「金の国 水の国」に込められた“想い” 国際情勢が映画とリンク→エバン・コール作曲の劇中歌を追加していた
2023年1月26日 10:00
岩本ナオ氏の人気漫画を劇場アニメ化する「金の国 水の国」が、1月27日から公開を迎える。本作の劇伴、劇中歌共に担当したのは、アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも知られる人気作曲家エバン・コール(Evan Call)。物語の内容が現実の世界情勢とリンク……実は、コール作曲の劇中歌には“ある想い”込められていた。
原作は、2017年に「このマンガがすごい!(オンナ編)」で1位を獲得した話題のコミック。水以外何でも手に入る商業国家「金の国・アルハミト」と、豊かな水と緑に恵まれる「水の国・バイカリ」を舞台に、王女サーラ(CV:浜辺美波)と建築士ナランバヤル(CV:賀来賢人)が、100年にわたり断絶が続く両国の思惑に巻き込まれ、偽りの夫婦を演じることになる。
映画の舞台となる「金の国」と「水の国」はそれぞれ文化の異なる美しい国々。ところが、長年対立していたせいで2つの国の内情は深刻化し、それが物語を大きく動かすきっかけとなっていく。自然豊かな「水の国」は、これまでの戦争で「金の国」に商業ルートを閉鎖されているため、国全体が貧しいまま。一方、「金の国」は栄えているが水不足に陥っており、「水の国」の豊富な水資源を喉から手が出るほど欲しがっている。「金の国」では、「水の国」へ戦争を仕掛けようと国王ラスタバン3世(CV:銀河万丈)をけしかける右大臣ピリパッパ(CV:茶風林)と、国の衰退食い止めたいが反戦派の対場を貫く第1王女レオポルディーネ(CV:戸田恵子)、国内で2つの派閥が対立。戦争寸前の国々を舞台に、国を愛するが故のそれぞれ正義が描かれているのだ。
こうした映画の題材は、本作の制作中に世界情勢が一気に厳しい局面を迎えたことで、想定以上に現実とリンクする形になった。渡邉こと乃監督は“現実で起きてしまった戦争がもたらした影響”として、印象的に使用されている劇中歌の誕生を挙げている。コールが手掛けたのは、3曲の劇中歌。「優しい予感」「Brand New World」「Love Birds」を、注目のシンガー・琴音が力強く繊細に歌い上げている。
渡邉監督いわく、当初は歌が入る予定はなかったそう。しかし、すでに映像と音楽が完成していた中で、テレビで戦争のニュースで目にした。そこで考えが変わったのだ。
渡邉監督「初めは、対立する2つの壮大さを強調するような曲を想定していたんですが、辛い気持ちを強調するようなことは、作品の本意ではないのでやらない方が良いのではないかと考えました。基本的には主人公2人のささやかな愛を描くのが主となるのですが、見る人の解像度が上がったからこそ、ストーリー以上に重いものを受け取ってしまう可能性がある。そこで歌唱曲を入れることで、より2人に寄り添って、2人のささやかな愛の方に気持ちが入るように、劇中歌を3曲作っていただくことにしました」
作曲したコールも「この映画のキャラクターたちのように、国も境遇も違えどお互いを理解し、温かい気持ちが通い合う…現実世界もそうであるべきではないかと思います」と、渡邉監督同様に“やさしい気持ち”を込めて音楽制作にあたっていたようだ。そして、プロデューサーの谷生俊美氏も「今、まさに現実でも戦争が起きていて、この作品が持つ現代性を改めて感じています。現代は殺伐とした時代ですが、劇場に来てくださった方が幸せな気持ちで帰れるような作品になればと思います」と願いを託している。
「金の国 水の国」は、1月27日に全国公開。
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