【「トップガン マーヴェリック」評論】雄偉な戦闘機アクションの魂を継ぎ、放胆に拡張していく100点答案の続編!!
2022年5月28日 14:00

慌ただしく働くクルーに先導され、ゆっくりと動き出す艦上戦闘機。そして加速と共にフェイドインしていくケニー・ロギンスの名曲「デンジャー・ゾーン」。オリジナルを逐一なぞるような出だしだけで、背から電流が拡がり気分は高揚する。雄偉たる戦闘機映画の第2章を、この映画は本気で全うする気なのだ、と。
我らがトム・クルーズの主演最新作は、彼をスーパースターへと一気に押し上げ、アクション映画の軌道を大きく変えた「トップガン」(86)の直接的な続編だ。海軍飛行兵の若き精鋭ピート“マーヴェリック”ミッチェル(クルーズ)の挫折と成長を描いた同作から約36年。かつて彼が所属したエリート訓練校出の新世代たちを、今度は自身が指導するドラマへと発展させている。そして前作から咎(とが)として残る葛藤や問題に、ホットな回答が与えられているのだ。加えて進化したジェット戦闘機の世界において、普遍ともいえるパイロットの神話を継承していくのである。
伝説的キャラクターとの再会や、クリアすべき困難なミッション、かつての仲間の遺児との確執などが宿命的に展開し、作品は旧作を知る者や未見の若年層を問わず惹きつけていくだろう。いっぽうで現実の世界では、軍事行為は人命尊重の観点から無人化の傾向にあり、有人飛行をベースとする本作は時代遅れな印象を受けるかもしれない。だがこの映画は、戦闘機に乗って任務を遂行する者たちの姿を、ビルドゥングスロマンの観点から迷いなく捉えていく。
ジョセフ・コジンスキーは長編監督デビュー作「トロン:レガシー」(10)のように、ポップな感触と視覚センスを持つ旧作に経年なりの格調を与えているが、それは前中半までのこと。物語は後半、90~00年代ジェリー・ブラッカイマー作品らしい過剰さを剥き出しにし、絶句と涙を同時に誘うような胸アツ展開へと転調していく。そして、なぜマーヴェリックが昇進に背を向け、今も現役に身を置くのかを渾身の力で正当づけるのだ。
オリジナルはコクピット内描写の撮影に苦闘したが、新作はソニーと共同開発したIMAX品質のプロトタイプカメラにより最大の見せ場へと誘導。F/A-18戦闘機の緊張に満ちたスカイバトルを実現させている、ひいてはトム・クルーズの役者的成長と止まぬスタントのステージアップ、前作の監督トニー・スコットへの敬意など全方位に目配りし、本作は「トップガン」の続編として何ひとつ間違いのない、100点満点の答案を叩き出していく。コロナ禍で公開延期を余儀なくされた、おそらく最後の大型作品。うん、待っただけの価値は充分にあった。
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