【トリビア解説】「天空の城ラピュタ」シータの名前の由来、「バルス」収録裏話
2022年8月12日 20:00

スタジオジブリの「天空の城ラピュタ」が、8月12日午後9時から「金曜ロードショー」で放送されます。同枠では今週から3週連続でジブリ作品がオンエアされ、19日には「となりのトトロ」、26日には「耳をすませば」の放送がひかえています。
宮崎駿監督がスタッフたちとつくりあげた魅力的な世界観のもと、少年少女の血沸き肉躍る冒険譚が描かれる「ラピュタ」は、初期のスタジオジブリ作品のなかで屈指の人気をほこる1作です。近年はテレビ放送されるさい、主人公たちがクライマックスで唱える呪文「バルス!」の場面がSNSで話題にもなっていたりもしました。
同作の関係者証言や公開当時の取材記事が掲載されている書籍「ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ」「映画 天空の城ラピュタ GUIDEBOOK」「もう一つの『バルス』 宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代」を参照しながら、「ラピュタ」にまつわるトリビアをご紹介します。

鉱山町で見習い機械工として働く少年パズーは、空から降ってきた不思議な少女シータと出会う。シータを助けたパズーは、彼女が身に着けていた不思議な飛行石を狙う陰謀に巻き込まれていく。

パズー:田中真弓
シータ:横沢啓子
ドーラ:初井言榮
ムスカ:寺田農
ポムじい:常田富士男
将軍:永井一郎
親方:糸博
おかみ:鷲尾真知子
シャルル:神山卓三
ルイ:安原義人
アンリ:亀山助清
老技師:槐柳二
マッジ:TARAKO

「ラピュタ」はスタジオジブリ制作の記念すべき第1作です。「風の谷のナウシカ」は? と思われる方がいるかもしれませんが、「ナウシカ」は海外合作作品を多く手がけたトップクラフトというスタジオが制作を担当しています。
「ナウシカ」制作後、当時、徳間書店の社員でアニメ雑誌「アニメージュ」の副編集長だった鈴木敏夫氏は、編集部を代表して社長の徳間康快氏に徳間書店が制作スタジオをもつことを提案し、スタジオジブリが設立されました。
「ジブリ(GHIBLI)」の名付け親は宮崎監督で、イタリア語で「サハラ砂漠に吹く熱風」という意味。厳密にはイタリア語で「ギブリ」と発音するそうで、第2次世界大戦中のイタリアの軍用偵察機の名前にも用いられていました。もとの意味である「熱風」は、スタジオジブリが毎月刊行している機関誌の誌名にもなっています。

飛行石の力で空中に浮かぶ城ラピュタ。このラピュタは、ジョナサン・スウィフトによる小説「ガリヴァー旅行記」に登場する浮島の名前からとられていますが、宮崎監督はこの小説をきちんと読んだことはなかったと公開当時のインタビューで語っています。子ども向けのダイジェスト版を中学生の頃に読み、ラピュタという名前もすっかり忘れていたなか、空中を舞台にした同作を制作するときに「ガリヴァー旅行記」のことをたまたま思い出したそうです。
「ラピュタ」のモチーフは、ラピュタの名前をふくめ、宮崎監督が愛読していた「少年少女世界文学全集」など、子どものときに読んだものが入り混じってつくりあげられています。また、宮崎監督がテレコム・アニメーションフィルムに在籍した頃に3年ほど関わっていた映像企画「リトル・ニモ」のときに考えたアイデアの多くも「ラピュタ」に使われているそうです。

ヒロインのシータの名前は、宮崎監督が大学時代に考えた人形劇のヒロインからとられていて、数学で用いられる記号「θ(シータ)」から発想されたとのこと。主人公パズーも、学生の頃に考えた船乗りの名前だったそうです。

作品準備中の1985年5月、宮崎監督はイギリス・ウェールズ地方にロケハン旅行に赴いています。イギリス産業革命の時代が背景とされている同作の参考になるのではないかと、同作でプロデューサーを務めた高畑勲監督に勧められたのがきっかけです。
宮崎監督は公開時のインタビューで、作中で親方とシャルルのケンカが街中をまきこんでいくシーンは、ロケハン旅行で炭鉱を見学にしたさい、炭鉱夫に連帯感をもたなかったら採用しなかったかもしれないと回想しています。

作中に印象的に登場する虫型のはばたき機・フラップター。「アニメーションらしい面白い動きの乗り物をいつか登場させたい」と思っていた宮崎監督が、本作の制作前から構想していたものです。
デビッド・リンチ監督とドゥニ・ビルヌーブ監督が映画化したフランク・ハーバート氏のSF小説「DUNE デューン 砂の惑星」には鳥型の羽ばたき式飛行機・オーニソプターが登場しています。制作中の宮崎監督はオーニソプターの絵を描いていたことがあったそうです。
フラップターのはばたく動きをアニメーションならではの表現で描いたのは、金田伊功さん(2009年他界)。金田さんは現在活躍する多くのアニメーターに影響を与えたアニメーターで、宮崎監督からの信頼も厚く、「ラピュタ」では“原画頭”という役職でクレジットされています。

「ラピュタ」のアフレコは、映画公開の約1カ月前の1986年6月末~7月頭の3日かけて行われました。パズー(田中真弓)とシータ(横沢啓子)による「バルス!」のセリフは、宮崎監督の「シータの声は澄んだ声にしたい」という思いにこたえるため、十数回のテストが繰り返されて今のかたちになったそうです。

作家・怪異蒐集家として活動中の木原浩勝氏は、元スタジオジブリの元制作進行・制作デスクでした(「ラピュタ」では本名「木原浩和」でクレジット)。
2人目の制作進行として「ラピュタ」に関わった当時25歳の木原氏は、映画を2時間におさめるために宮崎監督が絵コンテ段階から、さまざまな可能性を模索しながら苦闘した日々をつづっています。同作の総尺は124分。Cパートまで完成した絵コンテで約84分を費やしたなか、クライマックスのラストまで本来ならばあと1時間ほしいところを、考えに考えてわずか約20分におさめられています。
絵コンテが完成したのは、映画公開の約4カ月前の86年3月。商業的な要請で2時間以内の上映時間が求められた以上に、制作スケジュール的にもギリギリの状況のなかでスタッフ一丸となって映画完成に向けまい進しました。そこにこめられたスタッフの熱量の高さが、公開から30年以上たった今も見る人の心を熱く興奮させるのでしょう。
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