世界46か国以上で上映禁止となった伝説のホラーが、4Kリマスター版で復活!【人間食べ食べカエルのホラー映画コラム】
2022年7月14日 21:00
この夏(特に7月)は凶悪ホラー映画がひしめく恐ろしい季節となっている。残虐リミッターが外れた感染者たちが笑顔と涙を浮かべながら人を虐殺する「哭悲 THE SADNESS」、最高齢の殺人鬼が若者たちを襲う「X エックス」、恐ろしいドラッグが題材の暴走映画「アドレノクロム」、怖いイーサン・ホークが子供をシメる「ブラック・フォン」等々……。納涼にも程がある充実のラインナップだ。
そんな新作たちを相手に、レジェンド級のホラーが奇跡のリバイバル上映を実現して立ちはだかる。そう、あの「セルビアン・フィルム」だ。この映画がまさかの4Kリマスター版となって復活! 新作ホラーには負けとれんわ!!とばかりに、10年ぶりにスクリーンに流れるのだ!!
まずは本作のあらすじからおさらいしておこう。この映画はかつてあらゆる女優を相手にポルノ映画を撮ってきた伝説的ポルノスターであるミロシュ(スルジャン・トドロヴィッチ)という男が主人公だ。彼は既にポルノ業界を引退し、妻と息子とともに3人で平穏に暮らしていた。そして、たまに家族と一緒に、かつて自分が出演したポルノ映画を観ていた。幸せな日々を送ってはいたが、実は結構金銭的にピンチだった。
そんな時、ミロシュのもとにかつて共演した女優が訪れ、海外向けの大作ポルノに出演しないかという話を持ち掛ける。これに出演するとかなりの大金が入るらしい。始めは怪しすぎるため悩んだが、やがてミロシュはこの作品への出演を決意する。だがこれはただのポルノ映画ではなかった。本当に人を傷つけ、恐ろしい拷問などを行う様をフィルムに収める、残虐スナッフ・フィルムの撮影現場だったのだ!! 契約書をちゃんと読めばよかった!!!
こんなストーリーなので当然ロクな事は起きない。そして、鑑賞した人は口をそろえて「観たことを後悔した」とか「おぞましかった」と言う。確かにそれは間違っていない。だが、自分の目で実際に観てみたら、ちょっと想像と違った。
この映画、観る前はずっとゴアシーンが垂れ流し状態なのかと想像していたが、意外や意外、実はそうではなかった。むしろストーリーとキャラをしっかりと作り込んで、それを丁寧に描いたうえで、演出と展開をもって観る人を地獄に叩き落すタイプの作品であった。ゴアシーンはそこまで多くないのだが、ここぞというところであまり見たことがない斬新かつエグめの見せ場を放り込んでくるので、下手にずっと見せ続けられるよりも遥かに衝撃性が高い。開始40分ほどは血すら殆ど出ない。主人公ミロシュが家族と過ごす中で、いかにも怪しいポルノ映画への出演を承諾するか葛藤し、撮影を開始してから徐々にその異常性を認識していく様を丁寧すぎるくらいに描いていく。この前振りがあるからこそ、後半の地獄絵図が活きるのだ。意外と上品な映画だな……?と思い始めた頃にブチ込まれる衝撃極まりない新生児●●●!! あまりの落差に頭がクラクラする。これがこの映画の恐ろしいところだ。後半に差し掛かり、ドライブがかかってきたところで主人公の意識を失わせ、一旦勢いを止める。そこから怒涛の地獄巡り! この緩急に見事に乗せられる。非常に巧い作りの映画だと思う。
本作を手掛けたスルジャン・スパソイェヴィッチ監督も本作が長編デビュー作。ホラー映画界って、才能の塊が飛び出す頻度多いよね。ちなみに監督はこの作品について、海外インタビューで「この映画はホラーではない。地獄に落ちるドラマだ」と答えている。セルビアの映画というタイトルが示す通り、セルビアに息づく闇そのものが込められている。衝撃的な展開に圧倒されて、初見時はメッセージをくみ取るどころじゃないかもしれないが、何回も見返すうちに違った視点でも味わうことが出来ることだろう。
ちなみに今回、7月に劇場公開される4Kリマスター版で再鑑賞したわけですが、画質のあまりのバッキバキぶりに驚かされた。とても10年前の映画とは思えないほどの鮮明さだ。勿論モザイクもなし! パーフェクト・セルビアン・フィルムへと変貌を遂げている。まだ観たことが無い人も、かつて観た人も、間違いなく鑑賞する価値のあるバージョンだという事を保証して、今回のコラムを終わりにしたいと思う。
「セルビアン・フィルム」4Kリマスター完全版は、シネマ映画.comで2022年7月16日(土)~7月18日(月)の3日間限定、先着200名様で公開前プレミア上映! 2022年7月22日(金)公開。
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