井上荒野が明かす、瀬戸内寂聴さんの裏話 父・井上光晴のことを「本当に好きだったんだな」
2022年11月10日 19:00

昨年11月9日、99歳で死去した作家・僧侶の瀬戸内寂聴さんをモデルにした映画「あちらにいる鬼」の特別上映会が11月8日、都内で行われ、原作者の井上荒野、廣木隆一監督が登壇した。
原作は、井上荒野が父である作家・井上光晴と母、そして寂聴さんという男女3人の特別な関係をセンセーショナルに描いた同名小説。寺島しのぶが寂聴さんをモデルにした人気作家・長内みはる、広末涼子が作者の母で、みはるとは夫をめぐる三角関係に陥る笙子をそれぞれ演じる他、豊川悦司が光晴をモデルとした作家・白木篤郎に扮している。

井上は、この日身に着けていたオレンジ色のネックレスについて、父・光晴がソ連土産として寂聴さんに贈ったものを譲り受けたと紹介。「私が今これをしているなんて、父もびっくりしているでしょうね」と話すと会場は笑いに包まれた。
原作が生まれた経緯について、当時体調を崩していた寂聴さんに会いに行ったという井上は「寂聴さんはどこにいっても『光晴さんはこの時こんなことを言ったのよ』とか『このお店のお豆腐が彼は大好きだったの』と父のことをお話しになられて、本当に好きだったんだな……と思ったんです。それまで寂聴さんは父との関係を明言してこなかったけれど、父とのことをどこかに残しておきたいのだなとグッときて、これは私が書かなければなと思いました」と、執筆のきっかけの一つになったことを明かした。

原作の帯にコメントを寄せた寂聴さんは、執筆前「なんでも話すわ。ぜひ書いて下さい」と井上に声をかけていたというが、単行本が出た後は「もっと色々聞いてくれればよかった」と話していたそうで、井上は「きっと寂聴さんは自分でも書きたくなったんだと思います」と当時を振り返った。
最後に、井上の両親が眠る墓地についても語られた。生前、寂聴さんが住職を務めた天台寺に井上夫妻の墓があり、この寺を勧めたのが寂聴さんだった。9月に寂聴さんのご遺骨もここに分骨されたことに触れた井上は「隣にするのはちょっと図々しいから通路を隔てて横にしたわと寂聴さんが仰っていて。全然離れていないんですけど」と、同じお寺の小道を挟んだ隣の隣に互いの墓石があることを、笑顔を交えて披露した。
「あちらにいる鬼」は、11月11日から全国公開。
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