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【「リコリス・ピザ」評論】記憶の彼方に漂うモラトリアムな瞬間のマジックが、この映画には詰まっている

2022年6月25日 16:00

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「リコリス・ピザ」
「リコリス・ピザ」
(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

PTAことポール・トーマス・アンダーソンがこんな瑞々しい境地に戻ってきてくれるなんて、正直諦めていた。PTAは重さと軽さ、シリアスとユーモラスを兼ね備えた名監督だが、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」以降はシリアス偏重(とはいえ傑作ばかり)が続き、もはや別ステージに移ったのだと思いこんでいた。そう、最新作「リコリス・ピザ」を観るまでは。

リコリス・ピザ」は15歳の高校生が10歳上の女性を必死で口説く場面から始まる、虚実を取り混ぜた恋愛コメディで、1973年のサンフェルナンド・バレーが舞台。サンフェルナンド・バレーはPTAが生まれ育ち「ブギーナイツ」「マグノリア」「パンチドランク・ラブ」でも舞台にしていたLA北部の郊外住宅地だ。

主演は姉妹ロックバンド、ハイムのアラナ・ハイムと(ほかのメンバーと両親も家族役で出演)、PTA組の常連だった故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー。どちらも俳優経験はないが、PTAが白羽の矢を立てた。自信家で自意識過剰な15歳のガキと、自己肯定感低めで人生に迷う20代女性。およそラブストーリーの主人公っぽくない取り合わせで、実際、王道ラブコメっぽい胸キュンな展開は皆無に等しい。

しかしそれでも本作は、たまらなくノスタルジックで、甘酸っぱい。目的のない意地の張り合い、宙ぶらりんであやふやな気持ち、一緒に過ごす他愛もない時間、くだらない小さなケンカ。ふたりの関係がどこかに進みそうになる度に、バカげた選択をしたり、バカな大人たちに邪魔されたり、本当にバカげた事態が勃発して、恋どころじゃなくなってしまったり……。

とにかく本筋じゃないエピソードにやたらと力が入っていて、しかもいちいち面白いのだから始末が悪い。ふと「これって何の話だっけ?」と疑問を抱いても、次々と現れて混ぜっ返しにくる脇キャラが、ショーン・ペンだったりトム・ウェイツだったり、ブラッドリー・クーパーだったりするので、濃すぎる面々のカオスな時間に身を任せるしかなくなるのである。

対するアラナとクーパーには、現実とファンタジーの狭間にいるような絶妙な浮遊感があってとてもいい。ハリウッド的な絵空事でも生々しいリアリズムでもない。記憶の彼方に漂うモラトリアムな瞬間のマジックが、この映画には詰まっている。寄り道だらけの緩慢な毎日が最高の映画になることを証明してくれる、PTA第三章の幕開けだと言い切ってしまおう。

(村山章)

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