【「SHE SAID シー・セッド その名を暴け」評論】社会派ドラマ、サスペンス、人間ドラマ…調査報道映画の3つの魅力を押さえた佳作
2023年1月14日 19:00

新聞社の調査報道を題材にした映画は佳作が多い。草分けは、ウォーターゲート事件を暴いたワシントン・ポスト紙の記者が主人公を務める「大統領の陰謀」。ボストン・グローブ紙の記者チームがカトリック司祭による性的虐待を世に知らしめるまでを描いた「スポットライト 世紀のスクープ」は、アカデミー賞の作品賞を受賞。他にも、「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」やドキュメンタリーの「コレクティブ 国家の嘘」がアカデミー賞候補になっている。
これら調査報道映画の面白さの要素は3つある。(1)記者の立ち向かう相手が強大な権力を持っていること。(2)その権力者の秘密の暴露や告発には大きな障害が立ちはだかること。(3)そして、葛藤を重ねながら障害を乗り越えていく記者たちがムネアツな活躍を見せることだ。(1)は社会派ドラマ、(2)はサスペンス、(3)は人間ドラマの味を醸し出す。これで面白くならないわけがない。
「SHE SAID シー・セッド その名を暴け」も、3要素をしっかり押さえている。ニューヨーク・タイムズ紙の女性記者ふたりが立ち向かうのは、20年以上にわたりハリウッドの頂点に君臨した映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン。彼の性暴力に関する取材の行く手には、被害者を縛る秘密保持契約や敏腕弁護士といった障害が立ちはだかる。そして、記事を世に送り出す過程で記者のみならず編集部が一丸となる姿は、まさにムネアツだ。
加えて、この映画は、沈黙を破って取材に協力した被害者たちの勇気を讃えるという独自の視点を備えている。とくに、ワインスタインの誘いを拒んだことでキャリアを妨害されたアシュレイ・ジャッド本人の出演は強力だ。彼女をはじめとする被害者のエピソードは、この記事が、権力による圧力の隙間から発せられた小さな声の集大成だったことを強く印象付ける。それが深い感慨を呼び起こすのだ。
記者コンビの一方がユダヤ系なのは、奇しくも「大統領の陰謀」と同じ。説得力のミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)と機動力のジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)の絶妙なバディぶりも見どころだ。
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