【「NOPE ノープ」評論】俊英ピールの奇異なメソッドで捉えた、地球外勢力の飛来!

2022年8月27日 09:00

「NOPE ノープ」
「NOPE ノープ」

予告編に触れても全貌がイマイチ判然としない、ジョーダン・ピールの最新監督作。その正体を口ごもりつつ明かすと、“地球外勢力の飛来”という大状況下での個人ドラマに迫った、「未知との遭遇」(77)の香気にむせるミステリーSFだ。奇しくも同作を手がけたスティーブン・スピルバーグのごとく、劇場長編3本目にして似たスケールアップとジャンルの轍を踏むところ、ピールのスピルバーグへの尊崇の念は筋金入りとみた。

主となるキャラクターは過去作「ゲット・アウト」(17)や「アス」(20)に続き、黒人キャストが中心だ。映画撮影用の馬を手配する牧場主のOJ(ダニエル・カルーヤ)は、先代の不審死がUAP(未確認航空現象)によるものと疑ってやまない。いっぽう妹のエメラルド(キキ・パーマー)はUAPをカメラで捉え、インフルエンサーとして脚光を浴びようと考えていた。そんな2人が目的を一致させ、本作は前半に漂わせていた慄然たるムードを、究知を主体とするアクションへと換気していくのだ。

監督の恐怖メソッドは規則性に縛られず、動物を扱う主要人物らが経験してきた忌まわしいアクシデントをフラッシュバックさせ、現況の不穏な事態にリバーブをかけまくる。それらの断片的なシーンがクライマックスへと向かうにしたがい、作品はパズルのピースを合わせるように全体像を明示化し、観る者の感情をとことんまでヒートアップさせていく。

またシネマトグラファーに「TENET テネット」(20)のホイテ・バン・ホイテマを招き、IMAXフィルムカメラで得た景観ショットは、ビッグスクリーンでの体験にふさわしい風格と、スーパーナチュラルな奇異を観客が受け容れるに充分な臨場感を備えている。しかもIMAXカメラは撮影手段として用いられるだけでなく、劇中における重要なファクターとして登場。主人公と肩を並べ、制作のサポート役が表舞台で大任を果たすという、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(19)と同種のシネマティックな寓話を提供してくれる。

物語のキーとなる未確認飛行物体も、その形状や存在理由において既成の異種コンタクトものとは一線を画す。こうした仕様もまた、ピールの現行の映画作家群における異質さを象徴するものだ。メジャーでこれだけパーソナルなSFに出会えることは、過剰に威嚇的だった予告編に惹かれ、シネコンに足を運んだ者の勝利というほかない。近しい趣向を有する先行作に「サイン」(02)あたりが挙げられるが、ピールはM・ナイト・シャマラン以上に非日常への布石を大胆に敷き、粘り気の強い捕捉力で我々を虜にするクセ者だ。

(尾崎一男)

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