長谷川博己&綾瀬はるかが語る、泳ぐこと、生きること。そして、演じること。
2022年6月7日 13:00

ユーモラスなタイトルに、イラストレーターユニット「100%ORANGE」が手がけたチャーミングなイラストビジュアル。軽やかなイメージをまとう映画「はい、泳げません」(6月10日公開)は、泳げない男と、泳ぐことしかできない女の、希望と再生の物語。「舟を編む」で第37回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した渡辺謙作監督が、ノンフィクション作家・高橋秀実氏(※高は、はしごだかが正式表記)の同名エッセイをもとに、自身の知人の過去の体験も参考にしながら作り上げた。

「泳ぐこと」を通して、心を通わせていくふたりを演じるのは、長谷川博己と綾瀬はるか。ドラマや映画で好評を博した「鈴木先生」や、ドラマ「デート~恋とはどんなものかしら~」など、理屈っぽい役を演じてきた長谷川が、水に顔をつけることもできないほどのカナヅチなのに、言い訳ばかりする堅物な哲学者・小鳥遊雄司(たかなしゆうじ)に。運動神経抜群で、「劇場版 奥様は、取り扱い注意」で華麗なアクションも披露した綾瀬が、美しく生き生きとした泳ぎを見せ、陸よりも水中の方が生きやすいという不器用な水泳コーチ・薄原静香(うすはらしずか)に。まさにはまり役といえるキャスティングで、小鳥遊と静香コーチが結ぶ唯一無二の関係は、より魅力的なものとして立ち上がっている。
長谷川と綾瀬は、夫婦役を務めたNHK大河ドラマ「八重の桜」以来の共演となり、映画では初共演を果たす。インタビュー前の撮影中から、何か言葉を交わしては、笑みをこぼすふたりからは、久々の共演の喜びと、互いへの信頼関係が伝わってくる。笑いが絶えない和やかなムードのなか、インタビューに応じてくれた。(取材・文/編集部、写真/堀弥生)

大学で哲学を教える小鳥遊は、水に顔をつけることが怖く、全く泳ぐことができない。屁理屈ばかりをこねて水を避けてきたが、ひょんなことから水泳教室に通うことに。彼は強引に入会を勧めた静香コーチが教える教室で、にぎやかな主婦たちとともに水泳を習い始める。小鳥遊は泳ぎを覚えていくなかで、元妻・美弥子(麻生久美子)との過去や、シングルマザーの恋人・奈美恵(阿部純子)との未来など、目をそらし続けてきた現実と向き合う。それは、ある決定的な理由で水を恐れることになった小鳥遊の、苦しい再生への第一歩だった。
冒頭、大学の講義で小鳥遊は、「知識と、知性や教養は違う」「知性とは自分を変えようとする意志」「新しい経験を積むことが大事なんです」と、学生たちに説く。その後、彼は水への恐怖を克服するために、避け続けてきた水泳を“経験”することに。水に触れるたびに大騒ぎし、プールに入ってからも「泳がない理由」を探し続ける小鳥遊と、ときには彼を納得させる言葉を投げかけ、ときには子どものように怖気づく姿を「小鳥遊!」と容赦なく一喝する静香コーチのコミカルなやりとりには、笑いがこみ上げてくる。

しかし、そんな心地よい笑いに身を委ねていると、ふたりが心の奥底に秘めてきたある記憶、ある後悔が、ふと顔をのぞかせる。まるで、キラキラと光を反射するプールに入り、思っていたよりも深かったことに気付く瞬間のように――物語は、違った表情を見せ始める。
劇中では、「泳ぐこと」「生きること」というふたつの行為を行き来しながら、小鳥遊の一進一退の日々が描かれる。人が泳げるようになる過程には、いくつかのステップが設けられている――どんどん次のステップに進む日もあれば、失敗したり、逃げ出したりする日もある。嵐に見舞われる日もあれば、凪に身をまかせる日もある。失い続ける人生のなかで、誰もが抱える“弱さ”や“脆さ”。さざ波のように繊細に揺らぐ感情を、丸ごと包みこんでくれる物語に身を浸せば、無傷ではいられない人生にも、光を見出すことができるかもしれない。





頭でっかちな屁理屈で、泳げない理由を訴え続けていた小鳥遊は、静香コーチの言葉や考え方を受け入れ、自分なりに納得することで、徐々に水と向き合うようになっていく。まさに、静香コーチが海の底で溺れている小鳥遊の手をとり、ともに浮上していくように。



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