【会見レポート】是枝裕和監督らが「日本版CNC」設立を求める会を立ち上げ 映画界の共助システムの構築を目指す
2022年6月14日 17:30
是枝裕和、諏訪敦彦、岨手由貴子、西川美和、深田晃司、舩橋淳(五十音順)らが名を連ねる「映画監督有志の会」が6月14日、東京・日本外国特派員協会で記者会見を開き、6月1日に立ち上げた権利能力なき社団「日本版CNC(セーエヌセー)設立を求める会」(通称:action4cinema)についての説明を行った。
「映画監督有志の会」は、1年以上前より映画業界の労働環境改善を含む包括的な改革のために、フランスの「CNC」(国立映画映像センター)、韓国の韓国映画振興委員会「KOFIC」に相当する統括機関の設立を求め、協議してきた。
そして、日本映画の未来に向け、持続・発展可能になるような新たな共助のシステムの構築を業界内により強く継続的に求めるべく「日本版CNC設立を求める会」を非営利団体として6月1日に立ち上げた。
日本版CNCでは「(1)教育支援」「(2)労働環境保全」「(3)製作支援」「(4)流通支援」を“4つの柱”とし、支援金の財源は劇場からの興収と放送、また配信事業者からの徴収を考えている。日本ならではの共助システムの構築を求めるべく、今後は主に以下の活動を行っていく。
会見冒頭、是枝監督からの「日本版CNC設立を求める会」の趣旨が説明された。一昨年の秋頃から、各所で映画監督たちが日本映画界の問題について話していたことを知り、その後、数人で集まり改めて話し合おうという動きがあったという。
是枝監督「この問題意識を、映画を巡る今の状況を変える動きに変えていけないかなということで、継続的にミーティングを重ねてきました。去年の春くらいに映連(日本映画製作者連盟)さんとのミーティングも開始して、1年ちょっと経ちました。ほかにもいろんな各団体の方たちと意見交換や勉強会をしてきて、この度日本版CNCの設立を求める会を立ち上げることになりました。ここで何かが大きく変わるということはないですが、今までやってきたことをより押し進めていって、将来的に少しでも映画界の働く環境が改善されていったらいいなと思っております」
諏訪監督は、コロナ禍に地方の映画館を存続させるためにクラウドファンディングを実施した経験などを経て、「日本映画界には、互いに支え合うシステムがないとはっきりわかった」といい、「持続的に支え合うシステムが必要だと感じたのが、設立の大きなきっかけになった。海外と関わって映画を作る経験も、日本映画界に欠けているものがはっきり見えてくる」と設立の背景を語る。
また、是枝監督は支援金の財源として想定している劇場からの興収と放送、配信事業者からの徴収については「はっきり言いますが、映連を敵に回したいわけじゃない」と前置きしつつ、「絶対不可能だと言われ、映連と1年話をしても動かない」と現状を説明。出席者たちからは何度か「業界全体が一枚岩になって」という言葉が用いられ、全体の意識改革を呼びかけていた。
賛同者である俳優の役所広司からのビデオメッセージも上映され、自身の作品作りもあるなか尽力する監督たちへの感謝が伝えられたほか、「日本版CNC設立に向かって、まずは現場で働く我々俳優スタッフ一人ひとりが賛同し、内容を理解することが必要だと思います。日本映画界がより良い方向へ進みますように」とコメント。
助監督の石井千晴、俳優の仲野太賀、水原希子からのメッセージも代読されたほか、会見には途中から映画監督の白石和彌、横浜聡子も登壇。白石監督は「本来は映連さんや監督協会の団体が提言しないといけないと思うけれど、有志の方たちが声を上げないといけない状況が日本映画界の困窮した状況を表していると思う」と話し、「各映画会社の偉い方や映連の方たちとも一枚岩になって、映画の未来を考えていかないといけないと強く感じています」と訴えた。
会見は約2時間行われ、最後に是枝監督は「基本的には明るく前向きにやっている。なので、一緒に動かしてください」とメディア、そしてメディアを通じて映画関係者たちへ向けたメッセージを送っていた。
「action4cinema」のHP(https://www.action4cinema.org/)では、活動の報告やハラスメント防止措置ガイドラインの草案が確認できる。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。