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【「オマージュ」評論】映画を愛する人への“オマージュ”に優しく心が包まれて人生を見つめ直す

2023年3月12日 20:30

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「オマージュ」
「オマージュ」

世界を席巻したポン・ジュノ監督「パラサイト 半地下の家族」(2019)で、高台の豪邸に暮らす社長一家の家政婦を演じ、強烈なインパクトを残したイ・ジョンウン。これまで数多くの映画やドラマで存在感を発揮してきた韓国を代表する名バイプレイヤーだ。まだ名前を覚えていない方も、その演技を見れば、あの作品にも出演していた俳優だと納得するはず。「オマージュ」はそんなジョンウンの記念すべき単独初主演映画である。

彼女が演じるのは、映画監督としてのキャリアも、妻、母親としても中途半端なジワン。監督作品の上映館は閑古鳥が鳴き、息子にはつまらない、監督を辞めればと言われてしまう。次回作を撮る目途も立たず、生活費にも困りはじめた時、アルバイトの話が舞い込むのだが、それは1960年代に韓国で活動した女性映画監督ホン・ジェウォンが残した映画の修復だった。まるでそのジェウォン監督に導かれるように、ジワンは失われたフィルムを探す旅に出ることになる。

映画祭で上映するために修復することになったのは、韓国初の女性判事が毒殺された実話の映画。作業を進めるうちに、フィルムの一部が検閲によりカットされていることがわかり、その真相を探っていく。当時は女性監督が活動するには困難な時代であり、編集を担当した存命のおばあさんも「私でさえ縁起が悪いと、塩をまかれるような扱いだった」と振り返る。そして、ジワンは真実を知っていくにつれて、自分自身の人生を見つめ直していくことになるのだ。

本作の見どころは、物語や登場人物などが二重三重の構造になっているところ。映画内で映画について描かれるのはもちろんのこと、現代の女性監督が60年代の女性監督が手掛けた韓国初の女性判事の映画の修復を行うという設定。しかも本作のシン・スウォン監督も女性だ。脚本も手掛けているスウォン監督は、いつもこれが最後の映画になるのではないかと思い悩みながらも、映画を撮ることを諦めないジワンに自身を投影させたという。

そしてジョンウンは、中年に差し掛かり、心と体の変化、夢と現実に苦しみながら人生と向き合っていくジワンを繊細に演じ、失われたフィルムを探す旅に一緒に連れて行く。またジワンの夫を、ホン・サンス監督作品の常連俳優であるクォン・ヘヒョが演じ、ドラマ「愛の不時着」のタン・ジュンサンが息子役で共演。スウォン監督はこの俳優たちを得て、現在と過去、女性たちが時代を超えて連帯していく物語へと昇華した。かつて輝きながら時代に翻弄されて消えていった者たちへ、そして映画を愛する人への“オマージュ”が見る者の心を優しく包み込む。

和田隆

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