「エリザベス 女王陛下の微笑み」目指したのは“ロックンロール” 女王本人は見た?
2022年6月17日 09:00
2022年に96歳を迎え、在位70周年となるイギリス君主エリザベス2世初の長編ドキュメンタリー映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」が、6月17日から公開された。内容だけ聞けば堅苦しいドキュメンタリー映画と予想する人もいるだろうが、本作はポップ&ロックの名曲とともに女王が歩んだ激動の時代を映し出す、これまでとは一線を画す作品。プロデューサーを務めたケビン・ローダーがオンラインで取材に応じ、本作の話を聞いた。
メガホンをとったのは、「ノッティングヒルの恋人」「ゴヤの名画と優しい泥棒」などで知られるロジャー・ミッシェル監督。2021年9月に急逝した同監督にとっては、これが遺作となった。ローダーは映画・テレビプロデューサーとして活躍し、ミッシェル監督とは「ヴィーナス」(06)をはじめ、数多くの賞を受賞した「ウィークエンドはパリで」(13)、「レイチェル」(17)など、10本以上の映画を共に世に送り出した。
僕らが目指していたのは“ロックンロール”です。英国王室、英国女王へ向けた厳格なドキュメンタリーではなく、音楽や映像をたくさん使用して、みんなが楽しめるものにしたかった。予めこうしようと決めて作っていったのではなく、作りながら出来上がっていくジャズのような作り方をしたんです。
新型コロナウイルスの感染拡大で2020年にロックダウンがあり、長編映画を作るのが難しい状況になったとき、ロジャーから電話がありました。こういう状況で何ができるかという話になったとき、「アーカイブドキュメンタリーを作ろう」と言われたんです。アーカイブをもとにしたドキュメンタリーにしても、素材がなければ1本の映画にはならないですが、今回ロジャーの選んだ題材が女王陛下だったので、素材はありすぎるくらいでした。そこからはこれまでの映画とどう差別化するかを考えて動き始めました。
最初から女王陛下の映画が1番の候補だったのですが、僕は今まで見たことのない作品を作ることができるのか心配していました。でも、こういう戦略でやりたいとロジャーに説き伏せられて、彼のビジョンが良かったのでやってみようと。完成作を見た今は、やっぱりやって良かったと思っています。
まず、素材となるたくさんの映像を見ることです。そして、使用映像の許可を取ることが大変でした。本編では1000以上のクリップを使っているので、1000以上の許可を取る必要がありました。
今まで女王陛下に対してイメージしていたことが、やっぱりそうだったんだと確信になりました。もとから仕事熱心でいらっしゃって献身的、そして強い方だと思っていました。今まで気づいていなかったのは、ユーモアのセンスです。本編では女王陛下は凄腕のコメディアンだとジョークで言うシーンがありますが、素敵なユーモアの持ち主ですし、ドライなウィットを持っている。映画を見るとそれが垣間見える瞬間があって、とてもチャーミングだなと思ました。
ロジャーがこの曲だけはどうしても使いたいと言っていたのが、ザ・ビートルズの「ハー・マジェスティ」です。僕はビートルズがほぼ楽曲使用の許可を出していないことを知っていたので、難しいよと話していましたが、最終的には「ノルウェイの森」と合わせて2曲も使わせてもらうことができました。
基本的には幅広い時代の楽曲、そして在位70周年なので、それぞれの時代を表現するような楽曲を選びました。あとは映像と合わせたときの意外性も意識しています。
今回の使用映像のなかでは、ロイヤルファミリーが所有しているホームビデオや、ロイヤルファミリーが権利を持っている映像を使っているので、許可を取るために女王陛下のチームには初期の頃から作品を見てもらっています。
ただ、さっきも言ったように僕らはジャズみたいにこの映画を作っていったので、具体的にこの映像を使いますとそのときには言えなかったんです。出来上がったものを見せてから、使用許可をもらうようにしました。女王陛下のチームは僕らのことを信頼してくれたので、心良く対応していただきました。
バッキンガム宮殿にはこの映画のコピーが1本ありますが、どなたが見ているかはわかりません。今はお時間がないと思いますが、いつか女王陛下も見てくださったら嬉しいです。
1993年から30年以上ずっと一緒に仕事をしてきた親友の一人です。仕事のうえでは最も親しかったので、亡くなってしまって悲しいですし、人生のうえでも重要な人を失ってしまったという思いを今も抱き続けています。
監督としては周りを思いやる人でした。やりたいことに対してはちゃんと向かっていきますが、性格は控えめです。作品のことを語るときは“My”=自分のものであるという言い方ではなく、彼は“Our”=僕たちの映画だと言う人でした。人生の多様な側面をすべて愛している人だったので、この映画を見ると楽しさもあれば、寂しさも感じると思います。そういう人間の側面を見ることができる彼の作品をもう見られないことも、彼を失って恋しく思うことの一つです。
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