「閉館する映画館にしかできないことをしたかった」2スクリーン閉館で椅子販売の池袋HUMAXシネマズ支配人、椅子購入者に聞く
2023年2月4日 11:00
東京・池袋の映画館、池袋HUMAXシネマズが、地下2スクリーンの閉館に伴い、廃棄予定だった什器や実際に使用されていた椅子を販売し、1月28、29日に購入希望者への引き渡しを実施した。
渋谷HUMAXシネマをはじめ、関東で複数の映画館を擁するヒューマックスシネマが運営する同館は、2000年7月に開館、2014年3月21日から6スクリーン(1464席)で営業していたが、このほど「シネマ5・6」を閉館し4スクリーン(1208席)体制となる。1月初旬にインターネットで、椅子の販売を告知するとSNSなどを中心に大きな話題を集め、予約が殺到し約230脚がほぼ完売したという。長谷川雄一劇場総支配人に話を聞いた。
閉館理由はライブエンタテインメントに注力するためです。シネコンというにはスクリーン数が少ない気もしますが、通常の上映作品においてコロナの影響で嗜好が変わったようには見受けられません。が、コロナ禍で弊社独自の「ヒューMAX上映会」という、発声無しの応援上映を月に1回行っておりまして、こちらは作品ファンの皆様にもご好評いただいております。
廃棄処分が決まっていたので、ダメもとで何かできないかと思ったのがきっかけです。閉館しますが、どこかで誰かの役に立てて、もし思い出してもらえるなら嬉しいですし、「閉館する映画館」にしか出来ないことをしたいと思った。閉館が記憶に残ればいいなと思いました。
「お値打ち」と思っていただきたかったので、1万円を切る数字にしました。
搬出日のタイミングで、映画.com編集部は現地で取材を敢行した。話を聞いたのは幼なじみ同士だという3人の男性。現在3人の居住地は神奈川、山梨、愛知とバラバラだが、みな映画ファンで、ひとりの自宅にガレージシアターをつくり、椅子を設置する予定だそう。最近見て面白かった映画は「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」や「LAMB ラム」と、ハリウッド大作からミニシアター系の個性派作品まで、様々なタイトルが挙がった。大型作品以外は配信サービスでも鑑賞するようになったとのこと。今回折半で椅子を購入し、設置後3人揃って見たい映画は「やっぱり『アバター』ですかね!」と待ち遠しそうだった。
長谷川劇場総支配人によると、買い取り希望者のほとんどは「個人の映画ファンの方だと思います」とのことだが、一部のミニシアターからも購入希望があったそう。「他の映画館で使用いただけるのは本当にありがたいと思っています。同じ映画館として、椅子を通じてお互いの劇場を応援していければと思いますし、いろんな映画館の方とお話してみたいなと思いました」と語る。
この日は福島県本宮市で1914年創業の映画館(現在は不定期営業)で、2021年刊行の「場末のシネマパラダイス」(筑摩書房)でもコアな映画ファンを中心に注目された本宮映画劇場の田村優子さんが来場し、10席を購入。設置は春の予定だ。東京の繁華街のシネコンから、福島の老舗劇場へ――椅子の新たな活躍を楽しみに待ちたい。
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