ティモシー・シャラメに4つの質問! 賛否両論の問題作、“人喰い”キャラについて語る
2023年1月30日 09:00

人喰いの若者たちを描いた純愛ホラー「ボーンズ アンド オール」(2月17日公開)。映画.comでは、主演ティモシー・シャラメのQ&Aを入手した。「賛否両論の問題作について」「アウトサイダーについて」など“4つの質問”に答えている。
「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督とシャラメが再タッグを組んだ本作は、第79回ベネチア国際映画祭の監督賞、新人俳優賞の2冠に輝いた作品。社会の片隅で生きるマレン(テイラー・ラッセル)とリー(シャラメ)が抱える秘密……それは生きるため、本能的に人を喰べてしまうこと。その「謎」を解くための2人の逃避行、そして予想だにしない純愛のゆくえが、世界中で賛否を生んでいる。
シャラメの質問に対する“答え”は、以下の通り。
これは、ラブストーリーなんだ。少女マレン(ラッセル)の成長を描く青春物語だけど、それと同時に恋に落ちるということ、初恋を描いた物語でもある。ルカ・グァダニーノ監督とデイビッド・カイガニックと一緒に脚本を作っていたのはちょうどコロナ禍のピークだった。これは誰もが共感できることだと思うんだけど……当時世界中の人々が、自分が「孤立」している状況を経験していた。普段のように社会的コミュニティに頼ることが困難な状況では、リアルに世界がどうなっているかを自分自身で見つけるしかなかった。とても興味深いし、その現実に至った「孤立」というものが、物語の中に描かれているのはとても説得力があると思ったんだ。

主人公たちの人を喰べずにいられないという状況は、子供時代のトラウマや、何かへの中毒依存、あるいは本人にもよく理解できないけれど恥じている何かを抱えている状態の強力なメタファーになっていると思う。
リーというキャラクターに僕が惹かれたのは、彼が繊細なガラスの城のようなものを自分の周りに造っているからで、それは髪の毛の染め方や衣服の選び方などに表現されている。つまり人を喰べたい欲求に駆られていても、自分が生き残る為の術をどうしたら得られるのかわかっている、この世界を理解したと信じていることが表れているんだ。
そんな彼の最大の弱点は、孤独な時間を長く過ごした多くの人がそうであるように真実の愛で、それは本物の愛、つまり思いやりや優しさなんだ。その思いやりや優しさをマレンの中に見出した。それはリーにとって多くの彩りを彼自身の宇宙に解き放ってくれるような経験になった。でも同時に……あまりネタばらしになってはいけないけど……彼自身にとって最も辛い瞬間でもあった。誰かと恋に落ちて、その相手を通して自分の弱点を改めて思い知らされるという残酷な経験でもあるからね。

大げさかもしれないけど、ルカはまさに「真の芸術家」だよ。彼の監督ぶりは、若い頃から経験して来た、僕らとはかなりかけ離れた文化的な生い立ちから来る感性を反映したものだ。そして自身のそんな視点を大事にしていると同時に、とても熱意がある。監督との間に生まれた友情や仕事での関係は、自分にとって大切な宝物になった。

リーが自分のことをアウトサイダーだと自覚して生きてきたのに比べて、マレンはリーと出会うまで無自覚だった。でもリーが自分の世界として築きあげたものは、トランプのカードで作った家のような砂上の楼閣に過ぎない。でもマレンは自分のことをアウトサイダーだと思っていないからこそ、上手に生きて行くことが出来ているのかもしれない。リーのほうは、すべてを分かった気になっているけど、無意識のうちに自分の本心に反してあらゆることを正当化しているだけなのかもしれない。
二人が、互いにとって良い影響を与え合っているのは……これは前にも言ったかもしれないけど、若くして恋に落ちている時に人は、「こういう人間でありたい」という自分自身の理想の姿を、まるで鏡を覗き込むかのように、相手の中に探し求めているからだと思う。そうすることで二人は自分たちにとって大事なことが何かを確認することが出来る。でもそれは同時に、リーにとって多くの面で痛みを伴うものでもあるんだ。
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