“スピルバーグの父親”という難役を熱演 「フェイブルマンズ」カメレオン俳優ポール・ダノに注目
2023年2月17日 09:00
スティーブン・スピルバーグ監督の最新作「フェイブルマンズ」が、3月3日から公開される。名作を世界に送り出してきたスピルバーグが、映画監督になる夢を叶えた自身の原体験を描いた本作では、「リトル・ミス・サンシャイン」「ルビー・スパークス」などで知られるポール・ダノが、スピルバーグの“父親”を演じている。
ダノは、幼い頃からブロードウェイなどの舞台で演技を学んだのち、第79回アカデミー賞脚本賞を受賞した「リトル・ミス・サンシャイン」や「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」での繊細な演技で注目を浴びた。
着実に俳優としてのキャリアを積み重ね、製作総指揮も務めた「ルビー・スパークス」でのスランプに陥った小説家役や「プリズナーズ」での容疑者役、近年では「THE BATMAN ザ・バットマン」でのヴィラン、リドラー役など、繊細な青年から狂気に満ちた悪役まで幅広く演じ分け、カメレオン俳優として確固たる地位を得ている。
そんなダノが本作で演じるのは、主人公サミー(ガブリエル・ラベル)の父・バート。電気事業をルーツとするゼネラル・エレクトリック社で働き、家族と親友である同僚のベニー(セス・ローゲン)と共に過ごすバートは、妻・ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)を崇拝する一方、次第に倦怠感を募らせていく彼女のことを心から心配しているが、どうすべきか分からない。愛情あふれる父親で、サミーが映画監督として成長していくのを喜ぶ反面、成功した科学者で現実主義なバートは、彼の映画作りを趣味以上のものとして評価することはできずにいる。
スピルバーグは、実父アーノルドをモデルにしたバート役に、ダノを起用した理由について「ポールと私の父は、ある種の現実主義、忍耐、深く本質的な優しさを共有している。ポールがこれまで選び、演じてきたキャラクターと、それらに没頭してきた彼の姿勢を、心から称賛している。彼が私の父とめぐりあって、同じことが起こればいいと願っていたんだ」と実父との共通点の多さと、ダノの俳優としての確かなキャリア、そして役柄との真摯な向き合い方に絶大な信頼を置いているからだと説明する。
ダノはバートを演じるにあたり、自身の家族の歴史を参考にしたという。「バートとアーノルドは両方とも、特にあの時代における、ある意味で典型的なアメリカ人男性だった。実際、私の祖父を彷彿とさせた。そこで、私自身の人生体験を引用することで、私にとっても私的なものにしようとした。スティーブンの父親をモデルにしたキャラクターを演じることを、まるで重い外套を着ているように感じたときもあった。だが美しい経験だったよ」と振り返る。20世紀半ばのアメリカの“会社人間”の気風を調べあげたほか、当時のアーノルドの写真、ホームムービー、ボイスレコーダーで研究し、誰もが知る巨匠の父親役を演じるということに大きな重圧を感じつつも、それらは自身にとってかけがえのない経験であったと回顧している。
「フェイブルマンズ」は3月3日から全国公開。