山田裕貴、まさかの闇落ち!? 「夜、鳥たちが啼く」ダークな一面で俳優としての新境地
2022年11月11日 10:00
山田裕貴と松本まりかの共演で、夭折の作家・佐藤泰志氏の短編小説を映画化する「夜、鳥たちが啼く」(城定秀夫監督)の新場面写真を、映画.comが先行入手した。主人公・慎一をとらえたカットとなっており、役を演じた山田が“俳優としての新境地”に達したことがわかるはずだ。
「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」などで知られる佐藤氏が、故郷の北海道・函館ではなく関東近郊を舞台に描いた短編小説(所収「大きなハードルと小さなハードル」河出文庫刊)を映画化。前述の2作を手掛けた高田亮が脚本を執筆し、高田の助監督時代からの盟友である城定監督がメガホンをとった。
山田が演じる主人公・慎一は、若くして小説家デビューを果たしたものの、それ以降は鳴かず飛ばずで「世間では忘れられた存在」となった小説家だ。傷つきやすく繊細で、必死に創作活動にしがみつく日々だったが、うまく行かない苛立ちを他人にぶつけ、同棲していた恋人からも愛想をつかされてしまう。とり憑かれたかのように夜な夜な執筆活動を続けることで自分を保とうとするも、鬱屈とした想いを抱えたまま満たされない孤独な時間が続く。
そんな最中、幼い息子のアキラを連れて離婚し、行き場を失っていた裕子(松本)が慎一の元へ引っ越してくることになる。裕子とアキラに自宅を提供し、自身は離れのプレハブで暮らすという、いびつな「半同居」生活。お互いにとって心地よい距離を保ちながら、息子のアキラとともに穏やかな日々を重ね、暗闇に囚われていた慎一の心境にも変化が訪れていく。
場面写真には、疑心暗鬼にかられ、元恋人とのトラブルを抱えた慎一が血まみれになっている衝撃的な姿や、ビール瓶を抱えて虚ろな表情で座り込む光景など“闇落ち”したかのようなダークな一面を切り取ったものも。夜な夜な執筆活動に励む姿や、裕子の様子をカーテンの隙間からうかがうという意味深な姿も映し出されている。
山田は、慎一を演じるにあたり「喜怒哀楽だけじゃなく、間とか表情の機微が重要になる作品だと思っています。芝居の中での感情を逃さず、人が思っていることはひとつだけじゃないという事も踏まえて、細かく丁寧に演じていきたいですね」説明。情報解禁時のコメントでは、完成した作品について「こんな細やかで、繊細でそして緻密な人間の本当の温度や、間、呼吸、音を感じることができ、『こんなお芝居がやりたかったんだ!!』と何度も叫びました」と確かな手応えを感じたようだ。
今まさに脂の乗った俳優として、数々の話題作に出演し続ける山田。男気あふれる不良少年から、心に闇を抱えた聖職者、はたまたごく平凡な人の良い若者まで、その演技の振れ幅は他に類をみない。本作では、陰のある穏やかさと鋭い暴力性、相反するどうしようもない感情を抱えながらも、なんとか生きていこうともがく生々しい人間の姿を見事に体現。役者として、これまでにない新たな領域を切り開いたと言えるだろう。
「夜、鳥たちが啼く」には、森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ、藤田朋子、宇野祥平、吉田浩太、縄田カノン、加治将樹も出演。12月9日から公開。
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