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「ドラえもん」×「エヴァンゲリオン」のような作品で「リメイクではない名作」の誕生。興行収入はどうなるか?【コラム/細野真宏の試写室日記】

2023年3月3日 07:00

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画像1(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


今週末3月3日(金)から映画ドラえもんの長編映画42作目「のび太と空の理想郷」が公開されます。

まず映画ドラえもんは「リメイク版」と「オリジナル版」が共存しながら進んでいます。

これは、「オリジナル版」の名作を作るのは難易度が高く、せっかく40年以上もの間に名作が生まれているので、それを最新の技術を活かしながら併行する「リメイク版」を作るというのは当然の流れではあるのでしょう。

そのため、「安定の面白さがあるリメイク版」、「当たり外れの大きなオリジナル版」というイメージがあります。

ただ、映画「ドラえもん」では、子供から大人まで客層が幅広く、残念ながらいくらクオリティーが高い「リメイク版」を作っても「既に見た内容だからいいや」という判断が少なからず出ているのが現実問題としてあるのです。

個人的には過去の名作をさらに進化させる「リメイク版」こそ、おススメに値するクオリティーなので、割と残念な状況でもあります。

画像2(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2021

例えば、昨年の長編映画41作目「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021」は新型コロナの影響を受け1年延期して、2022年3月4日に公開されました。

興行収入は26億9000万円。

この数字は、割と衝撃的な結果で、作品のクオリティーは高かったにもかかわらず、興行収入30億円を下回ってしまったのです!

映画ドラえもんは2004年の長編映画25作目「のび太のワンニャン時空伝」から2020年の長編映画40作目「のび太の新恐竜」まで興行収入が30億円を下回ったのは、2011年3月5日公開の長編映画31作目「新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち」という「リメイク版」の僅か1作品しかなかったので、衝撃的な結果と言えるわけです。

しかも、「新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち」は、東日本大震災の影響が大きかったので、例外として除外することも可能な「仕方のない結果」とも言えるのです。

前作は新型コロナの影響があったとは言え、いくらクオリティーの高い作品を作ったとしても「リメイク版」は興行収入が上がりにくいことが過去のデータも含めて如実に表れています。

画像3(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

さて、そのような状況がある中で、今週末3月3日(金)から公開される長編映画42作目となる本作は期待もできますし注目に値します。

それは、完全な「オリジナル版」だからです。

とは言え、「オリジナル版」では当たり外れが大きいのも事実ですが、これは「当たり」の作品だったのです!

ネタバレになるためキーワードだけで書きますが、物語の根底には「エヴァンゲリオン」と共通する重要なテーマがあると思います。

個人的に興味深かったのは、「シン・エヴァンゲリオン」では出していない答えを、このドラえもんの新作ではキチンと子供でも理解できるように簡略化して提示していることでした。

画像4(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023
画像5(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

コンフィデンスマンJP」「リーガルハイ」シリーズなどの脚本家・古沢良太の初起用は成功だったように思えます。

また、演出手法などがこれまでの映画と少し変わっているようなイメージでした。これは、監督がテレビアニメ「ドラえもん」の演出を数多く手がけていて長編映画は初参戦の堂山卓見、同じく小林麻衣子が劇場アニメのキャラクターデザイン・総作画監督として初参戦するなど、新たな布陣での映画となっていたことが関係しているようです。

画像6(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

ゲスト声優も準主役級のパーフェクトネコ型ロボットのソーニャを、声優初挑戦となる「King & Prince」の永瀬廉が担当していますが、これも自然で違和感がなく良かったです。

また、音楽は長編映画38作目から起用されている「HERO」「半沢直樹」などの服部隆之。この音楽もシーンに合わせ効果的に作られていて、作品のクオリティーを上げる縁の下の力持ちのような存在となっています。

画像7(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2023

このように新たなチャレンジをし続けることに、飽きられず長年にわたり支持を得られる秘訣があるように感じました。

以上の考察を踏まえると、新型コロナの影響が消えつつある中、本作には、まずは興行収入30億円台の回復は至上命題として、新型コロナ前の好調路線に戻すためにも興行収入40億円台を目指してほしいと思っています。


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