア女性となる、歴史的な快挙を達成した。
「スイス・アーミー・マン」の監督コンビのダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)が手がけた、カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を掛け合わせた異色のアクションアドベンチャー。ヨーは、経営するコインランドリーが破産寸前で、生活に追われるごく普通の中年女性・エヴリンを演じた。ある日、エヴリンの前に、突如として「別の宇宙(ユニバース)から来た」という夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)が現れる。混乱する彼女に、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と、驚きの使命を背負わせるウェイモンド。そんな“別の宇宙の夫”に言われるがまま、マルチバースに飛び込んだ彼女は、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、救世主として覚醒する。
受賞の瞬間、ヨーは、クァン、ジェイミー・リー・カーティス、ステファニー・スーと抱き合い、喜びを爆発させた。プレゼンターを務めたジェシカ・チャステイン、ハル・ベリーとハグを交わし、ブロンズを受け取ったヨーは、万雷の拍手に包まれた。ヨーは、「ありがとうございます。今夜見ている私のような小さな子どもたちにとって、これは希望と可能性の証です。夢は実現するということの証です。女性の皆さん、誰にも『あなたはもう全盛期を過ぎている』などと言わせないでください。決して諦めないでください」と、言葉に力をこめる。
ヨーは、「ダニエルズ、A24、素晴らしいキャストとクルーなしでは、私はここにいられませんでした。それと同時に、私の母、そして世界中のお母さんたちに、この賞を捧げたいです。彼女たちがスーパーヒーローです。彼女たちがいるからこそ、私たちがいるのです。私の母は84歳で、いまマレーシアで家族と一緒に、見てくれています。(オスカー像を見ながら)お母さん、これを持ちかえるからね。そしてキャリアの出発点となった香港の大家族、皆さんのサポートがあったからこそ、いまここに立っています。姉妹、兄弟、家族の皆、本当にありがとうございます」と感謝を伝える。「アカデミー賞、ありがとうございます。これは歴史的な出来事です!」と、会場に向かって声を上げた。
マレーシア出身のヨーは、4歳からバレエを始め、10代は英ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD)で学ぶが、ケガのためダンサーの道を諦める。1984年、ジャッキー・チェンと共演した香港のCMでデビュー。翌年から映画に出演し、ミシェル・カーの名前で、香港映画界のアクション女優として人気を博す。88年の結婚を機に一時引退するが、「ポリス・ストーリー3」(1992)で復帰。ミシェル・ヨーに名前を改め、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」(97)、「グリーン・デスティニー」(2000)、「SAYURI」(05)、「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」(08)などに出演し、アジアを代表する女優としてハリウッドでも活躍する。
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」では、第80回ゴールデングローブ賞をはじめ、第94回ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、第29回全米俳優組合(SAG)賞、第38回インディペンデント・スピリット賞などで受賞を重ねた。そして作品賞、監督賞を含む最多10部門11ノミネートされた第95回アカデミー賞で、初ノミネートにして初受賞を果たし、有終の美を飾った。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。