「島守の塔」萩原聖人&村上淳 映画人として再会を果たした運命の映画
2022年7月22日 13:00

激しい空襲や艦砲射撃、そして上陸戦で約20万人が犠牲となった太平洋戦争末期の沖縄戦。萩原聖人と村上淳がダブル主演を務め、軍命に従いながらも沖縄県民の命を守ろうとした戦中最後の沖縄県知事・島田叡、島田と共に職務を超えて奔走した警察部長・荒井退造を演じた「島守の塔」(五十嵐匠監督)が公開される。
コロナ禍直前にクランクインし、その後1年8カ月の中断を経て再撮影された本作。軍国主義の時代、人々に「生きる」ことを伝え続けた官僚を熱演した萩原と村上の姿は、ふたりのフィルモグラフィの代表作の1つとして刻まれることだろう。実在の人物を演じること、そして“同志”として映画俳優であり続けることについて、萩原と村上に話を聞いた。
(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会
(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会この作品の中であれば、フィクションにはなりますが、凛という女性が、象徴としてふたりの意思をちゃんと感じて生きてくれたっていうことが功績なのかなと思います。
(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会命の危険を感じる場所に僕は行ったことはないですし、また、幸いですがそういう事故にも遭ったことはないので、自分には重ね合わせられません。ただ一つ言えるのは、責任感。重さは違うけれど自分が何か任されたり、やらなければいけないという、そういった気持ちは僕にもあります。
島田さんも帰りたいな、とか怖いなと思った瞬間はあったと思います。だけど、それを口に出さないのが責任感。彼の生きる意味だったのかなと思います。資料や映画の中でも言及されていますが、その責任感をまっとうできるからこそ遊ばなきゃだめだっていうことを、声を大にして言う人だったのかなと思います。
ただ、今回の作品で、同調意識、大きく言うと教育に対しての何かしらの疑問についてはシンパシーを抱きました。この作品では、(当時軍国教育を受けた)凛のような考えが当たり前だった。一方で、島田さんと荒井さんは当時からすれば、過激な言い方だとラジカルだったというか……国賊とも思われてしまうような考えがあって。そこにある種のシンパシーを感じて、役を膨らませました。
(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会つらくてしんどいけれど、好きだ。という矛盾がこの仕事の魅力。報われる事はほとんどないけれど、報われるためにはやっていません。でも、若い時は報われたかったです。褒められたかったですし。でも、今の作品を見た時に何を自分が感じるか、それが重要になっていて。なんでこんなしんどい仕事やっているのかと思う時もありますが、でも辞めたいと思ったこと一回もないです。
島田さんみたいに人に「生きろ」というような、今、自分が役者として後輩にかける言葉があるかと言われれば、正直ないです。
(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会だから、僕にとってそんな大先輩と肩を並べられる今回の配役は偉業です。でも、先輩たちとの距離は縮まらないんです。ただ、後輩たちはできれば追い抜いて欲しいです。真正面切ってかけられる言葉っていうのは少ないんです。だから、“背中を見る”って言うと抽象的ですけど、作品を見て、こういうインタビューの記事も漁るように読んでいただいて、そこから何かを感じてもらうしかない。
さっきの萩原君の言葉を借りると、俳優という仕事で、トンネルに入った人を救い出せる人間はいないんです。自分で突破して行くしかないので、そのためにもがくしかない。映画を貪るように見たり、逆に徹底して寝たりとか休んだり――いろんなことを試して、トンネルを抜けて、また入るの繰り返しですね。
今回は現場で、セリフや発声というと、陳腐になってしまうんですが、萩原君の声を聞きながらやれたのは、今の僕のキャリアの宝物になったと思います。おべんちゃらではなくて、排気量で例えると、僕が1800ccだとすると萩原君は5000ccぐらいある。人が集められて、映像なりドラマなりで、ここは皆さん30キロで走ってくださいという場で排気量が多ければ多い人ほど体に負荷がかかる。萩原君のそういう姿も見て、僕もアクセルを踏めている。
そして、萩原君と何を話すわけでもなく、じゃあ、またねっていう感じがすごく自分を構築しています。縁があっていつもお互い意識はしてるし、忘れることはないんですけど、今回こうやってまた縁をつないでくれた五十嵐監督とこの映画に本当に感謝しかないです。
(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会でも再会って本当難しいもの。頑張ってなければ再会できないし、出会いが良くても再会がダメだったら意味がないし、出会いがダメでも再会が良かったらすごく意味のあることになる。今回は再会した作品がこういう題材で、お互いが真面目にやらざるを得ない。
もちろんどんな作品も真面目にやるんですけど、本当に真面目にやらなければ、再会した意味が生まれてこない。島田さんと荒井さんは沖縄で出会ったけれども、きっと彼らも生きていればどこかで再会する間柄だったでしょう。まさに同志という。
運命じみたものっていうのは必ずあるんだろうなと思います。繋がっているって言い方は変ですけど、「この世の外へ クラブ進駐軍」は戦後の復興の時代の話でしたし。お互いほぼ映画の現場でしか会わないです。

僕自身、この映画と出会えたことで、より興味を持って学べたことがありました。そしてコロナに負けなかった作品。今まで生きてきて、人間をわかっているつもりでもまだまだ、そんなものじゃないぞ、と教えてもらった気がします。なにより人を見てほしい映画です。
映画は7月22日よりシネスイッチ銀座、8月5日より沖縄、兵庫、栃木にて上映開始。その後、順次全国公開。
(C)2022 映画「島守の塔」製作委員会
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